逆境の中、成長を続ける「繁盛店の裏側」
『季刊MS&コンサルティング 2010年秋号』掲載
取材・文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
MS&Consultingでは、全国各地で1,300社・年間3万店舗の顧客満足度調査および従業員満足と顧客満足を両立させるための組織づくりのコンサルティングご支援を行っております。そこで接する多くの経営者の方々とのつながりを活かし、経営者の方々が一堂に会して情報交換できる場として、今年3月より『経営者フォーラム』を立ち上げました。その時々における市場環境の中で、多くの経営者の方が意識されているテーマを選び、事例発表を中心として有益な情報交換を行って頂ける機会をつくって参ります。
本記事では、2010年7月、東京(22日)・大阪(28日)の各会場にて、「外食業界において挑戦を続ける繁盛店、逆風の市場環境に負けない経営」をテーマに『第二回経営者フォーラム』を開催致しましたので、その結果をご紹介致します。
「人財育成に特化した自立型全員経営」
株式会社キープ・ウィル ダイニング 代表取締役 保志真人氏(東京会場)
【株式会社キープ・ウィル ダイニング】
神奈川県海老名市東柏ヶ谷3-1-13 2F
会社ウェブサイト:http://www.keepwill.com/
キープ・ウィル ダイニングでは、栄枯盛衰が激しい居酒屋業態で生き残るための資産は人財にあると考え、経営の仕組みを人財育成に特化させている。完璧な業態やシステムを作るのではなく、ある程度の遊びを残しておくことによって、社員・アルバイトに自主性を発揮してもらう経営手法が特徴だ。店の運営には基本的に一切介入せず全て任せる代わりに、失敗しても受け入れられるような体制を用意している。また、目標達成のプロセスは社員の自由だが、それに必要な知識の習得や計画立案のサポートを行うなど、環境を整えることを重視する。そのような経営手法によって社員の働きがいも高まり、社内・店内は社員・アルバイトのエネルギーで溢れている。
【講演のポイント】
1.社員とアルバイトの自主性を尊重し、店の運営を全て任せる。
2.目標に対するコミットメントは必要だが、達成のプロセスは社員の自由。
3.給料やインセンティブより、連帯感や達成感で働きがいを上げる。
「冷徹な合理主義経営の上に成り立つ、情熱的な素材表現」
株式会社スプラウトインベストメント 代表取締役 高橋誠太郎氏(東京・大阪会場)
【株式会社スプラウトインベストメント】
神奈川県海老名市東柏ヶ谷3-1-13 2F川崎市幸区小倉1737小倉ビル3F
http://biz-xtasy.com/
重要な視点は、「こだわるポイント」と「削っても良いポイントと上限」を定めていることだ。活魚と新鮮地場野菜の提供にこだわり、流通ルートの構築から提供方法に至るまでしっかりとお金と時間を掛ける。また、活魚のブランドイメージを明確に訴求するため、絶対に値引きはしない。一方で、家賃についてはエリアの特性に応じて坪当たり家賃の条件を設定し、それ以上のお金は掛けないし、値引きをしない分、知名度を上げるための最初の広告費にはお金をかける。このように、ビジネスモデルの中でのゆずれない部分(=強み)を明確にし、それに徹底的にこだわる合理性が繁盛を続けている背景にある。
【講演のポイント】
1.「活魚・新鮮地場野菜」のカテゴリー内でトップを目指すことに資源を集中。
2.「活魚・新鮮地場野菜」の提供にお金をかける分、家賃にはお金をかけない。
3.高品質な活魚を守るために値引きはしないが、知名度を高める広告費は使う。
「リピーター売上比率60%を誇る愛顧客経営」
株式会社萬野屋 代表取締役 萬野和成氏(大阪会場)
【株式会社萬野屋】
神大阪府大阪市天王寺区勝山4-10-25 ガード下番号116-117
http://www.mannoya.com/
萬野屋の売上に対する販促媒体からの売上比率2.78%に対して、愛顧客(リピーター)の売上比率は約60%。航空会社のマイレージサービスを参考に、常連客と紹介客に的を絞った徹底的な愛顧客経営が今回の発表の肝だ。紹介客には通信簿(店内アンケート)を書いてもらうが、継続できることを重視して回収は1日10人に限定。その分、試行錯誤を繰り返した結果最も効果が高いとされる2週間後に、通信簿に書かれた言葉を用いたDMを送る。さらに、顧客データを全社管理し、全愛顧客をファーストドリンクの時点からVIP待遇できるようにし、行きつけの寿司屋のような常連感覚の気持ち良さを味わってもらえるよう、工夫を凝らす。それを毎日積み重ねていくことで、決して崩れることのない愛顧客経営ができるのだ。
【講演のポイント】
1.常連客が連れて来て下さった新規客を虜にすることが最も効果的な販促手段。
2.通信簿(店内アンケート)を基に、共通用語を用いたDMを2週間後に送る。
3.顧客データを全社管理し、全愛顧客をファーストドリンクの時点からVIP待遇。
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