スタッフへの権限委譲による、 店長業務の工数確保
店長塾全国大会2016発表動画
株式会社フードエイド《スタッフへの権限委譲とInstagramを活用した新規集客》
株式会社フードエイド
http://www.foodaid2012.com/
代表取締役 俵 幸嗣
愛知県名古屋市中川区福川町2-1
『季刊MS&コンサルティング 2017年冬号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承ください。
※掲載記事内の図表等は、すべて発表資料を基にMS&Consultingが加工しております。
第4回店長塾全国大会 レポート
◆取り組み
店長しかできなかった業務をスタッフに移管し、
空いた時間で新しいマーケティング施策に取り組む
↓
◆成果
・32%の人件費削減(アルバイト時給は100円アップ)
・売り上げ昨年対比132%
店長がいないと回らない
まず取り組み前の話をいたしますと、当店はバーベキューハウスという業態柄、季節の変動が大きく、7~8月の繁忙期には回転率が4回転ほどになります。こうした状況の中、私も一人のプレイヤーとしてフル回転してしまっており、スタッフの教育など、店長としての仕事に全く手がつけられないという状態でした。結果として、店長である私の指示がないと回らないお店となってしまっており、自分自身も休みが取れない状況でした。
スタッフへの権限委譲を決意
こうした状況を何とか打開したいと思い、私はスタッフへの権限委譲を決意しました。
その際に考えたことは、「何のために権限委譲するのか?」という目的をしっかりと確認しておこうということです。私は「店舗の売り上げにつなげるため」の権限委譲であるという目的を設定しました。逆に言えば、売り上げにつながらなければ、いくら権限委譲ができているように見えても、それは失敗だと考えました。
そういう具体的な目的が定まると、取り組みスケジュールにも自然と必然性が生まれてきます。この取り組みを開始したのが3月なのですが、先ほども申し上げたように7~8月は当店の繁忙期となりますので、売り上げを考えますと、この時期までには権限委譲を終えていなければなりません。つまり、取り組みに使える期間は4~6月の3カ月間ということになります。そこで、3カ月間の各月ごとに「教えられる人を育てる」「業務の権限委譲を完了」「予約対応の権限委譲を完了」という目標を設定しました。また、3カ月間でこれらの目標を達成していこうと考えると、これまでのような「空いた時間を使って教育」という発想では絶対に間に合いません。そこで、スタッフにはいつもより15分だけ早く来てもらい、その時間を教育の時間に充てることにしました。この時間も時給は払うので一時的に人件費は上がりますが、スタッフに業務を移管して、捻出した時間で私が売り上げ増のための取り組みをすることができれば十分に元は取れますから、先行投資と考えました。
教育
こうして作った15分間の教育の時間で、私はスタッフとの個別面談を実施しました。この面談時に意識したことは、「権限委譲の目的を伝える」「メンバー一人ひとりのテーマを決める」「仕事内容全てに触れさせる」「成長を確認することで、成長感を実感させる」ことの4つです。例えば、「言ったことはしっかりやるが、能動的に仕事をすることが苦手」というタイプのスタッフであれば、個別に「“わからない点があれば、自分から聞く”ということをテーマにしてみよう」と話をして、私自身もその点については特に注意してフォローするようにしました。
捻出した時間で新規集客策に着手
これらの施策が功を奏して、7~8月の繁忙期を過ぎる頃には、私が付きっきりでなくてもオペレーションが回るようになってきましたので、当初の予定通り、新規集客のための施策をスタートすることができました。
ここで行ったことは、主に二つです。
一つは、直接の営業活動です。当店のメインターゲット層は「女性」「グループ」「若年層」という特徴がありますので、こうしたターゲットが多いと思われる美容室にチラシを持っていくなどの営業活動を行いました。
もう一つは、SNSの活用です。店舗やメニューの写真だけではなく、来店されたお客さまがバーベキューで盛り上がっている様子を撮影させてもらい、お客さまから許可をいただいてInstagramに掲載することで、そのお客さまのご友人などが興味を持っていただき、来店してくださるようになりました。
まとめ
こうした取り組みの結果、始める前はかなり厳しいと感じていたオペレーションですが、スタッフ一人ひとりがスキルアップしてくれたことにより、昨年は平日で4名必要だったのに対して今年は3名、休日は昨年6名のところを5名のスタッフで回せるようになり、平均時給100円アップを実現しつつ、昨年対比で約32%の人件費削減に成功しました。また、私がマーケティングに積極的に時間を使えるようになったこともあり、売り上げも全ての月(4月~9月)で前年越え、平均で昨年対比132%と、大きく伸ばすことができました。
今回の取り組みのポイントとして、二つのことが挙げられます。
一つは、「ゴールから逆算して、取り組み内容をスケジュールに落とし込む」ことです。特に今回の取り組みでは、「ピーク期までに権限委譲を終える」というゴールに変更が効かないため、「では、そのためにどうするか」と逆算して考えていくことが非常に大切だったと思います。
もう一つは、勇気を持って決断すること。今回の取り組みで言えば、先行投資をしてでも教育の時間を確保したということです。空いた時間でやろう、余裕ができたらやろうでは、結局いつまでも同じことの繰り返しだったと思います。今回、思いきって先行投資をすることで、時間がないから教育できない、教育できないから時間がないという悪循環を断ち切ることができました。