アフターコロナでも顧客から選ばれる外食業界の店舗作りとは?『サービスのチカラ』の著者、遠山啓之氏に聞く。
これまで全国的に出されていた緊急事態宣言が解除され、各方面で営業を再開する店舗も徐々に増えております。そんな中、外食業界ではアフターコロナを見据えた新たな店舗作りの必要性に迫られています。今回は『「サービスの力」座談会』と題しまして、株式会社プレジャーカンパニーのサービスマネージャーである遠山啓之氏より、アフターコロナにおける接客や店舗作りについて、当社の外食統括コンサルタント 相崎との対談形式にてご講演いただきました。
遠山啓之氏:東京・神奈川を中心に「アジアンビストロDai」などの飲食店を15店舗展開する株式会社プレジャーカンパニーの現サービスマネージャー。『サービスのチカラ-今からできる!笑顔のアクション接客編』の著者。
消費者の関心は店舗の「安心・安全」にある
相崎:弊社MS&Consultingが4月と5月に登録モニターを対象に実施した、外食・小売企業への消費者意識の変化に関するインターネット調査でも、飲食店を利用する消費者が減っていることが分かります。また、家飲みの需要も微増に過ぎません。(一時的なWEB飲み需要・「おうち居酒屋」といった動きに流され過ぎない方が良い可能性があります)
さらに、「新型コロナが落ち着いたら来店したいですか?」という設問では、外食の来店意向が高い反面、不安を感じている割合も高いという結果になりました。つまり、外食業界は、新型コロナウイルス感染防止対策や清潔度を高め、「安心・安全」を消費者にアピールする必要性の高い業種であることが分かります。この結果を受けて飲食店が取り組むべきことは何だと思いますか。
※株式会社MS&Consulting 全国モニター 1,109名の回答データ(2020年5月中旬実施)
※収束後来店意向=コロナ収束後に利用機会を増やす意向、不安率=コロナ対策へ不安を感じるか?
消費者の「利用したい」けど「不安」という感情
遠山氏:新型コロナへの不安を感じている消費者が多く、飲食店の清潔さといった「安心・安全」に関心が向いているので、店内清掃などのQSCの徹底とマスクなどによる感染防止対策が、アフターコロナの店舗作りの大前提だと思います。当社の飲食店ではずっと料理の品質(クオリティ)、接客(サービス)、清潔さ(クレンリネス)といったQSCの徹底を追求してきました。一部のお客様にはこのことが浸透しているようで、「プレジャーカンパニーさんだから大丈夫だよね」と言って来店されるお客様もいらっしゃいます。当社の飲食店では、リニューアルオープンをするつもりで、店内を思いきりクリーニングしています。椅子の脚まで拭いていますよ。もしこのQSCが足りない飲食店さんがいるならここの磨きこみを行ってください。
アフターコロナでは基本の接客を徹底し、「笑顔」を中心とした明るい接客が重要
相崎:遠山さんは、アフターコロナの接客において何が重要だとお考えですか?
遠山氏:基本的な接客をコツコツとやることがまず重要です。私の本(『サービスのチカラ-今からできる!笑顔のアクション接客編』遠山啓之氏著)にも書いているのですが、私が基本の4大行動と呼んでいる、笑顔・アイコンタクト・声・ボディランゲージはアフターコロナにおいても、重要だと思います。ですから、外食はしたいがちょっと不安というお客様に対しては、「安心・安全」と、お客様から喜ばれる接客でいつでもお出迎えできる準備をしておくべきです。なぜなら、基本の接客ができていないお店へコロナの時にわざわざ来店しようとは思わないですよね。
相崎:なるほど。基本の接客が大事なんですね。
遠山氏:はい。特に飲食店において大事なのは「笑顔」です。でも「笑顔」を出してと言ってもできないスタッフもいます。そうしたスタッフに大事にしてもらいたいのは「アイコンタクト」です。これはお客様の目や表情、行動などからお客様の思いをくみ取るということです。入店から退店までお客様を観察していなければできないことですが、「笑顔」がなくても、「アイコンタクト」があれば「気づいてくれてありがとう」と言ってお客様から喜んでもらえます。「アイコンタクト」は、多くの飲食店さんではできていないのでこれができると他の飲食店と差別化できると思います。
相崎:お客様との会話で意識すべき点はありますか?
遠山氏:飲食店においては「会話」というよりも「声掛け」が重要だと思います。お客様に料理などの「感想」を伺うことが重要です。会話そのものをしようとすると、趣味などの話と勘違いしがちなのですが、飲食店は他のビジネスと違ってお客様の目的が明快で、食事をしに来ているのです。なので、お客様の好きなもの、嫌いなもの、いつも食べているものなどの情報を持っておいて、その方が来店した時に「いつもの料理でよろしいですか?」というように聞ければ、信頼関係を築けます。自分たちは食事を提供し、お客様は飲食をするという「共通言語」にアプローチすれば、下手な会話をしなくても、信頼関係は築けるのです。
相崎:アフターコロナにおいてお客様への「声掛け」が難しくなったという声をよく聞きますが、遠山さんはどうお考えですか?
