スタッフの誇りを育むお客さまに選ばれるベーカリー
株式会社ドンク
代表者:中土 忠 代表取締役社長
所在地:兵庫県神戸市東灘区田中町3-19-14
創業:1905年8月、設立:1951年2月
会社ウェブサイト:http://www.donq.co.jp/
事業内容:フランスパンをはじめとする各種パン、・フランス菓子の製造、販売及び喫茶室、レストラン営業
展開するブランド:ドンク、ミニワン、ジョアン、他
社員数:正規約1,000名、パート・アルバイトなど約3,800名
『季刊MS&コンサルティング 2015年冬 特別号「サービスの強化書」』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
1905年(明治38年)の創業以来、100年以上にわたり、日本のパン文化普及に大きく貢献してきた株式会社ドンク。店舗内で粉のこね上げから焼き上げまでを一貫して行うスクラッチ製法により、小麦粉の風味を最大限に生かした、最高品質のパンを提供している。
人から人へ繋いできた想い
自社の商品に対する自信と誇り。これはどの企業にもあるべきものだが、同社の場合は、それに歴史の重みが加わる。
今から約25年前、誤って生地に塩をわずかに多く入れてしまったことがあった。フランスパンを食べ慣れていない当時の人にとっては絶対にわからないであろう違いではあったが、同社は「本物ではない」として、その数百個のパンを廃棄した。創業100年を超える同社ならではのエピソードだが、こうして時代を越えて「本物のパン」を提供してきたという自負があるからこそ、同社は商品に対して厳しいこだわりを持ち、またその商品にふさわしい接客を目指している。
同社が重視しているのが、店舗の自主性だ。そのためにミステリーショッピングリサーチを活用し、スタッフが皆で話し合いながら改善活動を進めている。この改善活動で特徴的なのは、「全スタッフが参加し、楽しめる」ことを共通のコンセプトとして掲げていること。こうした進め方をすることで、職人気質のスタッフが多く、縦型の風土が色濃く残る製造部門でも、意識が徐々に変わり、それに伴ってさまざまな改善活動が自発的に行われるようになった。たとえば、店舗の独自商品を開発する際にスタッフ同士で意見交換をしたり、商品や食べ方を顧客にしっかり説明できるように売場スタッフに試食をしてもらい、自分たちで商品説明書を作ったりと取り組み内容は店舗によってさまざま。
こうした改善の波は現場だけではなく、本社スタッフにも広がっている。「特に経営幹部の意識が変わってきたことは大きな成果」(販売推進ディヴィジョンマネージャー・工藤氏)という。
改善活動が定着してくるにつれ、取り組みの内容はどんどんとレベルアップしていき、同時に顧客からのクレーム数は目に見えて減少している。
粉を量るところから焼き上げまでを店内で行うスクラッチ製法でつくられるこだわりのパン。同社は試食をしてもらうことで、このおいしさを知ってもらう。
店舗スタッフも参加する社内講習会の様子。海外より講師を招くこともあり、技術者の育成にも力を入れる。質の高いパン作りを追求するため日夜研鑽している。
トップダウンからボトムアップへ
同社では、以前から「基礎接客力向上」の取り組みを行ってきた。基礎接客力とは最低限の接客を指すのではなく、「高品質の商品を提供する店にふさわしいレベルの接客」を意味する。これまでは、接客マニュアルやルールを作成することで基礎接客力を向上しようとしてきたが、なかなか思うように進まなかった。しかし、店舗スタッフの自主性・自発性を重んじる推進方法に切り替えることで、一人一人が考え、自身も楽しみながら着実に接客力向上が実現されてきている。
「パンの本場の食文化を知り、自店舗商品を深く理解し、それを高いレベルの接客を通してお届けし、お客さまに喜んで頂く。この一連の価値提供こそがスタッフの仕事に対する誇りにつながる」と、工藤氏。仕事に誇りとやりがいを感じながら、高品質の商品をお客さまにお届けし続けたい。それが、全スタッフに共通する想いだ。
店長と接客リーダーが研修に参加し、ミーティングのやり方やミステリーショッピングリサーチから抽出されたポイントを踏まえて改善計画を立てる。