「顧客本位の業務運営」実現へ向けて 支店のCSレベルに合わせた本部アプローチ
株式会社中国銀行
取材・文/角田聡 編集/宮本紗和
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
岡山県内を中心に展開する株式会社中国銀行。人口減少やマイナス金利と銀行業界を取り巻く環境が変化する中、選ばれる銀行となる観点から顧客満足(以下、CS)の重要性が高まっている。「顧客本位の業務運営」に向けた取り組みについて、営業統括部 CS企画担当 調査役 生部敬子氏にお話を伺った。
「顧客本位の業務運営」に向けた取り組みとは
--顧客満足度調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下、覆面調査)をご導入いただいた経緯について教えてください
2013年の組織改定で、お客様へのサービス向上を推進する、CS専任メンバーが配置されました。当時から、外部モニター調査を利用していましたが、CSの優先課題はその時々で異なりますので、課題解決に合った調査会社を選択してきました。基本マナーの改善が必要なタイミングでは、基本マナー向上に強い調査を、預り資産等の専門力を高めることが必要だと考えていたタイミングでは、専門知識に強い調査を採用しました。そして、2017年からは顧客本位の業務運営が重要であるという視点から、 一般消費者の声を改善に活かすことに定評のあるMS&Consultingさんの覆面調査を導入することに決めました。
営業統括部CS企画担当調査役 生部敬子氏(右)と主任 岡﨑鈴子氏(左)
--納品されたレポートをご覧になっての感想を教えてください
全体の結果をまとめた報告書の中に、顧客ロイヤルティという指標を基にした記載がありました。それまではどちらかと言えば、決まった通りに対応ができているか、という視点が強かったのですが、「誰かに紹介したいか(紹介意思)」「また相談したいか(再来店意思)」といった調査項目をみて、お客様本位を追求する調査だと認識しました。改めて、当行のニーズに合致していると実感しました。
--御行では、役員表彰の審査基準に覆面調査の結果を活用されているそうですね
半期に1度、サービス向上を実践している支店を表彰する「役員表彰」の審査基準に入れています。ブロックからの推薦、クレーム数、お客様からのお褒めの数等の項目と一緒に覆面調査の結果を加えています。
--本部として、各支店のCS改善にどのように関与されているのでしょうか
覆面調査の評価が高い支店には、CS所管部が、支店長やリーダーを中心にどのような取り組みをしているのかヒアリングなどにより情報収集をします。その内容をまとめ、活動がわかる写真を入れた記事を作成し、行内の掲示板にあげます。支店間で情報共有をすること自体難しいため、本部が事例をまとめ、掲示板に出すことにより、全体的な活動の促進を図っています。また、好事例として挙げた支店はモチベーションが高まるということも実感していますので、継続して続けています。
一方、覆面調査の評価が低かった支店には、臨店し1日かけて改善促進をします。まず、複数の行員に支店内でのCS取り組み状況を直接ヒアリングします。「具体的な行動が決まっているか」、「決まった行動が実行されているか」、「全員で取り組んでいるか」等の話を聞くことで、活動が進まない理由も見えてきます。ヒアリング結果と、店内の様子を観察した結果を踏まえ、支店長と面談をし、支店で取り組むこと、本部としてサポートすることを明確にします。
また、改善が進まない理由に、上司が部下に言いたいことが言えない、というケースがあります。そのような場合は、私たちのような第三者が臨店時に対象行員に事象を伝えたり、個別指導をしています。特にCS評価の低い店舗は、現場に足を運び、状況を確認し、支店と本部で役割分担をしながら一緒になって改善を進めることが大切です。このような臨店指導をした店舗は、覆面調査の点数が高まっています。
本部チェックという観点では、監査部や人事部等、CS所管ではない部署が臨店した際にも、店舗のCS取り組み状況をチェックしています。他部署も巻き込み、連携しながら支店のCS向上を促進しています。
現在は、本部が毎月のCS課題を設定し、各支店にアクションを促すようにしています。例えば、接客対応事例ビデオを作製して、その映像を配信し、各店舗で議論をしてもらいました。プラスαの対応ももちろん大切ですが、その前提として基本マナーや基本スキルが習得できていることが大切です。本部主導で基本的な部分を高め、プラスαの部分は各店舗の自主性に任せる、というすみ分けをしています。このような本部発のアプローチによって、支店毎の改善活動のばらつきがなくなってきました。
さらに、個人表彰も実施しています。半期に1回、各ブロックから推薦された人の取り組みの中で、最も素晴らしい取り組みを選びます。2018年は、西日本豪雨で被災したエリアを翌日に訪問し、被災された経営者に対して資金繰りを確認したり、インターネットが使えなくなっている方に情報を伝える、といった行動を自主的に行った行員が表彰されました。
--全社を挙げてCSへの取り組みを進められている理由を教えてください
CSは店舗や所管部だけではなく、全社として取り組む必要があると考えています。そのように考え、取り組めている背景に、中国銀行グループ役職員の「行動や判断の基準、価値観」を明確化した「ちゅうぎんの心」があります。これを基に各行員が自身の成長や働きがいを考え、お客様への満足と感動の提供につなげる好循環を形成することが大切だと考えています。
--今後の方針を教えてください。
まさに今、金融業界は変化を求められています。店舗でも非対面営業が進み、事務も機械化される一方で、銀行に求められること、行員に求められることは、これまで以上に高まると考えています。だからこそ、一人ひとりが専門性や人間性を高め続けることが必要です。
直近で見れば、クレーム数も減っていますし、お客様アンケートでお褒めの声も多くいただいています。地元のお客様に支持され続ける銀行であるために、「ちゅうぎんの心」を踏まえ、これからも今のニーズに応えられているのか、という観点でCSを追求し続けていきたいです。