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採用活動を見える化   ローカルでの勝ち方~1カ月以内離職率を50%→0%に~

有限会社S.A.N.COMPANY

埼玉県深谷市西島町2-1-3 深谷SHビル9号室


取材:砺波敬之、染谷朋江
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

埼玉県北部エリアで居酒屋等6店舗を展開する、有限会社S.A.N.COMPANY。優秀な人材が都心に流出してしまうというローカルエリアならではの苦労もある中、採用活動の見直しのために「採用革新システム」を導入。応募から採用までの流れを見える化することで、どの部分を改善すべきかを抽出。さまざまな施策を打つことで、それまで50%近かった入社後一カ月以内離職率がほぼゼロの水準にまで下がるなど、目覚ましい成果を上げている。
同社代表取締役 山川大輔氏、総務部部長 阿部進也氏、営業事業部SV 本澤史典氏に、お話を伺った。

――御社ではCSだけではなくESも重視されていますが、その背景を教えてください。

山川氏:弊社は埼玉県深谷市という、言ってみればローカルなエリアの中で、6店舗を集中展開しています。商圏が小さい分、その中でリピーターを増やしていくことが、戦略上非常に重要となってきます。
リピーターになっていただくためには顧客満足度を上げなければなりませんが、そのためには、まず働いているスタッフたちが楽しく生き生きと仕事をしていなければなりません。「ESなくして、CSなし」とは本当にその通りで、スタッフが仕事を楽しめないような状態の店で、お客さまが楽しめるわけがありません。

――人の問題は永遠の課題ですが、昨今はその入り口である人材採用についても苦労している企業が多いですね。

山川氏:「サーバーになりたい」「ソムリエになりたい」といったような目的意識を持った人ほど選択肢の多い都心に出ていってしまう傾向がありますので、弊社のようなローカル立地の企業には特に厳しいです。


お話をお伺いした、S.A.N.COMPANY代表取締役 山川大輔氏(写真中央)、総務部部長 阿部進也氏(写真左)、営業事業部SV 本澤史典氏(写真右)


――御社では今年の4月より「採用革新システム」を使って採用活動の見える化に取り組んでいらっしゃいますが、システム導入のきっかけは何でしょうか?

本澤氏:採用に関しては以前からいろいろと工夫をしていましたが、どうしても求人媒体ありきの発想で、根本的な部分に踏み込めていないという感覚がありました。また、今後の出店に向けて「社員を何名獲得したい」という目標を掲げても、では何を変えれば目標達成できるのかが明確になっていませんでした。
まず最初に変えたのは、媒体の会社さんとの付き合い方です。うちの「ありたい姿」をしっかりと説明し、その上で「年間計画を立ててきて」と話しました。「今何人足りないから、○○円くらいでだいたい何人くらいの募集が来るだろう」ではなく、長期スパンでのPDCAを回して行こうと、採用への考え方を変えました。

次に、MS&Consultingさんとはミステリーショッピングリサーチの利用でお付き合いをさせていただいておりましたが、弊社の人材採用・定着の問題に対して「採用革新システム」をご紹介いただきまして、「課題解決に役立つのでは」と導入を決めました。
実際にシステムを利用してみて、「応募をいただいてから採用するまでの業務プロセス」が明確になったことが、一番の成果だと感じています。
採用業務のプロセスを見える化し、それぞれの状態が定量的に明らかになったことで、やろうと決心した採用活動のPDCAも、プロセス別の改善活動にまで着手することができるようになりました。

【採用革新システム画面①】応募者ごとの選考の進捗度合いを一覧で管理。一元管理することで、タイミング遅れや抜け漏れによる機会損失を防ぐ。


――具体的な取り組み内容と成果をご紹介いただけますか?