遠山氏:お客様はお店の食べ物に対して自分たちよりも舌が肥えているので、「今日のお味はいかがですか」と聞いたら、自分が苦手だと思っていたお客様とも会話することができたんです。このような飲食における会話の軸がないと、お客様との間に距離が生まれますよね。ですからアフターコロナにおいても「アイコンタクト」と感想を聞くなどの「声掛け」は間違いなく重要です。コロナが落ち着いてきてお客様との距離感が近くなった時、アイコンタクトがあって、「お味はいかがでしたか?」という「声掛け」があればお客様の信頼感が高まり、次回来店時以降のお客様との会話が成立するようになります。
相崎:現在、多くの飲食店では新型コロナウイルスの感染予防のためにマスクをして接客を行っています。マスクをした状態での接客で意識すべきポイントは何でしょうか?
遠山氏:明るい接客が大事だと考えています。明るい接客とは、笑顔や高い声のトーン、身振りで明るさをアピールする接客のことです。その中でも笑顔は最も重要です。しかし、アフターコロナの接客において、マスクをするとお客様に対して声が伝わりにくいですし、笑顔などの表情も伝わりにくくなります。
そこで重要なのは、声を張り上げるのではなく声のトーンを上げるということ、頬の上の辺りを上げながらの笑顔を意識するということです。マスクをしていると声が伝わりにくいと考えて声を張り上げがちですが、これではお客様に唾を飛散させている印象を与えかねません。声のトーンを上げることで声が通りやすくなりますし、お客様に明るい印象を与えることもできます。また、頬の上を上げる笑顔を意識するとマスクをしていても笑顔が伝わります。
明るい接客では、笑顔だけではなく声のトーンを上げたり、身振り手振りなどのボディランゲージを意識した視覚的な接客も意識するべきです。この時期、もしお客様が来店してその店の雰囲気が暗かったら、「コロナの中でせっかく選んで来たのに…」「コロナ後第一号店で来たのに…」と感じます。ですから明るい接客は絶対に大切です。そして明るい接客には、お客様に楽しんでいただくというスタッフの「気持ち」がないといけません。
喜ばれる接客にはチームの「モチベーション」向上が不可欠
相崎:お客様に喜んでもらうためには「気持ち」が重要なのですか?
遠山氏:そうです。笑顔のある明るい接客をするためには、スタッフが素直に楽しんでいる必要があると思います。何となく働いていてそんな気持ちになれないというスタッフもいますが、そういうスタッフには「あのお客さんまた来てくれたね。嬉しいね」とか、「あのお客さん覚えている?どんな人だっけ?」と言って、スタッフが答えられたら「正解」などのような声掛けをしています。答えられたら楽しいですよね。私は「リコグニション(お客様の情報・認知)」と呼んでいるのですが、これがあればお客様に興味を持てますし、接客にも生かせます。
相崎:なるほど。スタッフのモチベーションがないと「良い接客」はできないということですね。
遠山氏:そうです。お客様に喜ばれる接客で大事なことは、スタッフの「モチベーション(気持ち)」だと思います。例えば、コロナの中でわざわざ来店されるお客様に対して、素直にお客様への感謝の気持ちがあれば、ただ「いらっしゃいませ」ではなく、「ご来店ありがとうございます」とお声がけすると思います。また、そうした気持ちがあれば自然と笑顔になり声のトーンも上がるので、お客様はこの店に来てよかったと感じます。アフターコロナにおいては、感謝の気持ちを大事にして、それをお客様にしっかり伝えるべきです。
相崎:アフターコロナにおいて、スタッフの「モチベーション」を高めるためにしていることはありますか?
遠山氏:新型コロナウイルスの感染拡大によって、自社のスタッフの多くが自宅待機をしていて、このまま何もしないのでは「マズい」と、皆だらけてしまうと思いました。そこでスタッフには私の書いた本を読んでもらうようにしました。そして様々な店舗の様々な役職のスタッフを集めたオンライン研修を週1回開催して、読書後の感想を共有しました。異なるエリアのキッチンスタッフやホールスタッフといった、今まで接点がなかったようなスタッフ同士が8割参加し、それぞれの視点からの意見を共有でき、皆で「早く現場へ戻りたい」という「モチベーション」を共有することができました。
基本の明るい接客でファンを作る。顧客には感謝の気持ちを伝える。
相崎:多くの外食業の店長さんは、アフターコロナにおいて店舗に顧客が戻ってくるのかを心配されているのですが、どのように思われますか?
