おもてなしはチームの一人が欠けても駄目|HUGE新川社長に聞く2
オリンピック誘致の際、改めて脚光をあびた日本の「おもてなし」。改めて「おもてなし」とは何か? 2002年の日米首脳会談では会食の接客を担当、「サービスの神様」とまで言われた、株式会社HUGE 新川社長にお伺いした。
「スタープレイヤー」よりも「チーム全員」
「自分がお客さまとしてレストランに入った時に、誰に歓迎してもらえたら一番嬉しいだろう?」と考えると、それは入口に控えているホールスタッフではないんです。いや、ホールスタッフが「いらっしゃいませ」と温かく出迎えてくれたら、もちろん嬉しいですよ。でも、例えばキッチンでひたすら玉ねぎを切っているような人、要するに「そのお店で最もおもてなしから遠そうな人」が一瞬でも手を休めてこちらを見て、笑顔で「いらっしゃいませ」と挨拶してくれたら、そのほうが格段に嬉しいですよ。皆さんもそうじゃないですか?
逆の場合もありますね。ホールスタッフが「いらっしゃいませ」と素晴らしい笑顔で出迎えてくれて、「これから楽しい時間が始まるな」とワクワクする。そこで、何となく店を見回したら、キッチンスタッフがその声に反応もしない、あるいはこちらと目を合わそうともしないで事務的に「いらっしゃいませ」と言っていたら、食事中ずっと心の片隅で気になってしまう。日本人には、そういう心の機微があると思うんですよ。
つまり、おもてなしは「チーム全員」なんですよね。スタープレイヤーが一人いて、楽しませてくれる。それでは駄目なんです。抜群に接客力の高いスタープレイヤーが一人いるお店よりも、全てのスタッフがそれぞれ自分のポジションでできるおもてなしをしているお店のほうが、居心地が良いし、結果としてファンも増えます。
「絶対的な顧客目線」を育てる
実際には、ゴーグルをかけて毎日大量の玉ねぎをみじん切りにしているスタッフとか、400人分のサラダを作るために4時間かけて膨大な量のサラダ菜をちぎっているスタッフに、顔を上げていらっしゃいませという大切さを理解してもらうのは、本当に難しい。どれだけ理屈を並べても無理です。
これを理解してもらうためには、「あなたがお客さまだったら、どうなの?」というところから話すことが大事だと思います。結局、おもてなしができるかどうかは、おもてなしを受ける側、つまりお客さまの気持ちになれるかどうかだと思います。「自分がお客としてお店に行った時に、どうやってもてなしてもらいたいか?」という感性を磨くことが、全ての基本だと思います。
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