阿部氏:まず、店長ごとの「面接率」「面接通過率」に大きなばらつきがあることを発見し、それに対処できたことが、大きな成果だと感じています。
弊社の場合、面接は店長の業務なのですが、「採用革新システム」を使って採用に関するデータを一元化・見える化したところ、応募数に対して実際に面接を実施する「面接率」や、面接後に実際に採用した「面接通過率」について、店長によってかなりの開きがあることがわかりました。

そこでその原因を調べたところ、まず「面接率」については、「面接に苦手意識のある店長が、応募者に面接日を連絡するための電話を後回しにして、その間に他社さんに決まってしまっている」ケースがあったということで、最初の連絡は全て本部に来るようにし、こちらで対応した後で店舗に振り分けるというフローに変更しました。
「面接通過率」についても、こちらがお断りしているのではなく、面接後の辞退により通過率が下がっている状況でしたので、面接者の力量の違いによる説明のブレをなくすために「紙芝居」というツールを作りました。これは、面接時に伝えたいことを、伝えたい順番で話すためのプレゼンツールです。面接時にこのツールを使って、文字通り紙芝居形式で説明を進めていくことによって、こちらが伝えたいことを分かりやすく、漏れなく、正しく、相手に伝えることができます。

本澤氏:この「紙芝居」によって「面接通過率」のばらつきが改善されただけではなく、「一カ月以内離職率」も劇的に下がりました。
今の阿部の話にもありましたように、「そもそも面接ができない」というケースもある中で苦労して採用したスタッフですが、せっかく採用しても一カ月も経たず辞めてしまうという例が少なからずあります。


そこで、「何故すぐ辞めてしまうのか?」という原因を考えました。さまざまなケースはあるでしょうが、「実際に働き始めたら、面接時の説明と話が違う」と、会社への不信感から辞めていくパターンが多いのではないかという仮説を立てました。つまり、原因は先ほどと同じく、店長の面接スキルの差にあるのではないかという仮説です。

実際、紙芝居を使って面接のばらつきを改善したところ、それまで50%程度あった一カ月以内離職率がほぼゼロになりました。
もちろん、紙芝居以外にもいろいろな取り組みをしていますが、応募から始まる各ステップに応じてそれぞれ改善策を打つことが重要で、そのためにもまずは各プロセスを見える化できたことに価値を感じています。

【採用革新システム画面②】店舗ごとに、各ステップの歩留まりを見ることも可能。入社後も継続してデータを蓄積することで、定着率の分析にも活用できる。


――採用はあくまでも入口で、本来的には採用してからが本番ですが、御社のES向上の施策についてもご紹介いただけますか?

山川氏:代表的なところでは、「サンライズ」と呼んでいる全社集会があります。毎月1回、アルバイトまで含めた全スタッフが参加対象です。この会では、一カ月のミステリーショッピングリサーチの結果を振り返って表彰する「MSグランプリ」や、クレンリネスの表彰「C-1グランプリ」、誕生月のスタッフのお祝いなどを行っています。その他にも、その日の売上目標を達成した店舗の全スタッフにLINEで送られる「スターメール」や、その月に一番感謝を伝えたい人にメッセージを送る「感謝の手紙」など、施策を一つひとつ挙げていくとご紹介しきれませんが、共通して意識しているのは、「称賛される機会を増やす」こと、そして「楽しんで取り組める」ことです。チームとしての一体感や自発性が自然と養われることを目的にしています。ローカルでは都心よりも人を集めるのが格段に難しいです。こういった取り組みがESを支え、定着率向上にも繋がり、また新たな人材も地域での評判を聞きつけ応募する、そんな仕組みになっています。

応募自体が少ない状況の中では、「現時点での能力」ではなく「これからの伸びしろ」を見ていくことが必要になると思っています。最初から適性の高い人を採用しようとすると難しいですが、そこを下げれば母数は大きくなります。そのため入社後は、スタッフが持っているポテンシャルを充分に発揮してもらうことに力を入れているのです。
あとは、「居酒屋だからこそ(スタッフに)提供できる価値は何か」を追求しています。具体的に言えば、それは成長であったり、さまざまな出会い、縁であったりすると思いますが、そうした「弊社だからこそ提供できる価値」を明確にすることが、結果的に人材の定着につながると考えています。「会社が従業員に提供できること」というと、どうしても給料を始めとした待遇面に目が向きがちですが、私はそうした部分以上に、まずは家族のような信頼関係をつくれる、そんな環境を提供したい。そのためにも、スタッフに対する教育は、引き続き最重要課題として取り組んでいきたいと思っています。


※文中の「採用革新システム画面①」はサンプルです。S.A.N.COMPANY様のデータではございませんのでご了承ください。

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