MSナビを活用し、覆面調査の再来店意向満点比率20%アップ 震災後、わずか5カ月で売上前年対比100%超えを実現
株式会社イーストン
取材・文/砺波敬之 編集/宮本紗和
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
北海道、仙台、東京、埼玉でイタリアン業態「ミアボッカ」「クッチーナ」「ミア・アンジェラ」焼鳥ダイニング「いただきコッコちゃん」など43店舗を展開する株式会社イーストン。1年間で、顧客満足度調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下、覆面調査)の総合得点を全店平均10点アップ、再来店意向満点比率20%アップを実現。また、2018年9月6日に発生した北海道地震では、地域の飲食店が軒並み大幅に売上を落とす中、同社の店舗は売上前年対比89%を維持、5カ月後の翌年2月には105%を達成し、現在も100%以上を維持している。これらの成果を創出した取り組みについて、代表取締役社長大山泰正氏と執行役員営業本部東北ゾーンマネージャー松井憲文氏にお伺いした。
覆面調査をどのように活用されていますか?
大山氏:1号店目を出店してから30年目にあたる2016年度に「6次化チェーンの基盤づくり」をコンセプトにした中期経営計画を作成いたしました。北海道に本社を置く会社なので、より北海道の魅力をアピールできる業態を作っていくことと、社員には実家が農家という人が多いため、農家に対して安定的な需要を生み出していくことがテーマになっています。43店舗展開しており、どんな料理がお客様に好まれているのか日々データが集まってきますので、データを分析して、その料理の素材を農家の方に作っていただき、安定的に供給していただいています。農家から直接仕入れることで、農家の方々とコミュニケーションができ、どういうこだわりを持って作っているのかを知ることができます。そのこだわりをお客様に伝えることが北海道らしさ、他店との差別化になっています。お客様に生産者のこだわりを伝えるために、メニューの見せ方を工夫していますが、一番伝わるのはスタッフの一言です。そのため、どうやったらお客様にこだわりが伝わるかを考えるためのツールとして、また実際伝わっているかどうかを確認するためのツールとして、覆面調査を利用しています。
これまで他社の覆面調査を導入されていたとお聞きしましたが、弊社との違いは何でしょうか?
松井氏:MS&Consultingさんは、まず業界内の膨大なデータを持っていらっしゃること、そして弊社の方針に則した設問項目を設計していただいたことです。データを分析すると、中期経営計画で掲げた「北海道の魅力をアピールする」という方針こそが、まさに他社との差別化要因となり、お客様の再来店につながりやすいことが分かり、弊社独自の主要項目を作成しています。
このように、弊社の目指したい方向を理解いただき、現場で取り組むべきアクションを一緒に考えていただける点が、大変ありがたいと思っています。
2018年3月から取り組みがスタートして、1年間でミステリーショッピングリサーチの総合得点が10点、再来店意向満点比率が20%アップした要因を教えて頂けますか?
松井氏:以前から、スタッフを中心としたボトムアップ型の店舗運営を目指そうとしていました。ミーティングや社内表彰など行っていましたが、一部のスタッフだけの取り組みで終わってしまっていたことが悩みでした。スタッフを巻き込んでいくボトムアップ型の店舗作りが重要だと分かっていたのですが、徹底させるには時間と労力がかかり、本部として二の足を踏んでいたところはありました。さきほど大山が申しましたように、2016年度に方針を変え、よりスタッフが中心となった店舗運営を行っていく必要が出てきたために、本腰を入れて取り組むことにし、2018年度のミッションも、「また会いたい、また来たいお店を創ろう!」を掲げました。
そしてまず、社員の人事評価制度の変更とKPIの設定を行いました。もともと人事評価は、売上と利益と人財育成だったのですが、そこに覆面調査の再来店意向数値と離職率を入れました。再来店意向を上げるために、再来店意向と相関性が高い項目をピックアップし、主要項目に設定いたしました。そして、主要項目を上げるために店舗スタッフが現場で考えて行動しているかどうかの確認として、レポートの閲覧率と気づき記入率をKPIに設定しています。
図表|再来店比率・前年売上対比の推移(2018年3月~19年2月)
覆面調査の結果が見られる無料アプリ「MSナビ」を活用することで、何か変化はありましたか?
松井氏:KPIを設定しても、気に留めなかったり、見ていないということが起こりますので、意識させるためにKPIを毎月数値化して全店舗に共有し、徹底度合いを高めました。徹底度合いを高める上で、スマホでレポートを閲覧でき、スタッフ自身が自分の考えをコメントできるMSナビは役に立ちました。覆面調査の再来店意向や主要項目の点数がすぐに上がるということはないのですが、スタッフのレポート閲覧やコメント記入といった行動に対して、店長やスタッフ同士が、「良い気づきだね」「○○さんの取り組みは、必ずお客様に伝わるよ」「さすが○○さんです」などコメントすることで、スタッフは承認感を得ることができ、頑張ってみようと思い始めます。取り組むと、主要項目の点数が変化していきますので、スタッフにとってみると、取り組んだことが目に見えた結果として現れてきます。やってみて、結果が出てくると、スタッフは取り組みが楽しみになり、自主的に行動してくれるようになります。
MSナビは、個々のスマホでレポートが見られるので、現状を把握し、課題点を抽出し、改善策を考えるまでのスピードがとても速くなりました。いわゆるPDCAが速くなったので、早く結果が出るようになり、スタッフの自主性が高まるスピードも早まったと思います。取り組みをスタートした2018年3月時点は、気づき記入率41.7%だったのが、約1年後の2019年2月では83.7%まで上がり、レポートが出てきた3日以内に記入をしています。私が担当している仙台エリアでは、9店舗中7店舗の全スタッフが気づきを記入しています。
図表|再来店比率・閲覧率・気づき記入率の推移(2018年3月~19年2月)
また、スタッフは全員、常にイーストンの価値がつまった「VOEカード」(VALUE OF EASTONE)を携帯しています。その中には、7項目の行動基準があります。イーストンで働くスタッフは常に行動基準を頭において行動します。その中でも、最もイーストンの理念を体現しているスタッフを3カ月に1回表彰するVOE賞への推薦人数が増えてきました。毎月10名を選出しているのですが、その選出方法は他のスタッフからの他己推薦です。全店で800名のスタッフが在籍しているのですが、毎月500名の他己推薦があります。
MSナビを使って、スタッフ同士のコミュニケーションが活発になったことにより、スタッフ同士で認め合う文化ができてきたのではないかと思います。
VOEカード
最後に今後のお取り組みについてお教えいただけますか?
大山氏:すでに変更しようと思っていることにもなりますが、毎年開催している成果発表会で、これまでは5つあるエリアから1店舗ずつ選出していたのですが、優秀なお店が増えてきましたので、エリア関係なく全店舗から5店舗選出する方法に変えていきたいと思っております。各店舗に、CS活動を推進するリーダーがいますので、そのリーダーを中心に店舗改善が進むように、仕組みを変えていきたいです。
成果創出ステップをまとめると
STEP1:覆面調査/業態特性に合わせた主要項目の設定
STEP2:MSナビ/現場改善状況の見える化により、PDCAサイクルをスピーディーに回すことが可能に
STEP3:成功体験/目に見える結果(同僚やお客様からの称賛、KPI変化)を得ることで成功体験を積む
STEP4:自主性/成功体験を積むことで、スタッフが自信を持ち、自主性が高まる
STEP5:アクション/自主性が高まることで、目標達成のためのアクション量と質が高まる
あなたのお店の課題は何でしょうか?まずは現状把握をしてみましょう。