
Z世代の離職率は高い?『離職理由ランキング』や『離職防止策』もご紹介
SNSやスマートフォンを使いこなし、個性や多様性を大事にするなど、これまでの世代とは異なる価値観を持っているZ世代。そんなZ世代の離職率を改善するには、どんな工夫が必要なのでしょうか?本記事では、厚生労働省のデータから読み解くZ世代の離職率の傾向や、彼らの離職理由をわかりやすくご紹介。 Z世代をはじめとする若い世代との向き合い方に悩んでいる方に、実践的なヒントをお届けします。
目次[非表示]
- 1.Z世代の離職率は高いのか?
- 2.Z世代の離職理由ランキング
- 3.Z世代の離職を防止する具体策
- 4.Z世代が求める職場環境
- 5.まとめ
Z世代の離職率は高いのか?
Z世代とは?
はっきりと決まった定義はありませんが、Z世代とは、1990年代半ばから2010年代初めに生まれた世代を指す言葉として一般的には使われています。2025年現在の年齢では13~29歳前後の人が該当します。日本ではゆとり世代の次の世代として、デジタルネイティブ世代と呼ばれることもあります。
Z世代の離職率は高いのか?
ワークライフバランスや自己実現を重視するなど、キャリア観がこれまでとは異なると考えられているZ世代ですが、実際のところ彼らの離職率は高いのでしょうか? 厚生労働省が毎年発表している「雇用動向調査」の結果を確認してみましょう。
【図1】は、年齢階級別の離職率の推移です(パートタイム労働者を除いた常用労働者のデータ)。令和5年のデータを見ると、19歳以下の離職率は36.7%、20~24歳は28.9%、25~29歳は20.6%となっており、Z世代の離職率は全世代平均の15.4%と比べて高水準であることがわかります。
【図1】年齢階級別の離職率推移
※出典「雇用動向調査・年次別推移 (性・年齢階級別離職率/2024年8月27日)」より弊社作成
ただし、30年前の平成5年のデータを見ても、29歳以下の若い世代の離職率は他の年代より高くなっています。つまり、
- 若い世代の離職率は昔から高い
-
Z世代の離職率が顕著に高いわけではなく、過度に心配する必要はない
(他の世代が若かった頃と同程度)
と言えそうです。なお、Z世代の中でも新卒入社世代である20~24歳の離職率は、2021年25.7%、2022年27.3%、2024年28.9%と、ここ数年は上昇傾向にあるため注意が必要です。
Z世代の離職理由ランキング
「Z世代の離職率は高い」といたずらに心配する必要はなさそうですが、Z世代が育ってきた時代には、以下のような社会環境の変化がありました。
・スマートフォン、SNSの普及
・日本経済の低成長や少子高齢化による閉塞感、安定志向の高まり
・社会貢献や環境問題への意識の高まり
・リモートワークやハイブリッドワーク、副業など、働き方の多様化
|
彼ら彼女らの働くことに対する価値観がこれまでの世代とは異なることを前提に人事施策を考えることは、Z世代の離職防止においてとても大切です。では、Z世代はどんな時に仕事を辞めたいと思うのでしょうか?「令和5年雇用動向調査」から、転職入職者が前職を辞めた理由を性別・年代別に紹介します。
Z世代(女性)の離職理由ランキング
【図2】は、女性のZ世代を「19歳以下」「20~24歳」「25~29歳」の3つの年齢階級に分け、それぞれの離職理由ランキングを示したものです。結果を見ると、どの年代でも「人間関係が好ましくなかった」が1位または2位にランクイン、次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が大きな離職理由となっていることがわかります。
また、Z世代でも後半の25〜29歳では「仕事内容」を理由に離職する人の割合が9.1%に上昇しています。仕事にある程度慣れた20代半ば頃から「この仕事は本当に自分にあっているのだろうか」「将来ずっと続けていきたいだろうか」と別のキャリアを模索するために離職する人が増える様子がうかがえます。
【図2】転職入職者が前職を辞めた理由の割合(女性)
※詳細がわからない「その他の個人的理由」「その他の理由(出向等を含む)」を除いて考察
※出典「令和5年雇用動向調査(厚生労働省)」より弊社作成
Z世代(男性)の離職理由ランキング
次に、男性のZ世代の離職理由ランキングを見てみましょう。年代別の離職理由、第1位と第2位は以下の通りです。「労働条件」や「給与等収入」が離職理由に占める割合が大きいことがわかります。
- 19歳以下:労働条件、人間関係
- 20~24歳:労働条件、給料等収入
- 25~29歳:仕事の内容、給料等収入
