
アルバイトの離職率の平均は?定着率を上げる対策も解説
深刻化する人手不足のなか多くの企業がアルバイト採用に力を入れていますが、その一方で高い離職率が課題となっています。 本コラムでは「アルバイトの離職率に関するデータ」や「退職理由に関するインターネット調査結果」「アルバイトの定着率を高める具体策」等を解説します。アルバイトスタッフが長く安心して働ける環境づくりの参考にしてください。
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データで見るアルバイトの離職率
離職率とは?
はじめに、離職率とは何かを改めて整理しておきましょう。
離職率とは「一定期間内に離職した従業員の割合」を示す指標で、組織の安定性や従業員エンゲージメントの度合いを評価できる重要なデータです。一年度の離職率は、次の計算式で求められます。
このように離職率は「離職者数 ÷ 総従業員数」で求められるシンプルなデータですが、期間区分や対象従業員を変えることで、さまざまな切口で課題を発見することができます。 例えば「新卒3年以内離職率」に手を打ちたい時は次の計算式が使えます。
定着率は「100% — 離職率」で算出できます。
アルバイトの離職状況
さて、厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和5年のパートタイム労働者の入職者数(事業所が新たに採用した人数)は約400万人となっています。入職者数は、令和3年は約315万人、令和4年が約339万人、令和5年には約400万人と年々増加しており、多くの企業でパートタイム労働者の積極的な採用が進んでいることがわかります。
一方で、パートタイム労働者の離職率は、令和3年21.3%、令和4年23.1%、令和5年23.8%と年々上昇しています【図1】。直近の調査では4人に1人近くが離職してしまう状況になっており、採用したパートタイム労働者の離職防止は喫緊の課題となっています。
【図1】就業形態別・離職率の推移
※出所:「令和5年雇用動向調査結果の概要(厚生労働省)」より弊社作成
また、パートタイム労働者の離職率23.8%は、一般労働者の離職率12.1%と比べると11.7ポイントも高くなっています。どうしても流動性が高くなりがちなパートタイム労働者の離職対策は、一般労働者とは異なる視点を持って取り組む必要があると言えます。
アルバイトの離職率理由ランキング
調査レポート1|アルバイトの離職理由
では、アルバイトスタッフの離職率を改善するためには、どのような点を意識すればいいのでしょうか?サービス業でアルバイトとして働いたことがあり、かつ、半年未満の退職経験がある505名に「退職の決め手となった理由」を聞いた結果をレポートします。
【調査期間】2024年8月15日~2024年8月19日
【回答数】アルバイト505名、社員300名
【調査対象アルバイト】サービス業のアルバイト経験者で半年未満の退職経験がある人
【調査対象社員】サービス業の社員経験者で3年以内の退職経験がある人
【調査手法】インターネットリサーチ
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【図2】は半年未満で職場を辞めたことのあるアルバイトスタッフが選んだ退職理由です。最も多かったのは「職場の人間関係や雰囲気」で全体の35%を占めました。次いで「仕事内容」が19%と高い割合を示しています。
【図2】退職の決め手となった理由
社員として働いていたことがある人が選んだ退職理由も、最も多かったのは「職場の人間関係や雰囲気」でした。しかし、全体に占める割合は26%と、アルバイトスタッフとは9ポイントの差があります 。正社員とは異なり異動の機会がほとんどないアルバイトスタッフにとって、職場の人間関係や雰囲気は、働き続けるかどうかを左右する重要な判断基準となっていることがうかがえます。
調査レポート2|勤続期間別のアルバイトの離職理由
アルバイトスタッフの退職の決め手となった理由をより詳しく分析した結果が【図3】です。
仕事を始めて1週間未満と早々に退職したスタッフと、3カ月以上働いてから退職したスタッフでは、どのように退職理由が異なるかを分析するために「勤続期間別の退職理由割合」を算出しました。
