【第5回外食クオリティサービス大賞レポート】 「思いやりとサプライズ」を徹底的に具現化
株式会社みたのクリエイト
URL:http://ameblo.jp/mitano-aki/
本社所在地:沖縄県中頭郡中城村南上原816
設立:2007年9月/資本金:900万円/店舗数:直営9店舗・FC1店舗
経営理念:お客様に喜んでもらうためだけの原価率200%のメニューがある。席の広さは周辺店舗の約1.5倍。お客様の滞在時間が2時間以下だと社長に報告され、CS水準の対策が打たれる。こうした業界の常識に反するような施策を行いながら、どうすれば収益性が確保できるのか。理念と利益を両立させるための仕組みと考え方に注目。
展開する全ブランド:目利きの銀次、火鉢屋、動く町、生け贄の銀次、和牛一頭流
沖縄県内に7業態10店舗を展開する株式会社みたのクリエイトは、地産地消ならぬ“他産地消”をコンセプトとし、沖縄在住の顧客に対して全国各地の鮮魚を中心に提供している。沖縄料理店がひしめく地域で、県民のための店は珍しい。加えて長居をしても急かされず、コース料理は食べきれないほど振舞われるというもてなしに、どの店舗も平日・週末を問わず常に満席だ。2時間以内に帰る顧客には、会計時に必ずその理由を聞いて本部に報告するほど、お客様の満足度を徹底して追求している。
特に顧客の高い支持を集めているのが、原価率100%以上の目玉商品。たとえば、生きたイセエビほか鮮魚6点の刺し盛り980円の原価は200%、時期によっては300%を超える。同社で“キラーコンテンツ”と呼んでいるこれらの商品は、メニューから制服の背中でまで強く訴求していることもあり、注文率も100%以上となっている。
赤字が目に見えている商品に、低い回転率。それだけでは、当然だが収益は上がらない。それを、本部だけでなく料理人からホールスタッフまで現場の一人ひとりが数値感覚を身に付け、商品に高付加価値をつける工夫をすることで、利益の確保を実現している。何をいくらで提供すれば利益が上がり、かつ顧客に妥当だと感じてもらえるのかを毎日現場が判断しているのだ。事実、200%もの原価率の商品がありながら、各店のトータル原価率は30~34%ほどに抑えている。その際、キラーコンテンツ以外の商品価格を高くしたり、原価の低い食材で利益を取ったりすることはない。毎日変わる食材原価と妥当な商品価格とをうまく調整しているのだ。
圧倒的な人気による集客が安定した仕入れを可能にしているので、食材の廃棄ロスが少なく大量発注ができることも、コスト削減の大きな要因になっている。キラーコンテンツは、赤字の商品というより宣伝広告費。紙媒体やWEBにほとんど広告を出稿していない分、商品力で口コミやリピート来店を促しているわけだ。
これらすべての施策の源泉になっているのが、同社の理念である「思いやりとサプライズ」。十分な席幅を取った店舗レイアウトや、顧客が歓声を上げる商品企画など、現場で徹底している顧客に対するすべてのオペレーションは、「思いやりとサプライズ」を具現化したものにほかならない。だから、スタッフはこれらのオペレーションに従って行動するだけで、自ずと理念が浸透していく。また、そうすることで一人ひとりの成功体験が積み重なり、個人の成長も叶う。
「目先の売上獲得施策は必要ない」と、同社代表取締役の田野治樹氏は語る。「思いやりとサプライズ」を徹底するという考えは、現場のオペレーションだけでなく、すべての経営判断から人事考課にまで反映されている。「理念を永続的に実現しながら、確実に利益を上げる。一見相反する、この2点を両立させるのが、経営のプロとしての責務だと考えています」。