顧客サービス・働きがい・収益性改善のための施策は、それぞれが互いに影響を及ぼし合うため、単独で考えてもうまく機能しません。
弊社では、サービス業の皆様の「顧客満足度(CS)向上・従業員満足度(ES)向上・業績向上」をご支援しておりますが、部分的・一時的な視点ではなく、総合的で継続性のある課題解決を目指しております。
このページでは、その土台となる「サービスプロフィットチェーン」について解説いたします。
サービスプロフィットチェーン(SPC)とは、1994年にヘスケット(J.S.Heskett)・サッサー(W.E.Sasser,Jr.)らによって示された、従業員満足・顧客満足・業績の因果関係を表したモデルです。
SPCは「ESが高まれば“勝手にCSが高まり、CSが高まれば業績が“勝手に”高まる」というものではなく、従業員、顧客、利益を『つなげる』ことが成功のために重要だと言われています。
また、SPCは今まで「利益はマーケティング部門、顧客は営業部門、従業員は人事部門」とされてきた要素をつなげる考え方として、企業内での部門連係の必要性について示唆していることも、今日まで注目され続けている理由の1つです。
サービスプロフィットチェーン理論は、従業員満足度が高まればサービスの提供品質が向上し、それが顧客満足度の向上につながり、結果として企業の収益も増加する、という好循環を示唆したものです。
当社はサービス企業様のご支援に携わる中で、サービスプロフィットチェーンの各構成要素は、相互に影響を及ぼし合うことに確信をもっています。
■顧客満足から従業員満足への影響
サービス提供を通じたお客さまからの「ありがとう」という感謝の声が、従業員の働きがいに強く相関する「顧客満足の実感」を生み出し、従業員満足度を向上させます。
■従業員満足から業績への影響
従業員満足度が高まると、離職が減ると同時に採用しやすくなり、採用コストが減ります。また、販売促進施策やコスト管理施策への納得度が高まり、遂行度が上がることで収益性が改善します。
■業績から顧客満足への影響
安定した売上・利益を確保できれば、中長期的に影響が及ぶため慎重な判断が必要な、商品の品質・価格の再設定による顧客還元や、サービスの拡充による利便性向上のための原資が生まれ、顧客満足度の向上が期待できます。
サービスプロフィットチェーンは感覚的には理解できるものの、本当につながりが存在するのか、疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
顧客満足度調査によってお客さまの「再来店意思(また利用したいと思えたか)」の高さを数値化すると、将来的な「業績」との関連性を推測することができます。また、「従業員満足度」は従業員満足度調査によって数値化することが可能です。
当社顧客の実際のデータを用いて「従業員満足度」と「再来店意思の高さ」を分析した結果、正の相関関係がみられました。(外食企業48社のデータを産業技術総合研究所と共同分析)
当社では、「①働きがい(働きがいがあるか)」「②帰属意識(働き続けたいか)」「③推奨意識(人に勧めたいか)」の3つの要素によって従業員満足度(組織ロイヤルティ)を評価します。また、「再来店意思(また利用したいと思えたか)」「推奨意思(誰かに勧めたいと思えたか)」の2つの要素によって顧客満足度(顧客ロイヤルティ)を評価します。
多くの企業の調査結果を分析すれば、先に述べたように明快な相関性を確認できますが、ひとつの企業単位でみると、一見、相関がみられないことも少なくありません。同時に、従業員満足度(組織ロイヤルティ)、顧客満足度(顧客ロイヤルティ)といった抽象度の高い「結果指標」だけでは、改善活動に結びつけにくいことも事実です。
実際には、従業員満足度、顧客満足度を構成する「プロセス指標」のほうが関連性が高いケースが多くみられ、改善活動につながる具体的な示唆を得ることができます。
ここで、改善活動につなげやすい「プロセス指標」に着目した分析事例をご紹介します。
従業員満足度のプロセス指標の一つである「お客さまへの思い(Consideration for customers:あなたの組織のメンバーは『お客さまに喜んでもらいたい』と心から思っていますか?)」と、顧客満足度のプロセス指標の一つである「気配り(Satisfaction with service)」「笑顔(Satisfaction with smile)」それぞれとの相関性が示されたデータです。(約10万件の従業員満足度調査データを産業技術総合研究所と共同分析)
