NPS®の特徴と留意点は?サービス改善の考え方を解説
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)の特徴と留意点、サービス改善の考え方や取り組みをご紹介します。
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はじめに
近年、長引くデフレや働き方改革を背景に、サービス品質の向上だけでなく「生産性」を重視する傾向が強まっています。そうした時代背景もあってか、成長性や収益性の先行指標としてNPS®(ネット・プロモーター・スコア:推奨者の正味比率)を導入する企業が増えており、弊社クライアントでも注目する企業様が少なくありません。
NPS®は単純明快でわかりやすい指標ですが、サービス改善のためには、調査だけでなく、顧客に対する理解・洞察が大切です。
私たちはこれまで20年以上にわたり、覆面調査とその活用を通じてサービス改善をサポートして参りました。そこで、これまでの経験を活かし、私たちの考えるNPS®の特徴と留意点、サービス改善の考え方や取り組みをまとめました。
【ご注意】NPS®と弊社の関わりについて NPS®はある顧客層一定量のサンプル数が必要であり、弊社が強みとする「覆面調査(ミステリーショッパー)」とは異なる概念のサービスです(※)。弊社ではNPS®の実施をサポートしておりませんので、予めご了承ください。 ただ、NPS®をサービス改善の結果指標として導入されている企業様も、プロセス指標として覆面調査を併用していただくことでサービス改善を促進できる場合があります。ご興味をお持ちの方はぜひお問い合わせください。 ※ 覆面調査は1店舗1回あたり1~3調査を基本とし、一人の顧客に着目したケーススタディを定期的にお届けするサービスです。 |
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは?
NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は、「ある顧客層の顧客ロイヤルティ(※)の状態」を表す指標です。将来の業績成長につながる指標として認知されています。
※ 顧客ロイヤルティ:「ロイヤルティ」は一般用語で、直訳では「忠誠心」となります。マーケティング用語で「顧客ロイヤルティ」は「再購買意図」と解されており、企業やブランドに対する信頼や愛着を表す概念です。
計算方法
『ネット・プロモーター経営─顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する(フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー著)』を参照し、NPS®の計算方法を簡単にご紹介します。(詳細は同書をご覧ください)
「0~10点で表すとして、○○を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」
まずはこのようなシンプルなアンケートを取ります。
そして、アンケート取得後、回答結果を次の3つに分けます。
- 推奨者(9~10と評価した人)
- 中立者(7~8と評価した人)
- 批判者(0~6と評価した人)
「1.推奨者」の割合(%)から、「3.批判者」の割合(%)を引いた値が『NPS®』です。
NPS®の計算結果は、「-100(批判者のみ)」~「100(推奨者のみ)」の広い幅で表されます。
ただし、これは基本的な計算方法であり、実際に用いる際には、各企業や事業の特性に合わせて「質問」「選択肢の幅」「区分の基準」を調整することが推奨されています。(この点はあまり知られていないようです。)
【参考】NPS®の値をどう見る? NPS®は、「平均値」とは全く異なる計算結果になります。 例えば、悪くない評価を付けている「中立者」が何人いたとしても、「推奨者」が一人もいなければ、NPS®のスコアは「0以下」です。また、「批判者」の評価がいくら改善したとしても、相変わらず「批判者」の範囲内であれば、評価に関係なく同じだけスコアにマイナス影響を与えます。 つまり、「区分の仕方」次第で結果が大きく変わるということです。そして、アンケート評価の区分が変わった時点で、計算上の扱いが大きく変わります。プロセスよりも結果重視の指標、経営的観点の指標であると言えるでしょう。
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NPS®は2003年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』で発表されて以来、世間から注目を集めており、欧米のフォーチュン500企業のうち1/3が導入しているとされます。
