本や雑誌では知り得ない、最新の経営必勝法を公開

『季刊MS&コンサルティング 2011年冬号』掲載
取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。


厳しい環境にさらされている外食業界において、どう経営の舵取りをしていくべきか? この多くの経営者の方々にとって共通する課題へのヒントを探るべく、MS&Consultingでは、その時々のトレンドに応じたテーマを選び、好業績を続ける企業の最先端の経営スタイルを学ぶ『外食経営研究会』を定期的に開催しております。

ここでは、ご参加者満足率100%(大変満足50%、満足50%)のご評価を頂いた『第三回外食経営研究会』(2010年10月27日(水)、東京・芝浦にて開催)での講演の一部をご紹介します。誌面ではご紹介しきれない部分が多分にございますが、ご興味をお持ち頂けた方は、本年も『第四回外食経営研究会』の開催を予定しておりますので、是非とも足を運んで頂ければ幸いです。

MS&Consultingはこれからも、多くの経営者の方々とのつながりと、10年以上にわたり培ってきた知見交換のノウハウを活かし、事例共有を中心とした有益な情報交換を行って頂ける機会を提供して参ります。


一風堂の「のれん分け」~直営社員の商人力を育てる~

株式会社力の源カンパニー 取締役 奥長義啓氏
【株式会社力の源カンパニー】
福岡県福岡市中央区薬院1-10-1
会社ウェブサイト:http://www.chikaranomoto.com/


社員の夢を叶えるキャリアプランとして外食業界に拡がった「のれん分け制度」は、優秀な社員が外に出て直営が弱くなるリスクと隣り合わせであると一般的には思われている。しかし、一風堂の「のれん分け制度」は、考え方が根本的に違っている。力の源カンパニーは現在急速に店舗数を拡大させているが、企業規模の拡大に伴って「ラーメン屋ならではの個店の魂」が失われていくことへの危惧が、「のれん分け制度」構築のきっかけだった。店主の経済的成功・人間的成長の後押しと同時に、市場縮小という危機の中、経営陣だけではなく全店長が「店主」としての経営者気質を持ち、のれん分け店主を含めた全社員が危機感や喜びを共有するための緊張感を生み出すための制度として、「のれん分け制度」はスタートした。結果、社員の結束力とブランド力の強化を実現。のれん分け店舗は、サービス品質を向上させながら、原価約3%減、シフトコントロールによる月間40~78万円程度の人件費減、営業利益約4~10%増などの目に見える成果を叩き出した。10年前から温め続けたブランド力強化という制度自体の目的とその浸透プロセス、制度実施後の劇的な成果へのこだわりが、「のれん分け制度」成功の重要なポイントであったと言える。

【ご講演に対する気づき・感想】

・信じるか否かは0か100、素晴らしいことです。精神論ではない苦労が伺えました。

・弊社のラーメン業態でも「のれん分け制度」をとっておりますが、本部としては見習わなければならない点が多かったです。


失敗しない海外進出~日本企業の海外進出事情と実例~

株式会社ミュープランニングアンドオペレーターズ 代表取締役兼CEO 吉本隆彦氏
【株式会社ミュープランニングアンドオペレーターズ】
東京都港区赤坂4-1-33 赤坂中西ビル6F
会社ウェブサイト:http://www.myuplanning.co.jp/

今、アジア市場進出への関心が高まっている。理由は、高い人口増加率と、急増し続ける世帯当たり可処分所得だ。吉本氏は、アジア圏における日本食市場の大きさを約20兆円と試算する。しかし、海外では、日本で培ってきたノウハウそのままでは通用しない。業態を考える時に検証すべき視点は3つある。文化的背景(人)を考慮した「適合性」、食材調達(物流)が鍵となる「再現性」、貨幣価値や消費動向が関係するメニュー・商品の「価値観(相場観)」だ。現地に何度も足を運び、その場所で勝てるかどうかの感覚をつかむことが必要だという。そして、国によって特に異なるのが、法律・契約形態、経理基準、家賃、人件費だ。例えば、インドネシアでは、坪当たり投資額が約25万円と日本の約4~5分の1、人件費は売上の約7~8%、フードコストが約50%のモデル。シンガポールでは、坪当たり投資額が約40万円、人件費25%と日本より割安だが、外国人就業規制などの現地事情の関係で日本に近いモデルとなる。香港では、日本より家賃が高い上に3~4年の短期契約となることが多い。このような各国の事情にビジネスモデルも大きく影響される。とはいえ、資金的リスクは日本に比較してどの国も小さく、精神力と行動力に情報のノウハウが加われば十分に成功のチャンスがある。

【ご講演に対する気づき・感想】

・2つのルート、海外進出のポイント、各社の事例が良かったです。吉本社長の実績にもとづく話は参考になりました。


脅威的リピート販促術~店内顧客囲い込みで昨対112%~

株式会社萬野屋 代表取締役 萬野和成氏
【株式会社萬野屋】
大阪府大阪市天王寺区勝山4-10-25 ガード下番号116-117
会社ウェブサイト:http://www.mannoya.com/


萬野屋は、売上高に占めるリピーターの割合が62%。年10回以上来店する愛顧客が2,500人。どの店もわずか15坪~45坪の店で月間1,300~2,400万円を売り上げる。その愛顧客経営の成功要因は、販促ターゲットの絞り込みにある。萬野屋では、新規客獲得のための販促を一切行わず、(1)目の前のお客様と、(2)目の前のお客様とつながりのある方々に販促ターゲットを絞り込む。戦術は、一日10分、10人迄の新規来店客に対するアンケートである「つーしんぼ(通信簿)」、それと連動して必ず2週間後のタイミングに発送する反応率56%の会員券付きハガキ(誕生日などのタイミングで発送する全てのDMの平均反応率は28%)、来店回数に応じて割引率が上がっていくポイントシステムなどを組み合わせた「ご意見番制度」だ。最も特徴的なのは、お客様の常連度合いによる接客対応の差別化だ。それを支えるのは、全スタッフが接客を行う前に必ずチェックする過去の注文履歴やアンケートの内容などが全て紐付いたデータベース。ご来店時に必ずお客様を特定し、いつもの注文メニュー+αの心遣いを添えることで、お客様の心をつかむ。社員・スタッフが自主的に実行するこれらの施策を開始して既に10年以上が経過する。適切な施策はこうして継続することで真価が発揮される。


【ご講演に対する気づき・感想】

・商売の原点を教えていただきました。どの業界でも相通じることだと痛感しました。

・おもしろい!アンケートやDMはたくさんありますが、この取り組みは素晴らしい。

・顧客管理について、すごくしっかりされていて勉強になりました。


記事のPDFをダウンロード

pagetop