外食業界では、「顧客ロイヤルティ」と「気配り」「笑顔」の相関性が高いので、「お客さまへの思い」が高まるような教育研修や人事施策が、顧客ロイヤルティ(業績)改善に有効であることが分かります。
従業員満足度の改善によって顧客満足度を高めることができますが、「CS・ES・業績の相互作用」で解説した逆の影響についてもデータによって説明できます。
以下は、共分散構造分析(Structural Equation Modeling)の手法により、顧客ロイヤルティが従業員ロイヤルティに影響を及ぼす因果関係を推察したモデルです。(約10万件の従業員満足度調査データを産業技術総合研究所と共同分析)
まず、お客さまの喜びの声やリピートの事実は、従業員満足度調査における「顧客満足の実感(あなたは、自分の仕事が『お客さまの喜びにつながっている』と感じていますか?)」に影響を及ぼします。
これが、「有意味感(あなたは、自分の仕事が『社会にとって価値があるものだ』と感じていますか?)」「影響感(あなたは、自分の仕事が『周囲(社内外問わず)に好影響を与えている』と感じていますか?)」に影響を与え、「成長感(あなたは、自分の仕事において『成長している』と感じていますか?)」「仕事への誇り(あなたは、自分の仕事に『誇り』を感じていますか?)」を高めます。
「成長感」は「達成感(あなたは『達成感を得ながら仕事』をしていますか?)」につながり、「仕事への誇り」は「改善意識(あなたは「今の会社(組織、チーム)をもっと良くしたい」と思いますか?)」につながります。
そして、「達成感」「改善意識」が高まると、従業員ロイヤルティが高まるという構造が確認できています。
顧客満足度が従業員満足度に影響を及ぼすことがお分かりいただけたかと思います。
ここまで、従業員満足度と顧客満足度とのつながりについてご説明しました。ここで一つ、サービスプロフィットチェーンに基づく改善活動に取り組まれる皆さまに、是非知っておいていただきたい事実がありますのでご紹介いたします。
実は、従業員満足度のレベルが高まると、顧客ロイヤルティへの影響度がより大きくなる場合があります。
アパレル企業様のケースでは、店舗の従業員ロイヤルティスコアのランク(D→Sの順に上昇)別に、顧客満足度の「お客さまの不満足比率(左)」と「売上昨年対比(右)」を比較した結果、お客さまの不満は従業員満足度ランクがAに達したときに急減し、売上昨年対比は従業員満足度ランクがSに達したときに急増しました。
【事例】株式会社ストライプインターナショナル様│アパレル業界におけるサービスプロフィットチェーン実践例
当社では、クライアント企業様のサービスプロフィットチェーン経営をご支援すべく、顧客満足度調査を起点として、店舗の現場の実情に合わせた改善活動をご提案しています。
特徴的な点をお伝えしますと、多くの場合、顧客満足度調査は本部が実施・確認し、戦略やサービス提供実態の確認に用いられますが、当社では現場スタッフの皆さまに直接・定期的に、顧客満足度調査のレポートをご覧いただくことをおすすめしています。
本部・上司の指示ではなく、顧客接点の最前線に立つ現場スタッフの皆さまが自ら考え、行動しやすい環境をつくることができれば、「お客さまの声」として顧客満足度調査が届くことをきっかけに、自然と改善が行われるようになります。
当社では、「顧客満足度調査」をご提供する際、現場スタッフの皆さまの自発的な改善活動を促進するために、調査レポートを現場スタッフの方が受け入れやすいように整え、簡易分析および気付き共有、コミュニケーションのためのツールをセットでご提供します。従業員満足度調査や各種クラウドサービスについても、すべて「現場目線」で使いやすいようにデザインし、コンサルティングサービスによって導入をご支援しております。
多くのサービス企業様に、揺るぎない顧客志向を醸成し、適正な利益を確保し続けることができる安定的な経営を実現していただけるよう、心より願っております。
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