休日出勤や長時間労働を前提にキャリア形成を目指すのではなく、適切な労働条件のもとでライフワークバランスを維持しながら、納得できる収入と仕事内容を求める姿勢がうかがえます。また、Z世代でも後半の25〜29歳になると「仕事内容」を理由に離職する人の割合が上昇する傾向は女性と同じです。
【図3】転職入職者が前職を辞めた理由の割合(男性)
※詳細がわからない 「その他の個人的理由」 「その他の理由(出向等を含む)」を除いて考察
※出典「令和5年雇用動向調査(厚生労働省)」より弊社作成
まとめ
Z世代でも前半の年代なのか後半の年代なのかで重要度の割合は少し違いますが、いずれにしてもZ世代の離職を防ぐには、
- 好ましい人間関係
- ライフワークバランスを保てる労働条件
- 将来にわたり働き続けたいと思える収入・仕事内容
の3点が大事であると言えます。
Z世代の離職を防止する具体策
ここからは、Z世代の離職を防ぐための具体策を考えていきます。離職理由として上位にランクインしていた「人間関係」「労働条件」「仕事の内容」の区分で対策をご紹介します。
人間関係による離職を防ぐ
人間関係による離職を考える際は、「職場の人間関係」と「上司との人間関係」の2点を考えることが大切です。Z世代の社員はまだ年齢が若く、上司が及ぼす影響が大きくなります。もちろん本質的にはZ世代と十把一絡げにくくらず、部下一人ひとりを理解する姿勢が大事ですが、Z世代の部下を持つ上司は、どのようなマネジメントスタイルが好ましいのかを基本知識として理解しておくことが大切です。
●参加型・支援型のマネジメントを意識する
Z世代は「いいね」をもらうことで承認欲求を満たしてきた世代です。また、自分の意見を発信することにも慣れています。そのため、単に指示命令を遂行してもらうのではなく、彼らの意見や創造力を引き出しながら目標達成へと導くマネジメントスタイルが理想です。具体的には、一方通行な指示型のマネジメントではなく、ディスカッションを軸に据えた参加型のマネジメントや意見を尊重しながらも必要な部分はサポートしていく支援型のマネジメントスタイルが有効です。
●承認欲求を満たす
承認欲求の強いZ世代に対しては、本人の強みや長所をはっきりと言葉にして伝えたり、意見やアイデアをいきなり否定するのではなく、まずは「いいね」と受け止めるコミュニケーションのあり方が理想です。「こまめに声をかける」「話を聞く」「共感する」「褒める」「感謝を伝える」「労をねぎらう」といった相手を承認するコミュニケーションを意識しましょう。
●良好な人間関係の職場づくり
Z世代は、生まれた時からSNSが身近にあった世代です。他者とつながる力を持っている反面、仲間内での評判や立ち位置を気にしながら立ちまわる傾向があります。仲間として受け入れられていることを実感できるように、 「明るく挨拶を交わす文化」「こまめに声をかけあう文化]」といった居心地の良い職場をつくるための基本的なコミュニケーションをチームメンバー全員が大事にする組織文化をつくりましょう。
労働条件による離職を防ぐ
Z世代は、ライフワークバランスや柔軟な働き方といった考え方が当たり前のものとして浸透している時代に育った世代です。労働条件に対する不満離職を防ぐには以下のような点に気をつける必要があります。
●労働時間の管理を徹底する
長時間労働の常態化はZ世代にとって大きな不満となります。「残業時間の可視化と上司による定期的なチェックを行う」「一定時間以上の残業が発生した場合は業務量の適正化を行う」「ノー残業デーや早帰り推奨日を設けメリハリのある働き方を促進する」など、働きすぎを防ぐ仕組みづくりが重要です。
●柔軟な働き方ができる制度を導入する
働く場所、働く時間に自由度を持たせることで、Z世代が求める「自分らしい働き方」を実現しやすくなります。具体的には「テレワークやハイブリッド勤務を可能にする制度設計」「フレックスタイム制度の導入で出退勤時間を選べるようにする」などです。絶対に必要な制度ではありませんが、可能な範囲で働き方を選べるようにならないか制度設計を検討してみることが大切です。
仕事内容による離職を防ぐ
「仕事内容」を理由とする離職率は、10代から60代のすべての年代の中で25~29歳が最も高くなっています。仕事に慣れてきたとは言え、 新人とベテランのちょうど中間点で、まだ不安定な状態のこの時期に「キャリアへの不安を取り除くコミュニケーション」を意識することはとても大切です。
●キャリアへの不安を抱かせない
「このままこの会社にいたら成長できず、無駄に時間を過ごしてしまうかもしれない」と思わせる職場は、「不満はないけれど、不安だから辞める」という不安型転職につながってしまいます。「中長期的なキャリアプランを一緒に描く面談を定期的に行う」「スキルアップ支援制度を用意する(例:社外研修、資格取得支援、メンター制度) 」など、会社や上司が一人ひとりのキャリアを考えている姿勢を示すことが重要です。
