新入社員のやる気を引き出す2つのポイント【早期離職を防ぐ】
若手社員が抱えがちな「もやもや感」。もっとお店を良くしたいと思っているが…
前回のコラムでは「年次が高くなるほど、仕事において成長を感じにくくなる」ことを紹介しました。しかし、年次が若いほど従業員エンゲージメントスコアが低くなる項目もあります。その1つが「提案できているか」という項目です。
下記グラフの通り通り、提案のスコアは年次が若いほど低くなっています。入社して年次がたてば、店長や社員へ気軽に店舗の改善点を提案できるようになるが、年次が若いとなかなか提案をしにくいということがわかります。
一方で、グラフを見ると、「お店をもっと良くしたいという改善意識」は、新入社員や若手社員の方が高い傾向にあることがわかります。つまり、年次が若い社員は「お店をもっと良くしたいを思っている」のに「上司に提案しづらい」ということが多いのです。何とももったいない状況です。
関連コラム:入社3年目の社員が危ない!?年次によって変わる従業員満足度
若手社員のもやもや感を解決するのは、「自分の役割理解+上司の傾聴姿勢」
なかなか上司へ改善の提案をしにくい若手社員ですが、そういった若手社員からうまく改善提案を引き出し、若手社員の主体性を高めている店長も一定数います。年次は若いけれど提案ができているスタッフのデータを分析した結果、その社員の上司である店長には、2つの特長があることがわかりました。
それは、
①新入社員・若手社員に期待している役割や成果を伝えている
②新入社員・若手社員の意見に積極的に耳を傾けている
という2つのポイントです。
ポイント① 期待している役割や成果を伝える
期待している役割や成果を、何となく伝わるだろうではなく、言葉で明確に伝えることが大切です。人は、自分に期待されている役割をクリアに理解できることと、行動が変わるからです。
新入社員・若手社員が、組織の中での自分の役割を理解できると、その役割を担おうと努力し、その努力を通して「自分は組織に貢献できている」と感じられるようになります。結果、自己肯定感が高まり、やる気も自然と湧いてきます。また、自分が任された分野なのだから、改善提案も積極的にしようと仕事に対する姿勢も変わってきます。上司は、期待する役割や成果を伝えるコミュニケーションを何度も繰り返す。これが1つ目のポイントです。
ポイント② 意見に積極的に耳を傾ける
このポイントは、言いかえると「上司・先輩の傾聴姿勢があるか」ということです。上司・先輩が、新入社員・若手社員の意見や感覚を尊重し、耳を傾ける態度を示すことで、新人・若手社員でも自分の意見を言いやすくなります。上司・先輩は、ちょっとした会話から「真剣に聴く」ことをはじめ、新入社員・若手社員が相談や提案をしやすい雰囲気をつくることが大事です。
①によって、新人・若手であったとしても自分が必要とされ頼りにされていると感じ、そして、②でちょっとした発言でも耳を傾けてくれる、提案しても否定されないという安心感を持てるようになる。新人・若手社員のマネジメントをする上で、押さえておいてほしいポイントです。
若手社員からの提案がもたらす効果
実は、若手社員からの提案を引き出すことには、様々な効果があることが分かっています。
1つ目は、若手社員の「自己決定感」や「影響感」を高めることができる、ということです。自己決定感とは「意思決定に関わることができるという感覚」、影響感とは「自分の仕事が周囲に好影響を与えているという感覚」です。いずれも社員の仕事に対する主体性を高める効果があります。
そして、主体的な仕事は店舗や会社への愛着・帰属意識を高め、新人・若手社員の早期離職を防ぐ効果もあります。
2つ目は、気づかない視点からの意見による顧客満足度の向上です。
継続的に高い顧客満足度を維持していたある美容室では「1年生である新人の意見を宝だと思え」という考えでロールプレイングによるカウンセリングのトレーニングを行っていました。それは「最もお客さま目線に近いのは年次が若い社員である」という考え方に基づくものです。そのため、若手でも意見の言いやすい風土をつくりだし、結果として離職率の低減にもつながっていました。
また、顧客満足度も従業員満足度も高いある小売店の店長の方は「長く働いていると慣れがでてきて、状況や仕事を客観的に見られない点も多々でてきます。そこで、大切にしたいのが新人スタッフの意見です。新鮮な角度からみた視点や意見には、気づかされることがたくさんあります」と答えており、新人・若手スタッフの固定概念に縛られない意見を顧客満足度向上に役立てていました。
新人・若手社員を「育てる対象」としてだけ見るのではなく、同時に「お客さまに最も近い新鮮な感覚を持っている宝物」としても見てほしいと思います。新人・若手だからこそ持つ店舗や仕事への違和感や、もっとこうしたら良いのではないかという意見を積極的に引き出すことが、早期離職を防ぎ、また、組織全体のパフォーマンスをも向上させるからです。この春は、新人・若手社員の意見に耳を傾けてみるのはいかがでしょうか。