遠山氏:これからのことは誰も確実には分からないと思います。ただ重要だと思うのは、コロナの感染対策をしっかり講じてお客様の「安心・安全」を守ること、そして先ほど述べた基本の明るい接客でお客様をいつでもお出迎えできるようにしておくことです。それらをコツコツ積み重ねていけば来店されたお客様をファンにすることができます。
相崎:ファンを作ることが大事なのですね。
遠山氏:そうです。当社のある飲食店でテイクアウトを始めたとき、お客様の大半は近所の住民同士のクチコミがきっかけで来店された方々でした。もちろんSNSなども利用してテイクアウトの情報発信をしました。でもSNSでの情報発信は消費者に対して店の認知を広げることはできるかもしれませんが、お店を知ってもらうだけでは来店にはつながりにくいんですよ。なので私は店舗経営において、お客様にファンになっていただいて2回目以降も来店していただくことと、「生の口コミ」を重視しています。
相崎:なるほど。ファンから選ばれる店舗づくりが重要なのですね。最後に、コロナ危機の中で飲食店は顧客にとってどんな場所であるべきなのでしょうか。お聞かせください。
遠山氏:コロナの苦境の中でスポーツなどの様々なエンターテイメントが中止になりました。であれば、お客様には、自分たちの店舗を身近に楽しめる場所として感じていただきたいです。
そして、お客様には「来てよかった」と思っていただける店舗でありたいと思っています。まだお店を再開できていない方々がいる中で、再開できることはとても幸せです。また、コロナで大変な時にお客様に来店していただけることはとても幸せですし、スタッフは感動します。お客様にこの感謝の気持ちを言葉で伝えれば自然と笑顔になりますし、その気持ちがお客様に伝わります。そうすれば必ずお客様には「来てよかった」と思っていただけます。
本セミナーのまとめ、アフターコロナに向けて始めておきたい取り組み
本セミナーで遠山さんは、アフターコロナにおいて、店内清掃などの徹底したQSCでのおもてなしと、明るい笑顔や、料理の感想を聞くなどの声掛け、「アイコンタクト」といった基本的な接客を徹底することの重要性を強調されていました。しかし、そうした基本的な接客が徹底できているかを、顧客目線で確認する必要があります。また遠山さんは顧客から喜ばれる接客において、チームのモチベーションを高めることが必要だとおっしゃっていましたが、実際そのためには、何から始めるべきなのでしょうか?これらの悩みを解消するツールとして弊社の「ミステリーショッピングリサーチ」と「tenpoketトーク」があります。
●サービスのご案内① 顧客のリアルな声を知り、現場の接客改善に役立てる
遠山さんは、アフターコロナにおいて、QSCの徹底と笑顔や声掛け、「アイコンタクト」などの明るさを意識した基本の接客を行うことが大切だとおっしゃっていました。コロナによって顧客の消費環境が目まぐるしく変化する中で、店舗に対する顧客の意識の変化を確認し、そこから店舗の長所や課題を見つけ、接客に落とし込んで改善していくことが求められます。弊社の「ミステリーショッピングリサーチ」では、一般消費者であるモニターが丁寧に作成した充実のコメント欄によってコロナ特有の不安や対策に対する顧客の不満点のみならず、店舗の長所となる接客や料理のポイントを見つけることができるので、現場の改善活動にご活用いただけます。
●サービスのご案内② tenpoketトーク:チームのモチベーションを高めるツール
遠山氏がおっしゃるように、顧客から喜ばれる接客にはチームのモチベーションを高めることが不可欠です。弊社が無料トライアル(2020年7月まで)を実施しているコミュニケーションツール「tenpoketトーク」は、店長、アルバイト同士の円滑なコミュニケーションをサポートします。スタッフで互いを認め合ったり、お客様からの喜びの声を共有したり、働くことが楽しくなるようなチャット機能が充実しています。これにより店舗スタッフのコミュニケーションを活発にして働くモチベーションを高めることができます。また、コロナを経てこれから増加すると思われる店舗スタッフのオンライン教育などにもご活用いただけます。
●サービスのご案内③ 公式YouTubeチャンネル:顧客から選ばれる店舗づくりを動画で学ぶ
市場の状況をリアルタイムでお伝えする弊社公式YouTubeチャンネルを立ち上げました。弊社コンサルタントが実際に飲食店の社長さんに伺った、コロナを踏まえた店舗経営の現状のインタビュー動画などを無料で見ることができます。こちらもぜひご活用ください。
新型コロナウイルスへのご対応で大変苦慮されていることと思いますが、弊社ソリューションが皆さまのお役に立てることを願っております。ご体調には十分お気を付けください。