計算方法がシンプルかつ標準化されているので、業種や企業をまたいだ比較を行いやすく、NPS®の日本版ランキングも公開されています。
特徴
私たちの考えるNPS®の特徴は次の3つです。
- 満足度ではなく、推奨意向(推薦したいか)を聞いている。(満足度よりも広義の概念)
- 正味の値(差し引きした数値、計算された数値)である。
- 一人のお客様のロイヤルティではなく、顧客層全体を捉えたものである。
これらを踏まえ、以下より私たちの考えるサービス改善に向けた考え方をご説明します。
時代は顧客満足から顧客ロイヤルティへ
「顧客満足」という概念は幅広いのでひと言で表すのは適切でありませんが、かつて、顧客満足のための狭義の取り組みといえば「不満の改善」を意味しました。
サービスの印象は、自覚されているか否かにかかわらず、お客様がもつ「期待」を比較対象として、「現実」に受けたサービスがどうであったかの比較評価で決まると考えられます。
(参考:『顧客ロイヤルティの経営─CSを超えるサービス・マネジメント(佐藤知恭著)』)
(弊社作成)
「期待」は、競合他社でサービスを受けた経験や、お金に対する価値感などをもとに形成されます。
各企業が競合他社を意識しながら不満の改善を重ねていくと、期待と現実のギャップが徐々に縮まり、ネガティブな印象を受けるサービスは減っていきます。
ただ、それが繰り返されれば、サービスへの期待値が高まり、期待を超えるサービスの提供が難しくなっていきます。同時に、サービスの同質化が進みます。
消費者にとっては、どこに行っても期待を大きく下回らないサービスが受けられるようになって嬉しい反面、刺激や面白みが失われていきます。満足だけでは飽き足らなくなっていくとも言えるかもしれません。
企業にとっては、サービスの提供品質を高めるだけでは差別化を図ることが困難になります。何らかの違いを生み出さない限り、価格競争に陥ってしまうでしょう。
しかし、世の中全体の提供品質が高まっていく中でも、特定の企業やサービスが市場に受け入れられ、大きな「顧客シェア(※)」を獲得するケースがあります。
※ 顧客シェア(顧客内シェア or 財布内シェア、SOW:Share of Wallet):ある個人における特定カテゴリの消費額のうち、その企業ブランドの占める割合(Rex Yuxing Du, Wagner A. Kamakura, & Carl F. Mela, 2007, Size and share of customer wallet)
そのような企業ブランドとそうでない企業ブランドを比較すると、サービスの提供品質だけでなく、それを含む総合的な「企業やサービスに対する愛着や感情的な結びつきの強さ」が影響していることがわかってきました。この結びつきの強さのことを「顧客ロイヤルティ(※)」と呼びます。
※ 顧客ロイヤルティは1990年代に徐々に使用されるようになってきたと言われています。定義はさまざまですが、後述する「ロイヤルカスタマー」の要件と合致する概念です。
このような背景から、顧客シェアを推察するための総合的な指標として、顧客ロイヤルティが重要視されるようになりました。(あくまでも、変化していく顧客満足の水準に達している前提があることは注意すべき点です。)
NPS®は、その顧客ロイヤルティの研究の中で登場した代表的な概念および計算方法です。
同時に、NPS®は「ネット・プロモーター・システム」とも定義されており、顧客中心の意思決定を行っていく企業姿勢を示す象徴的な概念でもあります。
(本定義は『ネット・プロモーター経営─顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する(フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー著)』を参考に解説)
ロイヤルカスタマーはなぜ自社を選んでくださるのか?
新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストよりも4~5倍高いと言われています。(貴社ではいかがでしょうか?)また、既存顧客の中でも「ロイヤルカスタマー」が収益を支えていることがほとんどです。
「ロイヤルカスタマー」は、ロイヤルティの高いお客様のことを言います。様々な定義があるようですが、総じて次のようなお客様のことを指します。
ロイヤルカスタマーの要件
- 商品・サービスに満足し、優先的に自社のサービスを選んでくださる
- より多くのお金を支払い、長期的に利用してくださる
- SNSで口コミをしたり、周囲に利用を薦めてくださる
- 建設的にフィードバックしてくださる
いかに既存顧客を大切にし、ロイヤルカスタマーを増やすかが、収益性の向上・安定の鍵となります。
では、「ロイヤルカスタマー」は、何に満足してサービスを利用し続けてくださるのでしょうか?