結果、どのタイミングでも、最も多い退職理由は「職場の人間関係・雰囲気」となりました。一方で、入社から2週間目を超えたあたりから「労働条件(労働時間・休暇取得等)」を退職理由にあげるスタッフが増加しています。仕事に慣れ始めた頃から、「思ったより仕事量が多い」「希望日に休みが取りにくい」「休みを申請しづらい雰囲気がある」 といった、当初の期待と実際のギャップによる不満が退職のきっかけとなっている様子がうかがえます。
【図3】勤続期間別・退職の決め手となった理由(アルバイトスタッフ)
まとめ:アルバイトの離職理由
今回の調査からわかった、アルバイトが離職する原因となりがちな4つのポイントを以下に整理します。
●同僚との人間関係
入社初期のアルバイトも、仕事に慣れ始めたアルバイトも、 退職理由のトップは「職場の人間関係や雰囲気」です。職場異動の機会がほとんどないアルバイトにとって、 職場の人間関係は働きやすさを左右する重要な要素であることがわかります。
●上司との人間関係
「職場の人間関係や雰囲気」には、上司である店長との関係も含まれます。マイナビの調査では、理想の上司像として「いつでも相談できる雰囲気がある」「指示が的確」「感情的にならない」などがあげられています。特に仕事を始めたばかりの時期は、これらの姿勢を上司が意識することが大切です。
※参考:アルバイト先の理想の上司とは?離職理由などの調査結果からみえる上司像を探る | マイナビキャリアリサーチLab
●採用面接とのギャップ
採用面接時に説明を受けた業務内容や仕事量と、実際に働き始めてからの実態にギャップがあると、アルバイトは「思っていたのと違う」と感じてしまい、早期離職のリスクが高まります。実際に忙しいか厳しいか以上に、「事前のイメージとのギャップ」 が離職につながることを念頭に採用面接の内容を組み立てる必要があります。
●仕事へのやりがいを実感できない
仕事にやりがいを感じられないことも、離職につながる大きな要因のひとつです。今回の調査でも、離職理由の第2位は「仕事内容」でした。 新人には簡単な仕事から任せることも多いですが、その先にある業務の全体像が見えないままに簡単な仕事が続くと、スタッフは仕事に価値を見出しづらくなります。スタッフが仕事に誇りややりがいを感じられるように、自分達のビジネスの意義や、今任せている業務が職場やお客様にどう貢献しているのか、意識的に伝えるといった工夫が大切です。
新人アルバイトの定着率を高める具体策
ここからは、アルバイトの定着率を改善するための具体策をご紹介します。「初期定着を高める施策」と「ある程度仕事に慣れてきた時期の離職防止対策」は異なります。それぞれにわけて解説します。
●出勤初日に歓迎感を伝える
新人の出勤初日はとても大事です。初日に歓迎感を伝えることができれば、その後の安心感が大きく変わるからです。定着率の高い店舗は、出勤初日に歓迎感を伝える取り組みを何となくではなく、先輩スタッフで話しあって事前に決めています。店長や社員だけでなく先輩アルバイトも一緒に新人を歓迎するムードを作り上げることが大事です。
<歓迎感を伝える施策事例>
【紹介ツアー】店長が一緒に挨拶にまわり、先輩スタッフを紹介する
【歓迎朝礼】通常の朝礼内容に加えて、自己紹介や歓迎メッセージの時間を取る
【ウェルカムメッセージ】「ようこそ、〇〇さん!これからよろしく」といった歓迎の言葉を貼り出したり、メッセージカードを渡す
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※詳しくはこちらの記事でご紹介>>新人スタッフの出勤初日にすべきこと
●コミュニケーションの頻度を保つ
半年未満で職場を辞めたアルバイト505名に「どのような体験・経験があれば退職をふみとどまれたか」を聞いた結果が【図4】です。1位:他スタッフとの良好なコミュニケーション、2位:些細な悩みや困りごとを相談できる、3位:上司との定期的なコミュニケーションと、その他の回答を除いたトップ3すべてがコミュニケーション項目です。新人アルバイトはさまざまな不安や不満を抱きますが、コミュニケーションの機会があれば、誤解を紐解いたり、心配点をフォローしてあげることが可能です。
【図4】どのような体験・経験があれば退職を踏みとどまれたか/ アルバイト
