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法律事務所はサービス業という認識のもと 覆面調査を活用し、顧客満足度向上に取り組む

弁護士法人法律事務所オーセンス

http://www.authense.jp/


取材:砺波 敬之、吉川 高弘
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

「すべての依頼者に最良のサービスを。」をミッションとして掲げる法律事務所オーセンス。競争が乏しく保守的な業界の中にありながらも、ミッションの実現に向けて「法律事務所はサービス業」と位置付け、CS向上のための施策としてミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)を導入。お客さま目線を学ぶことでCS向上に役立てるだけではなく、弁護士や所員のやりがい・働きがいの向上にもつながっているという。事務所代表弁護士の元榮太一郎氏にお話を伺った。

法律事務所という業態で覆面調査を活用されるというのは珍しいと思いますが、MSRを導入しようと思われたきっかけを教えてください。

法律事務所は敷居が高いイメージがあると思いますが、弊社は「すべての依頼者に最良のサービスを。」をモットーに、親しみやすい法律サービスを展開していきたいと思っています。そのためにまず「法律事務所はサービス業という認識を持とう」というのが出発点で、飲食店などの主要なサービス業態ではお客さまのニーズを一体どうやって探っていらっしゃるのかといったことをいろいろと調べた結果、MSRの導入を決定しました。

法律事務所という業種においては異例のことかもしれませんが、そういう小さなカテゴリではなく、あくまでもサービス業という枠の中で勝負がしたいというのが、今回MSRを導入した理由です。


他のサービス業態のように、法律事務所も競争が激しくなってきているのでしょうか?

少なくともこれまでは、「待っていても依頼は来る」という感覚でした。特に離婚の弁護はあまり割に合う分野ではないので、やりたがらない弁護士もいます。しかし今後、時代は変わってくると思います。そこにいち早く危機感を持てるかどうかで、将来の結果も大きく違ってくるのではないでしょうか。

それに、お客さまの立場や業界全体からすれば、私はむしろもっと競争すべきだと考えています。たとえば弁護士業界では最近まで、広告を出してはいけないという規制がありました。しかしこの規制がなくなって各事務所が広告を打つことで、悩みを抱えている人が「弁護士に相談する」という選択肢に気づくことができますし、競争が起これば相談者の選択肢が増えます。また適度な競争によって、業界全体のレベルも上がっていくでしょう。そのための最初の一歩をどこかが踏み出さないといけないのならウチでやろうというのが、当事務所のスタンスです。


調査レポートをご覧になって、事務所の皆さまの反応はいかがでしたか?

評価の対象となるのは弁護士がメインですので、正直なところ実施前は嫌がられるだろうと思っていました。ところが実際にレポートをフィードバックしてみると、「参考になった」、「これからも(お客さまの声を)聞きたい」という意見が非常に多く聞かれました。弁護士自身もお客さまにどう思われているのかを気にしていて、お客さまとの関わり方について真剣に考えているということが、MSRの調査を通じて初めてわかりました。

それともう一つMSRの結果で喜ばしかったのは、競合調査の結果、当事務所のエモーショナルな部分…つまり誠意や熱意という部分を、他の事務所と比較して高く評価していただけたことです。

弁護の技術はもちろん大切なのですが、法律事務所に来られるお客さまというのはいろいろな問題を抱えて精神的に不安定な状況ですから、そういう方に対してはまず「大変でしたね」と労わりの言葉をかけるなど、その人の気持ちになって話すことが非常に重要です。そうしたことも、お客様のニーズの一つだと思うんですよ。実際に「たとえ結果が出なかったとしても、これだけやっていただけたら満足です」とおっしゃる方もいます。どれだけ依頼者に寄り添えたか、共感できたか。その大切さを再確認できた上に、その部分が当事務所の強みであることもわかりました。自分たちの頑張りが定量的な形で評価されるのは嬉しいことで、導入時には想定していなかったのですが、スタッフの働きがい向上にもMSRは大きく役立っています。


今後の抱負を教えて下さい。

保守的な業界の敷居を下げて、より多くの人に法律サービスを提供できるようにしたいというのが、昔からの変わらぬ気持ちです。そのためには価格を崩し、クオリティはさらに向上させていかなければならないでしょう。

もう一つは、仲間意識の強い集団にしていきたいですね。仲間が良ければ仕事のクオリティも上がります。また、仕事というのは人生の一部ですから、いきいきと仕事をしているかどうかは、お客さまにも伝わる部分だと思います。実際に、「受任率(相談を受けた中で、依頼を受けた率)」という弁護士にとってのKPIがあるのですが、この受任率が高い弁護士は、技術がすごく高いというよりも、姿勢がすごく前向きだったり、いきいきしているタイプが多いんです。

次の課題として考えていることは、法律事務所の仕事は、依頼を受けて終わりではない、むしろそこからが本業のスタートですので、そこのクオリティを上げていきたいということです。そのために今年は、依頼者アンケートというものにも取り組んでいます。これは、全ての業務が終わった後に依頼者の方にお願いするアンケートです。意外と返答率が良くて、中にはもちろん厳しいコメントもありますが、満足して下さって、感謝や喜びの声を書いて下さるお客さまが多いので、MSRと並んで、弁護士にとって大きな励みになっています。これも、MSRを導入していなかったら始めていない取り組みで、本当にMSRにはいろいろな気づきをいただいています。


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