『ネット・プロモーター経営~顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する(フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー著)』では、その要素は「理性」と「感情」の2つの側面に分けて捉えることができ、どちらの重要性も高いと言及されています。
「理性」:商品・サービスの品質や価格に満足している
「感情」:企業は自分のことを大切にしてくれている、価値観・世界観が合っている
理性面は客観的に測定・判断できるため、どちらかといえば把握しやすいですが、感情面は容易に把握することができません。これらを包括した概念が顧客ロイヤルティであり、これを測るNPS®は、顧客の企業・サービスに対する総合的な評価を知るための手法であると言えます。
NPS®活用にあたっての留意点
ここから先は、弊社の見解として、NPS®活用にあたっての留意点を解説いたします。
1)そのアンケートに回答したのは誰か?
1.満足度の偏り
店内設置やレシート印字、メールや郵送等による一般的な「顧客アンケート」を実施する場合、「満足度の偏り」が生じます。一般的に、顧客アンケートでは満足度の高いファン層が回答することが多いためです。
例えば、顧客アンケートへの回答の謝礼として、「次回利用時に○%引き」「○○をプレゼント」といった特典を付けるケースを多く見かけますが、サービスに満足しなかった顧客にとってはインセンティンブになりません。
インセンティブがない場合、ロイヤルカスタマーが建設的な意見をくださるか、非常に不満を感じたお客様がクレームの申し立てをするかのどちらかに偏る傾向があります。
また、外部環境の影響で価格期待値などが変わり、評価が変わる可能性があります。
より確からしい顧客像を掴むには、自社の利用客の声をまんべんなく、偏りなく得る工夫が必要です。例えば、次のような工夫は有効かもしれません。
- 自社の満足度に関係のないインセンティブを用意し、満足度が低かったお客様にも回答いただけるように工夫する。
- 定常的に取るのではなく、期間を定めて定期的に取得する。
2.回答者属性の偏り
回答者の年齢・性別・所得などの特徴(人口動態変数)によっても、評価結果に影響が及びます。
JCSI(日本版顧客満足度指数)調査によれば、NPS®は若年層ほどスコアが高く、高齢世代ほどスコアが低くなる傾向があるそうです。
(『サービスエクセレンス─CSI診断による顧客経験[CX]の可視化(小野譲司,小川孔輔,森川秀樹 著)』参照)
NPS®の質問は、「○○を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という『無条件の推奨意図』を聞いています。
SNSなどによる不特定多数に向けた投稿であれば、情報の受け手が自ら取捨選択して情報を受け取りますが、特定の相手に対する推奨・紹介の場合は、情報を伝える本人が相手に合わせて慎重に情報を伝えます。
そのため、『無条件の推奨意図』を聞く場合、活発な情報発信・交換を行う若者世代のほうがスコアが高くなりやすいようです。
一方で、「アドバイスを求められたら○○を勧めますか」という『条件付きの推奨意図』を問う質問であれば、高齢になるほどスコアが高まる傾向があるのだそうです。
NPS®のアンケート調査を行う場合は、どのような顧客セグメントの声を聞きたいのかを決め、意図に合わせて実施する必要があります。
ターゲットの設定にあたり、少なくとも次の事項については決めておくべきと思われます。
- 自社のターゲット顧客層の満足度を測るのか?
- 自社の利用客全般の満足度を測るのか?
2)回答区分をどう捉えるか?
冒頭で、『NPS®を実際に用いる際には、各企業や事業の特性に合わせて「質問」「選択肢の幅」「区分の基準」を調整する必要がある』旨をお伝えしました。
その一例として、次のような問いに対するスタンスを事前に検討しておく必要があります。
- なぜ、0~6が批判者、7~8が中立者、9~10が推奨者なのか?
- 0~6は同じ扱いで良いのか?
1.業種やサービスによる違い
評価の仕方は、サービスの種類や市場特性によっても異なってきます。
例えば、次のような違いが生まれることが想定されます。
①目的的に利用する業種・サービス、市場が限定的なサービスの場合
- ターゲットに合わせた商品・サービス設計が可能
- ターゲット層の顧客が中心となって利用する
- ターゲットでない顧客層が利用すれば批判者も多くなりやすいが、利用可能性は低い
ゆえに、ロイヤルティが高くなる傾向があります。
②必要があり利用する業種・サービス、市場が広いサービスの場合
- 多くの人が利用するので、最大公約数的な品質・価格にせざるを得ない
- ターゲットを設定しにくい
ゆえに、ロイヤルティが低くなる傾向があります。
2.文化の影響
回答基準は、文化の影響も受けます。
NPS®は、アメリカの文化において、「11段階評価」「0~6/7~8/9~10の3区分」が良いという結果となりました。
日本ではどのような区分が適しているでしょうか?