職場に慣れるまでの期間には個人差があるので一概には言えませんが、少なくとも入社1カ月間は、頻繁な声がけや数分でもいいので話を聞く時間の捻出が重要です。
定着率の高い店舗が取り組んでいた時間捻出の工夫を下記にご紹介します。
【新人担当を決める】店長以外の新人サポート担当者を決めておく
【シフトインの数分】スタッフルームでの事務仕事を新人シフトイン時にあわせて行い、声をかける
【シフトアウトの数分】新人のシフトアウト時に数分でいいので感想や疑問点を聞く
【新人の仕事場所】裏方作業を奥まった所ではなく、スタッフが通る所でしてもらい、頻繁に声がけ
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※詳しくはこちらの記事でご紹介>>新人を“ひとりぼっち”にさせない方法
●面接では良い点も悪い点も伝える
採用面接では、職場の良い点だけでなく、大変な部分も率直に伝えることが大切です。応募者が面接時に抱いた業務内容や仕事量のイメージと現実にギャップがあると、早期離職につながるからです。アルバイトが実際の働き方に対して現実的な期待を持てるように、業務内容や職場環境をできるだけ具体的に説明しましょう。この手法は「リアリスティック・ジョブ・プレビュー(現実的な仕事情報の事前開示)」として研究も進んでいます。参考ください。
<リアリスティック・ジョブ・プレビューの方法例>
【職場見学】応募者自身の目で雰囲気や業務内容を理解してもらう
【先輩社員】面接に同席してもらい、質問に答えてもらう、仕事のリアルな側面を伝えてもらう
【動画活用】仕事の一日の流れ、やりがいや大変な点をリアルに伝える動画を活用
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中堅アルバイトの定着率を高める具体策
ある程度仕事に慣れたきたアルバイトの定着率を高めるには、忙しさやシフトなどに対する「思っていたのと違った」という不満に気をつけること、また、働き続ける意味づくりが大切です。
●フォロー不足に気をつける
会社で定められている新人教育を終えた途端、「教育期間は過ぎたのだから」といきなりフォローがなくなるケースがあります。中堅アルバイトには、中堅ならではの不安や不満があります。勤務態度を見守り適切に声をかけることはもちろん、時には個人面談を行い、新人から中堅アルバイトに変わる時期に、いきなりフォロー体制がなくならないように注意が必要です。
●昇給制度をしっかり伝える
昇給制度のわかりやすさは、アルバイトのモチベーションに影響します。昇給のタイミングや評価基準を明確にし、努力が報われる仕組みを理解させることが必要です。定期的に評価面談を行い、これまでの評価とともに、将来に期待する成長も伝えます。
●働きがいを感じられる職場づくり
職場環境が良好であることは、アルバイトの定着率向上に大きく寄与します。新人の頃は不安を取り除くコミュニケーションが重要でしたが、中堅アルバイトの場合は、仕事のやりがいや人間関係が深まるコミュニケーションが大事です。例えば、朝礼や終礼でスタッフ同士が目標を宣言し合うことや、成功を称賛し合う文化を作ることで、職場内のコミュニケーションが活性化します。また、入社数か月後には1on1面談を行い、これまでの成長を振り返る機会を設けることが推奨されます。
アルバイトの離職率を改善した企業事例
最後に、アルバイトの離職率を改善した企業の取り組み事例を3つご紹介します。
<ケース1>飲食業A社の事例
飲食店を複数運営するA社では「表彰コンテスト」を活かして、スタッフの定着率向上と売上向上を実現しました。同社は年に1回、各店舗の取り組みを表彰するコンテストを行っています。このコンテストの特徴は、決勝戦の選出基準に「顧客満足度調査のスコア」と「衛生検査のスコア」を取り入れ、コンテストに向けて取り組むことが、店舗運営の質の向上につながるように工夫している点です。
結果、コンテストを通して、店舗に対する顧客評価は高まり、既存店売上も毎年前年比100%を超えるようになりました。このことがスタッフの自信や働きがいの向上につながり、スタッフの定着率も向上、募集費用を下げることにも成功されました。スタッフの仕事への誇りや自信が高まるように「表彰コンテスト」を企画したことで、スタッフの定着率を高めることに成功した好事例です。
>>株式会社サンパーク様の事例(詳しい内容はこちらから)
