「ベテランスタッフの力を引き出す」チームの秘訣とは
株式会社ルネサンス
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
取材:前原直斗
今持っている能力で、ある水準までは仕事ができてしまうのがベテランスタッフ。ともすると、自己研鑽しない、新しいことにチャレンジしない、そんな、ベテランあるあるの罠に陥ってしまいます。ベテランスタッフの力を引き出すことに成功した、株式会社ルネサンス/スポーツクラブ ルネサンス浦和 チーフの折原 二朗氏にお話しを伺いました。
背景
折原さんは、スポーツクラブ、ルネサンス浦和店内にあるスイミングクラブのチーフとして、子供達にスイミングを教えるコーチ陣をまとめています。1年前に実施した従業員満足度調査「tenpoket(テンポケット)」では、思うように結果が出ず、悔しい思いをしたといいます。実際ベテランコーチとの関係性に課題を感じていたそうです。ところが、1年後の今回の診断では、すべてのカテゴリが改善、スコアもトップクラス。その背景にあった取り組みを伺いました。
折原チーフのtenpoketの結果
取り組み1:信念を言い続ける
ベテランコーチになると、レッスンで子供達のスイミングレベルを理想の70%ぐらいまでは引き上げることができます。60%できれば次の級に進級できるので、70%で「まぁいいか」と思ってしまうコーチが多いです。
でも、私はそこで満足してほしくない。残りの30%を伸ばすには、どうしたらいいのか、何でこの子が100%にならないのか。その原因を分析して、ひとつひとつ解決していってほしい。そうしないと、「子供達に“やめたくない”と言ってもらえるスイミングスクール」にはならないと考えているからです。
コーチ毎のレッスン出席率も掲示
私の根幹にあるのは、「子供に水泳を教えるのが好きだ」という思いです。目の前の子供が水を怖がっていたら何としても克服させてあげたいし、泳げるようになった時の笑顔は何物にもかえがたい。リーダーとして、70%のレベルまでしか育てられないレッスンには妥協できません。
就任してすぐ、自分がどういう人間で、どういうチームを作りたいのかはズバッと言いましたし、その後も、「今のレッスンに満足してほしくない。もっと良くするにはどうすれば良いのかを考えて下さい」「現状に満足しないで」と口すっぱく言い続けました。
取り組み2:質問しやすい雰囲気をつくる
現状を変えようとすると、ベテランでも「わからないこと」「できないこと」が出てきます。誰かに質問する必要が出てくる。でも、ベテランは「わかりません」「できません」とは言いづらい。そこで、質問しやすい雰囲気をつくるために、自分が積極的に質問をするようにしました。例えば、「バタフライの指導が上手くいかないんですよね、どうしたら良いと思いますか?」などです。リーダーである自分がわからないことを隠さないこと、質問することで、ベテランコーチも「私もわからないことを聞いてみようかな」という気持ちになってくれたと思います。
スポーツクラブ ルネサンス浦和 チーフの折原 二朗氏
取り組み3:質問や要望にはスピード対応
その甲斐があってか、ベテランコーチから少しずつ質問や要望が寄せられるようになりました。「これはチャンス」と感じました。そこで、「スピード命」で対応しました。答えをすぐに持っていった。質問への返答に時間がかかってしまうと、「面倒だな」と感じさせてしまいます。でも、すぐに対応すれば、「質問する効果」を実感してもらえます。また次の質問もしてくれるようになります。強く「現状に満足しないで」と言っている以上、現状を変えようとする行動には、リーダーである自分も即対応することを強く意識しました。
生まれた変化
結果から言うと、ベテランコーチは見違えるように変わりました。他のチームの方からも、「別人のよう」と言ってもらえるぐらいです。今は、自分のレッスンだけでなく、スクール全体が良くなるための行動もしてくれるようになりました。
より良いレッスンを全員ができるようにしようと、新人教育も自発的にしてくれるようになりました。「現時点でのレッスンの正解はこれだ」と断言できるくらいに自分のレッスンに自信を持ってないと、他コーチを指導するなんてできません。向上心を持って自分のレッスンを改善してきたことが自信につながったのだと思います。とても嬉しく思っています。
ブロクが定期的に更新されるように工夫してくれた表
編集後記
4つのリーダーシップスタイルという考え方があります。スタッフの成長段階に応じてリーダーシップスタイルを使い分けることが重要という考え方です。ベテランスタッフの場合は、「意欲も能力も高い。だから、スタッフに大きく任せ、指示は控え、かわりに必要な支援を行おう」というのが指針です。
では、ベテランスタッフに必要な支援って何でしょうか?コーチング、きっかけを提供する、苦手な部分だけをサポートする・・・いろいろありますが、折原チーフの方法はシンプルで効果的でした。それは、「質問をしやすい環境をつくる」支援です。
4つのリーダーシップスタイル
※「1分間リーダーシップ―能力とヤル気に即した4つの実践指導法 (K.ブランチャード著)」より弊社作成
質問しやすい環境をつくる
1.質問にはスピード命で答えを返す。
2.自分が率先して質問。「わからないこと」「できないこと」について質問するのは恥ずかしくないと背中で示す。
ベテランは大きく権限を移譲して育てる、それが一般的なセオリーです。ただ、権限移譲が、仕事の丸投げになってしまうのか、任せて育てることにつながるのか、その分かれ目は、「必要な支援」があるかどうかによります。支援といっても何をしていいか分からない、そんな方は折原チーフの方法論を参考にしてみて下さい。