従業員エンゲージメント調査の活用による働きがいの向上で「大きい会社」ではなく、「幸せな会社」を目指す
株式会社くわこや
愛知県を中心に化粧品専門店「パルファン」16店舗を展開する、株式会社くわこや。製造業が強い土地柄、スタッフの採用にあたっては他の地域以上の厳しさがあると語るのは、同社代表取締役社長 野村 和弘氏だ。そうした経営環境の中で、事業規模の拡大よりもスタッフ教育や従業員エンゲージメント向上など組織内部の強化を重視しているという同氏に、従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」を活用しての組織力強化の取り組みと、今後の事業展開の可能性についてお話を伺った。
御社では2014年から弊社の従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」をご利用いただいていますが、導入を検討されたきっかけを教えてください。
当社がある愛知県はご存知の通り製造業が強い地域ですが、そうした企業さんは給与や福利厚生がとても良いので、その他の小売業や飲食業、中でも弊社のような中小企業はどうしても相対的に弱くなってしまいます。
そういう背景もあり、会社の経営方針として、規模を追求して外へと向かうのではなく、人事や教育といった部分を強化して組織の内部を固めていかなければならないという意識をずっと持っており、まずは調査を行うなどして現状をしっかりと分析し、コンサルティングを受けたいと考えていました。
ちょうどその頃に御社との出会いがあり、「tenpoketチームアンケート」のお話を伺って、当社のニーズと合致していると感じましたので、導入を決めました。
16人の店長様をメインの対象として「tenpoketチームアンケート」を行っていますが、結果をご覧になっていかがでしたか?
予想通りの数字となりました。16店舗あれば、「あそこのお店はマネジメントサイクルがうまく回せているな」、「あそこのお店は少しうまくいっていないんじゃないかな」というのがそれぞれ出てきますが、これまではあくまでも私の感覚的なものでした。しかし、「tenpoketチームアンケート」を導入してみて、私の感覚はさほど間違ったものではなかったということが確認できました。
店長の指導をするにしても、上司の感覚的な判断だけではなく客観的な数字に基づいて話をすることによって、より的確な指導が行えますし、指導を受ける側の納得性も増します。また、定期的に診断を行うことで改善度合いをチェックすることもできますので、非常に有用なツールだと思います。
同社のスタッフの9割が正社員。正社員としてしっかりとフォローされた立場でプロとしての責任を自覚し、常にお客さまの立場に立った接客を徹底。その姿勢が新しいお客さまを増やし、そのお客さまを同社のファンにしている。
「tenpoketチームアンケート」は360度評価として店長さんの部下にあたる店舗スタッフの方にもアンケートに答えていただきますが、導入にあたって難しい点はありませんでしたか?
当初から予想していたことではありますが、店舗スタッフに店長を評価してもらうと、どうしてもその中には、上司としてではなく個人の好き嫌いで点数を付けたのではないかという数字も入ってきます。たとえば10人のスタッフが同じ店長の評価を行ったときに、ある一つの項目について5点と採点した人が8人、3点が1人、最後の1人が1点…それも、それ以外の全ての項目にも1点をつけているというような場合には、評価された店長ではなく、1点と評価したスタッフの側に問題があるのではないかということになりますよね。ですから、そういう数字は評価対象外とするなどの対応はしています。
こうした分析を行う場合には、単純に数字を平均するのではなく、点数の内訳まで丁寧に見ることが必要ですね。
そのためには日頃のコミュニケーションが大切となります。当社の場合は、5年前からスタートした「個人面談」が、そのための最も重要な機能を担っています。半年に1回、一人のスタッフにつき30分程度、上司からは仕事のフィードバックを伝え、スタッフからは会社に対するさまざまな要望を聞いています。この他にも、スタッフと会社とのコミュニケーションの機会として、会社に対する要望を書いてもらう「要望書」や、自分自身の仕事を振り返って点数を付ける「自己チェックリスト」など、ツールを活用したコミュニケーションルートも設けています。
こうした、ある意味アナログな方法によるコミュニケーションを通じての評価と、「tenpoketチームアンケート」のような外部の客観的な数字との両方を融合させて、総合的に分析することが大事だと思います。異常値やズレはこの二つを見比べれば把握できますので、より的確な判断ができるようになります。実際、個人面談の中で出てきた問題と「tenpoketチームアンケート」の点数はほぼ一致していましたので、店長も非常に納得感を持って結果を受け止めていましたし、会社として弱い部分なども含めてはっきりと分析していただけるので、私もとても参考になっています。
同社では入社1年目から新店舗に配属されたり、早い人であれば2年目で副店長、3年目で店長を任されるなど、 若手でも責任ある仕事を担える環境を提供してきた(写真はパルファンイオンモール大高店)。
診断を受けてみて、店長様の評価の受け止め方はいかがでしたか?