<ケース2>定着率60%→80%を実現、 アミューズメント施設運営B社の事例
現場スタッフのモチベーション向上が急務だった同社は、スタッフが元気に働ける環境づくりを専任で担うチーム「もっと元気チーム」を立ち上げました。同時に、各店舗に任せていた募集活動を本部主導に変更したり、アルバイトの採用面接のやり方について店長研修を行い標準化しました。
その後も、同社は従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」を活用し、 現場のESの状態を可視化する仕組みを構築、スタッフが元気に働ける環境づくりに継続的に取り組んでいます。ES施策を強力に推進するために専任チームを立ち上げ、「ESの強化」と「採用プロセスの改定」の両輪で取り組んだことで、 同社の半年以内の定着率は60%から80%へと大幅に改善しました。
>>株式会社バンダイナムコアミューズメント様の事例(詳しい内容はこちらから)
<ケース3>管理職研修の内容を改善、離職率が大幅改善(飲食企業C社の事例)
出店が続くC社では、アルバイトを含めた年間採用人数が1,800~2,000人の規模に拡大していました。結果、採用コストや新人トレーニングの工数が増大。スタッフの定着率向上に取り組むことで、必要な採用人数の膨張を防ぐ重要性が増していました。
そこで、同社はまず自社の現状を整理するために、従業員エンゲージメント調査を行いました。診断の結果わかったのは、上司の「部下に対するコミュニケーション知識の不足」です。離職率を下げるために重要なテーマを発見した同社は、
・管理職研修の実施(幹部、SV、店長全員に対して実施)
・スタッフと本部のホットライン設置
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といった取り組みを行い、上司との人間関係が原因の退職者を前年比50%減少させることに成功、全体の離職率も低下しました。離職率を下げるために、いきなり何かに取り組むのではなく、まず従業員エンゲージメント調査で現状を整理し、優先して解決すべきテーマを特定してから行動したことで、成果につながった優良事例です。
>>株式会社トランジットジェネラルオフィス様の事例(詳しい内容はこちらから)
アルバイトの離職率悪化が及ぼす影響
アルバイトの離職率が高まるとさまざまな損失が発生します。主な影響を解説します。
●採用コストの増加
まず、 採用コストの増加があげられます。新しいスタッフを採用するには、求人広告費や採用活動にかかる時間が必要で、直接的なコストとして企業の負担を増やします。特に、早期離職率が高い職場では、採用活動の頻度が増え、コストもかさみやすい状況になります。早期離職率の改善に取り組むことが、本質的な課題解決のための急務です。
●初期教育コストの増加
初期教育コストの増加も見逃せない問題です。 新しいアルバイトを採用するたびに、業務を教えるための時間と労力がかかります。先輩スタッフがたびたび新人教育に時間を割かざるを得ないことで、教える側のアルバイトスタッフのモチベーション低下にもつながりかねません。
●サービス品質の低下
アルバイトの離職率が高く、経験の浅いスタッフが多い状態だと、サービスの質や業務の正確性が低下する可能性があります。【図2】は、入社半年未満のスタッフ比率が「高い店舗」と「低い店舗」の顧客満足度スコアの比較です。入社半年未満のスタッフが少ない店舗ほど、すべての評価項目で高いスコアを獲得しており、結果、再来店の意向が高まっています。スタッフの定着を促すことが、サービス品質や顧客満足度の向上に直結することがわかります。
【図5】「入社半年未満スタッフの比率」と「顧客満足度スコア」の関係
●店舗イメージの悪化
人手不足の状態が続くと、アルバイト募集を継続的に行わざるを得なくなり、「退職者が続いている」「職場環境が良くない」と捉えられかねない状況になります。店舗や会社のイメージが悪化するリスクを伴います。
離職防止は成長ステージにあわせた対策が鍵
この記事では、新人アルバイトから中堅アルバイトにわけて、離職防止のアプローチを整理しました。それぞれのステージに応じた対策が求められます。
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