さらに言えば、業界の特性や事業モデルの特徴を踏まえると、どのような回答になりやすいでしょうか?
3.個人特性の影響
個人の性格特性や感覚の影響も受けます。
例えば、人によって評価水準(真ん中を何点だと思うか?)が違います。
また、評価の幅(「まったく推奨できない」と感じたときにどの点数を選択するか?「まったく推奨できない」と言い切れる自信があるか?)に差があります。
手間はかかりますが、スコアを測る適切な集計区分は、これらのことを踏まえて検討・検証し、再設定すべきかもしれません。『ネット・プロモーター経営~顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する(フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー著)』内でも、調査設計と解釈方法を自社に合わせて実行すべき旨が言及されています。
3)自社の業績とどのように相関するのか?
NPS®は、あらゆる業種や環境、顧客セグメントにおいて、売上との連動が謳われているわけではありません。
同じサービスでも、顧客セグメントが変われば評価が変わります。
また、NPS®がわかったところで、それが業績にどう影響を与えているかを知るためには、「推奨者/中立者/批判者」のそれぞれについての深い洞察が必要です。
次の章では、サービス改善の考え方について述べます。
ロイヤルカスタマーの創出に向けたサービス改善の考え方
顧客ロイヤルティの改善のためには、お客様のサービス利用体験の仮説を立て、サービスの改善方針を決めたうえで実行を図り、定期的な調査で検証する流れが基本です。
以下に、サービス利用体験の仮設づくりと、改善方針検討のための調査分析の考え方をご紹介します。
1)顧客層を分けて考える
まず第一に、ターゲットとする顧客セグメント(居住地・年代・世帯年収等)を定めることが必要です。分析はそこから展開します。
そして、次に有効なのは、満足度に応じて顧客層を分けることです。
NPS®は結果指標としてわかりやすいですが、単純化された正味の数値だけでは現実が見えません。その改善に当たっては、先に述べたように、顧客層を「批判者/中立者/推奨者」に分けて考える必要があります。
批判者と推奨者を分けて捉えると、顧客ロイヤルティ形成の背景が見えてきます。
批判者と推奨者は、どうしてそのような印象を持つに至ったのでしょうか?
どのようなサービスがどのように顧客ロイヤルティに影響を及ぼすのかがわかれば、サービス改善の具体的方針を立てやすくなります。
ホッケースティック理論
2003年発行の『サービス・マネジメント(カール・アルブレヒト、ロン・ゼンケ 著)』で紹介された「ホッケースティック」理論では、顧客満足度と顧客継続率の関係性が紹介されています。
同書では、顧客満足度の5段階評価のうち最高得点の5点を付けた顧客の「継続率」は、4点の顧客と比べて飛躍的に高いという調査分析結果が示されました。
以下は、弊社が5段階評価の各数値に名称を付けたイメージ図です。(この理論について、弊社では年間20万件以上の覆面調査結果を用いた検証も行っております。結果は「サービスプロフィットチェーン」の解説ページをご覧ください。)
ホッケースティック理論
(『いかに「サービス」を収益化するか(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部 編訳、ダイヤモンド社発行)』を参考に編集)
ホッケースティック理論から、次のことがわかります。
- 不満を解消する改善活動は、離反防止要因にはなるが、リピートにはつながりにくい。
- 満足から感動(印象に残るサービス)につなげる活動が、リピート要因になる。
狩野モデル
1980年代に発表され、品質管理の考え方に世界的な影響を与えたとされる「狩野モデル」と呼ばれる理論があります。
「狩野モデル」では、顧客満足度に影響を与える製品やサービスの品質要素を5つに分類して説明しています。
(狩野紀昭, 瀬楽信彦, 高橋文夫, 辻新一, 1984, 魅力的品質と当り前品質)
以下に、弊社の見解も踏まえつつ簡単にご紹介します。
①魅力品質(感動因子)
