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客単価でお客様の「値上げ許容度」は変わるのか? ~飲食店30,802件データを分析~

卵や乳製品など、値上げが続く食材原価。経営の安定のために値上げに踏みきらざるを得ない飲食企業も増えています。株式会社MS&Consultingではインフレ時代の戦略を考えるヒントとして「顧客満足度とお客様の値上げ許容度の関係」を30,802件の覆面調査データを使って分析しました。「飲食店の値上げに関する消費者の感覚」をレポートします。(調査数:飲食300法人、30,802調査、調査期間:2022年7月~12月、調査手法:覆面調査)

※本記事は2023年3月に行われた「サービス学会  第11回 国内大会」で論文発表を行った内容の抜粋です(論文名:飲食業における価格に対する消費者感覚と顧客体験評価の関連について)。

目次[非表示]

  1. 1.顧客満足度が高まると、お客様の「値上げ許容度」も高まる
  2. 2.客単価でお客様の「値上げ許容度」は変わるのか?
  3. 3."値上げによる顧客離反"を起こさないために


顧客満足度が高まると、お客様の「値上げ許容度」も高まる

本調査では、実際に飲食店を利用した30,802名に2つの質問をしました。

  1. 今回、店舗で実際に使った金額はいくらですか?
  2. 今回、店舗で体験した内容について何円くらいから「高い」と感じ始めますか?

そして、この2つの金額の差分をお客様の「値上げ許容度」と仮定して調査しています。

値上げ許容度の計算式説明図


まずはじめに分析したのは「顧客満足度(以下、CS)」と「値上げ許容度」の関係です。CSについては「このお店にまた来たいと思いましたか?」と再来店意思を問う設問の回答結果を利用しています。

結果、CSが高いほど値上げ許容度も高まることがわかりました【図1】。


【図1】「顧客満足度(再来店意思)」と「値上げ許容度」の関係
【図1】「顧客満足度(再来店意思)」と「値上げ許容度」の関係

●「たぶん来ない/絶対来ない評価の店舗(CSが低い店舗)」では、平均で現在の支払い金額+3.9%で高いと感じられてしまっている
●「必ずまた来たい評価の店舗(CSが高い店舗)」では、平均で現在の支払い金額+16.7%で高いと感じ始めるとの回答になっており、値上げの余地がある
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値上げによる顧客離反を防ぐ方法のひとつとして「値上げと同時にCS向上施策も行う」という打ち手が有効であると言えそうです。

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客単価でお客様の「値上げ許容度」は変わるのか?

次いで分析したのは、CSと値上げ許容度相関関係は「客単価」で変わるという点です。

本調査では、居酒屋業態に対する調査レポートを、調査時の客単価によって「2,000円台以下」「3~4,000円台」「5,000円台以上」の3カテゴリに分類して分析を行いました。CSについては「料理の美味しさに対する満足度」ならびに「スタッフの気配りに対する満足度」を問う設問の回答結果を利用しています。

その結果、いずれの客単価でも、CSが高いほど値上げ許容度も高まることが確認できました。値上げによる顧客離れを防ぐためには、客単価の高い低いにかかわらず、値上げと同時に料理の美味しさやスタッフの気配り力を磨くことが有効と言えそうです。

【図2】「スタッフの気配りに対する満足度」と「値上げ許容度」の関係
【図2】「スタッフの気配り」と「値上げ許容度」の関係


【図3】「料理の美味しさに対する満足度」と「値上げ許容度」の関係
【図3】「料理の美味しさに対する満足度」と「値上げ許容度」の関係

一方で、料理の美味しさやスタッフの気配りについて「不満評価」だった場合、客単価が高い方が値上げ許容度の低下に及ぼす影響が大きいことわかりました。この傾向は特に料理の美味しさとの関係において強くなっています【図4・図5】。

客単価が高いと、料理や接客に対するお客様の「このぐらい支払うならこのぐらいは期待したい」という事前期待も高まるため、CSが価格に対する消費者感覚に及ぼす影響が大きいと考えられます。


【図4】客単価別、値上げ許容度の低下幅
(スタッフの気配りが不満評価だった場合)

【図4】客単価別の値上げ許容度の下げ幅比較 (スタッフの気配りが不満評価だった場合)


【図5】客単価別、値上げ許容度の低下幅
(料理の美味しさが不満評価だった場合)

【図5】客単価別、値上げ許容度の低下幅 (料理の美味しさが不満評価だった場合)


客単価3,000円以上の業態を経営している場合、値上げと同時にCS向上を計画することはもちろん、特に「不満評価」を防ぐ手立てを立てることが重要となると言えそうです(2,000円台の客単価を想定していた業態でも、値上げにより客単価が3,000円以上に高まるケースも同様)。


"値上げによる顧客離反"を起こさないために

以上、飲食店に対する30,802名の覆面調査レポートを分析してわかった3点をご紹介しました。

 ①CSが高まるとお客様の値上げ許容度も高まる
 ②客単価の高い低いにかかわらず①の傾向は同じ
 ③一方で、CSが不満評価の場合は、客単価の高い業態の方が値上げ許容度の下げ幅が大きい
 ※1番のCS指標には「再来店意思」、2~3番のCS指標には「料理の美味しさ、スタッフの接客に対する満足度」を利用。

店舗運営においてもインフレの波が押し寄せている今、あらためて

自社店舗は顧客満足度の高い店舗になっており、値上げ許容額がある状態か

というポイントをチェックしてみてください。弊社では『価格改定の判断』をサポートする各種リサーチサービスをご提供しています。お気軽にお問合せください。(詳しい資料はこちらからダウンロードできます⇒)


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【調査概要】
調査期間:2022年7月~12月
調査手法:覆面調査
調査数:飲食300法人、
30,802調査


※文責:株式会社MS&Consulting データ活用推進室 室長 データアナリスト 錦織浩志​​​​​

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