16名の店長が集まっている場で各店舗の評価を一店舗ずつ公表しましたが、ほとんど全ての店長は前向きに受け止めていました。自分のリーダーシップの在り方であったり、弱いところとして指摘を受けた部分についても、理解し、改善しようという姿勢が見られました。スタッフの声も含めた評価ですので、「上司から言われたから」ではなく、「良いお店にするために」「スタッフのみんなにやりがいをもって楽しく仕事をしてもらえるように」などというモチベーションがかかりやすいのではないかと思います。また、今後どのようなリーダーシップを発揮していけばもっと良い店舗・職場になるのか、精神論ではなく、項目別に具体的にわかるのも良い点だと思います。
しかしごく一部には「こんなアンケートで何がわかるのか」といった態度の店長もいないわけではありませんでした。でも、そんな店ほどうまくいっていないですね。突出して点数が低かったその店舗は、離職率も高く、その店舗に配属した途端にスタッフが辞めてしまうということが何度もあるような店でしたので、その店長とは直接私が会って話をし、個別にフォローしました。
「tenpoketチームアンケート」を導入されたきっかけとして「規模を追求するのではなく、内部を固める」というお話がありました。業界内で御社をベンチマークされている企業様も多くいらっしゃると思いますので、この点についても詳しくお話を伺えますか?
私は当社を化粧品専門店として、最大化するのではなく最適化したいと思っています。現在16店舗ですが、店舗数としては20店舗くらいまでで良いかな、と。少し小柄でも、筋肉質な会社を目指したいですね。
ドラッグストアやGMSは高度経済成長の流れの中で、規模のメリットを武器として同業他社と一つの同じパイを食い合うような競争をしながら大きくなってきましたが、そういう時代を経て、いま日本は経済的に豊かになりました。あらゆる産業が成熟化した現在、「最も売上を伸ばす」ことよりも、「最も幸せな会社をつくる」ことを目指すべきなのではないかと、私は考えています。そのためには、売上が不要だというわけではありませんが、売上を達成して利益が出たら、「新しい店を出そう」ではなく、「これを社内に還元して、何かできないかな」と考える発想が必要だと思うんです。
20店舗という目標についても、売上を伸ばしたいからではなく、あくまでもリスク分散を目的とした数字です。やはり、売上や利益だけを目指す会社というのは寂しいじゃないですか。
化粧品専門店には規模のメリットはありませんが、だからといって競争力がないというわけでは決してないと思います。ドラッグストアやGMSにはない部分を伸ばしていくことで、強い企業になっていくことは十分可能であると考えています。
スタッフが仕事をしやすくするために、本部も効果的な教育や体制、運営方針や戦略企画などを考え、ともに繁盛する店舗を作り上げている。繁盛する店舗は、スタッフの質もおのずと向上し、それがさらにまた繁盛を呼ぶ。それが同社の「人が店を作り、店が人を作る」ということ。
具体的にはどのようなビジョンをお持ちですか。
たとえば、これまでの店舗運営の中で得たノウハウを伝えていくというビジネスチャンスがあると思います。化粧品専門店の社員教育、売り場づくり、内装・デザインなどのノウハウや、店舗マネジメント、MD、開店支援サービスなどの人材派遣ビジネス…など、いくらでもやりようはありますよね。
また、弊社で今まさに取り組んでいることなのですが、スタッフがお客さま対応に追われて清掃にまで手が回らず、手の空いた合間に少しずつやっても昼までかかってしまうということが、しばしばあるんです。そこで、試験的に三河地区の3店舗で週に2回、店舗清掃専任として人材派遣のスタッフさんをお願いしたところ、お店はきれいになるし、販売スタッフは接客に時間を割けるようになり、お店の運営がスムーズになりました。そこで今度はこれを内製化しようということで、クリンネス専任のスタッフを採用することにしました。トイレ掃除などをする一般のビル清掃とは違って、ファンデーションの粉を払ったり、テスターをきれいな状態にするという、特殊な仕事になります。従来の清掃業者でも持っていないノウハウですから、「化粧品店の清掃状態が売上につながる」ということが証明できれば、化粧品店専門の清掃会社を作ることもできますよね。
その他、事業継承にお困りの化粧品店のご支援もできると思います。昨今、「売上は順調だけど、もう自分も70歳になったし、そろそろ引退したい」という方が結構いらっしゃいますが、その中には二代目となるはずの人になかなか事業を継いでもらえなくてお困りの方も多いんです。ですから、そういうお店を一時的に当社が買い取り、二代目には社員になってもらって運営ノウハウを学んでもらい、数年後に独立して買い戻してもらうというようなビジネスモデルとして、そういうお店のご支援をすることも可能だと思います。
要するに、規模の経済を追求する以外にも、やり方はいくらでもあるということなんです。そのために必要なのはしっかりとした会社の基礎体力であり、今後も「tenpoketチームアンケート」などを活用しながら少し小柄でも、筋肉質な会社を目指していきたいと考えています。
総勢27名のスタッフが2日間、リサーチセンター、ザ・ギンザ、資生堂パーラー、汐留本社などを訪問した資生堂おもてなしツアー。資生堂さんの歴史と奥深さを体感した。
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