なくても当然と思われている品質要素です。あると満足を高め、印象に残ります。NPSの考え方に照らし合わせれば、推奨者を生む要因となります。
■例
- 料理提供時の一言
- お客様の名前の呼びかけ
②一元的品質(満足因子)
あると満足につながり、ないと不満を引き起こす品質要素です。
■例
- 価格
- 提供スピード
- 料理のボリューム
③当たり前品質(最低条件)
あって当然と思われている品質要素です。ないと不満を引き起こします。NPSの考え方に照らし合わせれば、批判者を生む要因となります。
■例
- クレンリネス(衛生・安全)
- 正しい会計処理
- 入店時の挨拶
- メニュー写真と現物のマイナスのギャップ
上記①②③が主要な品質要素として紹介されているほか、以下④⑤についても、補足的な品質要素として言及されています。
④無関心品質
あってもなくても満足に影響を与えない品質要素です。
⑤逆品質
あると不満を引き起こし、ないと満足につながる品質要素です。
このように自社のサービス要素を区分して考えるには、NPS®や顧客ロイヤルティを測るための質問と同時に、具体的に洗い出したサービス要素についての調査も定期的に実施すると効果的です。
顧客ロイヤルティの結果指標となる「推奨意図」や「再利用意図」を聞く質問との関連性を分析すると、ヒントが見えてきます。
(ただし、NPS®の取得には偏りの少ない一定量のサンプルが必要です。設問量を多くすることは推奨されていませんので、このような詳細な調査を行う場合は、期間や数量の設計において注意が必要です。)
2)一人の顧客から考える
同じ顧客層の中でも、個別の事情によってサービスの評価は変わります。サービスの評価(印象)は、次のような複合的な要素が絡み合ってつくり上げられるためです。
■個別事情の例
お客様側:誰が(年代・性別・ご利用経験・世帯収入・家族構成・趣味嗜好など)、誰と、いつ、どこで、どのように、何を、いくらで、何のために、どのような環境で、どの程度ご利用くださったのか。
店舗側:その時対応した人が誰で、どのような組織体制で、どのような事前期待を与えていたのか。
個別事情を踏まえた具体的な事例やエピソードを理解すると、お客様のサービス利用体験の仮説を立てやすくなります。
ケーススタディとなり得る個別具体的な事例は、次のような手法によって収集することができます。
ケーススタディ調査の手法
- 覆面調査(ミステリーショッパー)
- 現場スタッフによるお客様の行動観察
- グループインタビュー
- アンケート調査の自由記述欄
ケーススタディを通じて得た気づきは、サービス利用体験の仮説構築だけでなく、サービス改善のモチベーションにもつながります。
弊社では、年間23.4万件(国内最大級)の覆面調査を実施しています。ケーススタディ調査の定期的な実施は、現場スタッフの教育・トレーニングや、従業員ロイヤルティの向上に効果を発揮します。覆面調査については、以下に詳しい説明がありますので、ご興味をお持ちいただけた方はぜひご覧ください。
まとめ
サービス評価は、サービス品質とお客様の期待によって形成され、期待は変化していきます。また、サービス品質には、客観的に評価できる要素だけでなく、価値観や企業姿勢への共感といったような感情的な要素も存在します。すなわち、サービス改善には総合的なマネジメントが必要であると言えます。
サービス評価の結果指標として「顧客ロイヤルティ」(企業やブランドに対する信頼や愛着の高さ)という概念が重要であり、その代表的な指標がNPS®です。
顧客ロイヤルティを高めていくには、結果指標を定点観測すると同時に、サービス改善へといかにつなげていくかが肝となります。
サービスの利用体験の仮説・検証を通じてサービス改善の指針をつくり、その実現のために全社を挙げて取り組むことが必要です。
長文となりましたが、「誰かに紹介したい」「また来たい」と思ってもらえるサービスの実現に向けて、NPS®活用の参考にしていただければ嬉しく思います。
(注釈)NPS®について
NPS®(ネット・プロモーター・スコア、ネット・プロモーター・システム)は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。