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新型コロナウイルスに関する消費者意識調査【2020年9月】

9月に入り、新型コロナウイルス(以下COVID-19)に関する報道が減少し、話題の中心は台風や政治へと移っています。一方で大手企業では希望退職者を募り、飲食業やアパレル業で経営破綻のニュースが流れるなど、 いよいよ新型コロナの経済への深刻な影響が懸念されています。そのような9月上旬に行った消費者意識調査の結果をまとめました。(調査期間:2020年9月10日~13日、回答数:831名、調査手法:ネットリサーチ)

1.COVID-19に対する危機感は再度下降傾向に転じ、6月中旬と同程度の水準に

「コロナウイルスに対する危機感をどの程度感じていますか?10段階でお答えください」という設問について、これまでの調査との比較を行いました(図1)。前回の調査後には安倍総理大臣(当時)が急遽退任を表明されたり、大型の台風や豪雨が日本各地で猛威を振るったりするなど、COVID-19に関する報道は減少しました。

これまでの調査と比較した結果、前回減少傾向に転じた「COVID-19に対する危機感」は今回も引き続き減少傾向が続いています。しかし「10:非常に不安」の割合や「少しでも危機感を感じている層(6点以上)」の比率は6月中旬と同程度となっており、依然として高い水準で推移しています。

新規陽性者数の減少や報道量の減少からすると、より大幅に下がることも予想されましたが、急激な変化にはなりませんでした。

図1 COVID-19に対する危機感の分布
※「コロナウイルスに対する危機感をどの程度感じていますか?10段階でお答えください。」に対する回答

また、1都3県とそれ以外で比較すると、1都3県以外の方が危機感の減少傾向は強くなっていました(図2)。

図2 1都3県とそれ以外におけるCOVID-19に対する危機感の比較
※「コロナウイルスに対する危機感をどの程度感じていますか?10段階でお答えください。」に対する回答

1都3県

1都3県以外

2.年代別では20代で危機感が大きく減少するも、40代50代では減少傾向が弱い。性別では女性の危機感も緩やかに減少するも男性よりも引き続き強い傾向

今回の結果を年代別、性別で比較しました。その結果、若年層の危機感は減少しており、年代別での「少しでも危機感を感じている層(6点以上)」の比率は、あまり差が無くなってきました。

図3 年代別のCOVID-19に対する危機感の比較
※「コロナウイルスに対する危機感をどの程度感じていますか?10段階でお答えください。」に対する回答

20代

30代

40代

50代


性別で見ると男性よりも女性の方が引き続き強い危機感を持っており、その傾向は緊急事態宣言解除以降により顕著になっています。このことから、女性客が多い、もしくは女性客の獲得を狙っているブランドや業態においては、来店されるお客様に対してより感染症対策に対して安心感を持ってもらうことが重要になると考えられます。

図4 性別のCOVID-19に対する危機感の比較
※「コロナウイルスに対する危機感をどの程度感じていますか?10段階でお答えください。」に対する回答

男性

女性

3.ビュッフェ形式の食事に対する抵抗感は依然として高いものの、ファストフードの店内利用に関しては初めて”抵抗を感じない”側の比率が”抵抗を感じる”側の比率を上回った

この調査では、店舗を利用するシーンを想定したときに「抵抗を感じるかどうか」を「非常に抵抗を感じる」から「全く抵抗を感じない」までの7段階で下記5問を調査しています。

【抵抗感を聞いている5つのシーン】

  1. 他のグループと1m以上間隔が空いている場合、”居酒屋”で飲食すること
  2. 他のグループと1m以上間隔が空いている場合、”ファストフード店(ハンバーガーや牛丼など)”で飲食すること
  3. 店内の換気について『ドアの開放はせずに(換気扇など)空調のみで換気をするお店』
  4. 小売店において、様々なお客様が触れることができる商品を購入すること
  5. ビュッフェ形式のような、複数のお客様が自分で取り分ける食事形態