●1on1ミーティングを取り入れる
定期的な1on1ミーティングは、上司と部下がフラットに話せる貴重な場です。部下のキャリアに対する希望や不安を受け止めたり、評価制度やキャリアパスを丁寧に伝えたりする時間をつくることで、Z世代のキャリアに対するもやもやとした不安の解消に努めることが大事です。1on1ミーティングという形にしなくてもよいですが、業務の進捗確認のための時間とは別に「部下の人生やキャリアについて話す時間」を取ることはとても大事です。
●小さな成功体験を早めに積ませる
仕事への自信やモチベーションを高めるためには、段階的に成功体験を積ませることが効果的です。時には、難易度をコントロールしたタスクや、短期間で成果が見えるプロジェクトを任せ、「ちゃんとできた」「自分は評価されている」という実感を早期に持たせる工夫が求められます。自己効力感や仕事に対するやりがいは離職防止において大事な視点です。
●事業の社会的意義を伝える
Z世代は収入やキャリアだけでなく、「自分の仕事は社会に貢献しているのか」という視点を重視する傾向があります。自社の事業の社会的な意義、その中で自分の仕事が果たしている役割を日常的に伝えることで、仕事への誇りを育てることが大切です。
Z世代が求める職場環境
ここまでの内容を、Z世代が育ってきた時代背景や価値観と対比しながら整理します。
Z世代の特徴① ソーシャル・ネイティブとして育ち、膨大な情報を扱うのが上手
Z世代は、スマートフォンやSNSを若い頃から使いこなしてきたソーシャル・ネイティブ世代です。インターネットを通して世界中の人々とつながれることが普通で、自分の体験や意見を発信することにも慣れていますし、膨大な情報を処理する力にも長けています。また、「いいね」を通して承認欲求を得てきた世代でもあります。これらの体験がZ世代の価値観に大きく影響を与えているのは言うまでもなく、以下のような特徴を持った世代だと考えられています。
・個性や自分らしさを重んじる
・承認欲求が高い
・多様性を尊重できる
・仲間うちの人間関係を重んじる
そのため、Z世代の離職率を下げるためには、 以下のような職場環境づくりが大切です。
●参加型・支援型のマネジメント
●承認欲求を満たすマネジメント
●良好な人間関係の職場 ●認め合い、助け合うチーム
●意見交換が活発に行えるオープンなコミュニケーションの職場
●多様な価値観を受け入れてくれる職場
●柔軟な働き方ができる職場 |
Z世代の特徴② 低成長時代・少子高齢化時代に育ち、安定志向が強い
Z世代が育った時期、日本経済はすでに低成長期にあり、さらに少子高齢化も進んでいました。そのため、将来に対する備えを重視する傾向が強い世代です。具体的には、若いうちからの貯金や投資、お金に対して慎重な考え方、市場価値を高めるための専門的なスキルの習得やキャリア形成への意識の高さといった特徴を持っています。これらの意識が、彼らの仕事や生活の選択に大きな影響を与えているのは言うまでもなく、以下のような特徴が挙げられます。
・計画的な貯金や投資を実践する
・専門的なスキルの習得や向上に努める
・長期的なキャリア形成を重視する
・経済的安定を求める行動パターンが根付いている
・安定志向が高い
●キャリアへの不安を取り除くためのコミュニケーション
(キャリア面談や1on1の定期的な実施)
●研修や資格取得支援など、キャリア形成の機会の提供
●小さな成功体験を早目に積ませる
|
Z世代の特徴 社会貢献や環境問題への意識の高まり
Z世代は、経済成長に軸足をおいた社会の欠点が顕在化した時期に育ちました。世界中の環境破壊や社会的不公正がリアルタイムに伝えられる時代に育ち、学校教育でも社会問題やサスティナビリティについて学ぶ機会が多かった世代です。これらの情報が、彼らの行動や価値観に影響を与えており、Z世代は以下のような特徴を持つと考えられています。
・社会課題への意識が高い
・環境に優しい消費行動や、持続可能な社会を支援する
・意味を求める
●事業の社会的な意義を発信する
●顧客の声を共有し、顧客に喜ばれている実感を培う
|
まとめ
本記事では、Z世代の離職理由やその背景にある価値観、そして離職防止に向けた具体策について紹介しました。Z世代をはじめとする若い世代の離職を防止するには、まず彼らのキャリアに対する価値観を理解することが重要です。
そこで今回、Z世代1万人超を対象に実施した従業員エンゲージメント調査のデータを分析したレポートをご用意しました。Z世代が働く意欲を高める要因・低下させる要因をデータを用いて解説しています。Z世代をはじめ若い世代への人事施策やマネジメントをより効果的に進めたい方は、下記より資料をダウンロードしてご覧ください。