これらの「非常に抵抗を感じる」から「どちらかと言えば抵抗を感じる」までを足し合わせた比率の推移を見てみました(図5)。COVID-19に関する危機感と同じように第5回(7月末~8月上旬)を最大値として減少傾向に転じています。しかし、その中でもビュッフェ形式での食事に対する抵抗感は依然として高い水準で推移しています。

一方、ファストフード店の利用については6月中旬と比べても抵抗感は低くなっています。第7回(9月上旬)では「非常に抵抗を感じる」から「どちらかと言えば抵抗を感じる」までを足し合わせた比率(”抵抗を感じる”側の比率、39.4%)が初めて「全く抵抗を感じない」から「どちらかと言えば抵抗を感じない」までを足し合わせた比率(”抵抗を感じない”側の比率、45.4%)を下回りました(図6)。徐々に抵抗感は減少する傾向にありますが、COVID-19に関する危機感と同様に急激な変化はないため一般消費者の不安感はもうしばらく続いていくことが予想されます。


図5 各種サービス利用形態に対する”抵抗を感じる”側の比率


図6 「ファストフード店の利用」における”抵抗を感じる”側と”抵抗を感じない”側の比率推移
​​​​​​​※”抵抗を感じる”側の比率…「非常に抵抗を感じる」から「どちらかと言えば抵抗を感じる」までを足し合わせた比率
※”抵抗を感じない”側の比率…「全く抵抗を感じない」から「どちらかと言えば抵抗を感じない」までを足し合わせた比率

4.マスク着用の上で抵抗を感じ始める対面接客の時間は、危機感の減少傾向ほど伸びていない

一方で減少傾向があまり見られなかったのが「自分もお店のスタッフさんもお互いにマスクをしている場合、対面で接客を受けて不安を感じる時間」でした(図7)。

COVID-19に関する危機感や各種サービスに対する抵抗感については6月中旬の水準までは戻っているものの、マスクを着用した上で不安を感じる対面接客の時間については6月中旬までは戻りませんでした。一番危機感が強かった7月末~8月頭と比べても大きな変化は見られていないため「スタッフとの対面接客はできるなら避けたい」という感情は今後も定着する可能性も考えられます。

一方、特にお客様へのヒアリングや提案を伴う業態(美容室、エステ、賃貸マンション、自動車販売など)においては「もっと専門的なアドバイスが欲しかった」というコメントも複数寄せられていました。

“ある意味わがまま”な消費者意識に対応するためには、接客の時間を抑えながらも必要な情報提供や提案をしていくことが求められると考えられます。ヒアリングや情報提供など“可能な部分のデジタル化”といったハード面での改善だけでなく、ソフト面においてもセールストークなどを洗練させるといった対応も合わせてできるかどうか、本部と店舗が一緒に改善していくことが今後の鍵となる可能性があります。


図7 お互いにマスクを着用した上でも不安を感じる接客時間


一般消費者のCOVID-19に関する危機感や各種サービスに対する抵抗感は、減少傾向にはあるもののその変化は緩やかです。そのため店舗の売上を高めていくためには、今後もしばらくは新型コロナウイルス感染症対策の必要性が高い状態が続いていくと考えられます。

MS&Consultingでは定期的に消費者意識調査を行い、感染症対策と経済活動の両立させるためのヒントとなる基礎データをタイムリーに発信していきたいと考えております。

MS&Consulting 錦織浩志
MS&Consulting 錦織浩志
東京大学 大学院を修了後、MS&Consultingへ入社。データアナリストとしてビックデータの分析を担当。その知見を活かし、国立研究開発法人 産業技術総合研究所との共同研究の成果として、数々の共著論文を発表。研究テーマ例に「従業員エンゲージメントと顧客満足の関連性分析」「パート・アルバイトの従業員エンゲージメントの特徴」「サービス・ベンチマーキングによるサービス・プロフィット・チェーンの高度化に関する研究(サービス学会BestPaperAward受賞)」など。

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