「感動」レベルのサービス提供の割合はどれくらい?飲食店リサーチ
『超優良店ガイドブック2012年』掲載
文:西山 博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
図1は、2010年11月~2011年7月における飲食店のミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)調査結果23,196件の総合得点の分布を表したグラフです。居酒屋業態、レストラン業態を含めた平均点は161点となり、それ以上は「来て良かった」と感じさせるレベルであると言って良いですが、160点以上のレポートは全体の約60%にも上ります。いかに競争が激しいかが見て取れます。ここで、点数だけでは見えないレポートのコメント内容から、それぞれの点数の意味を簡単にご説明します。毎月のレポートが全体の中でどのようなレベルにあるのかをご確認いただければと思います。まず、160点以下のレポートがどのような状態かというと、141~160点のレポートは「特に印象に残らなかった」レベル、121~140点のレポートは「積極的には利用しないようにしよう」と感じさせるレベル、101~120点のレポートは「絶対にもう来たくない」レベル、100点以下のレポートは「被害者意識」さえ感じさせてしまうレベル、つまりクレームの直前レベルと言え、このレベルのレポートは全体の3~4%になります。
【図1.飲食店におけるMSR総合得点※の分布】 ※200点満点
一方で、161~170点のレポートは「普通」のレベル、171~180点のレポートは「機会があればまた利用しても良い」と感じさせるレベル、181~190点のレポートは「また利用したいし、他の人にもお勧めしたい」レベル、190点を超えるような場合は「いつか必ずまた来たいし、他の人にも積極的にお薦めしたい」レベルとなります。このレベルのレポートは全体の12%程度になります。
【図2.MSR調査回数5回以上の飲食店における総合得点※平均の分布】
※200点満点
一日3回も飲食をする生活の中で、お客様は1回1回の食事の内容や店の名前をそれほど意識していません。店舗の前を通りかかるなど、何かきっかけがあれば思い出すものの、ふと近くを通りかかった時やある料理が食べたいと思った時に頭に浮かべるのは、特に印象の良かった店だけになります。店舗経営としては、全体の30%にあたる、180点以上の印象を毎回残したいものです。
しかしながら、180点以上の印象を毎回残すのも至難の業です。図2は、同期間でMSR調査数5回以上の飲食店における、総合得点平均の分布を示したグラフです。このグラフからはまず言えることは、平均して180点を超える店は全体のたった2.3%しかなく、190点を超える店に至っては、0.1%しかないということです。一方で、170点を超える店は全体の36%もあります。図1から読み取れた、全調査としては30%もの人が感じている180点以上のサービスを毎回安定的に提供できれば、競争の激しい中であっても、わずか2.3%の超優良店に入ることができ、差別化が実現できるのです。しかし、そうした高いレベルのサービスを安定的に提供することがいかに難しいことであるかということも、如実に見えてきます。
【図2.MSR調査回数5回以上の飲食店における総合得点※平均の分布】
※200点満点
「感動(必ずまた来る)」レポートの割合の意味
次に、同期間における再来店意志の分布を見てみます。この「再来店意志(また来たいと感じた度合い)」と、「紹介意志(誰かに紹介したいと感じた度合い)」とは、リピート率のバロメーターである顧客ロイヤルティを測る最も効果的な質問と言われています。図3を見ると、4人に1人の割合で「感動(必ずまた来る)」と回答していることが分かります。一方で、図4は、それら「感動(必ずまた来る)」レベルのサービスを、どれくらいの割合で提供できたかを表したグラフです。
【図3.飲食店におけるMSR再来店意思の分布】
これを見ると、「感動(必ずまた来る)」レベルのサービスを提供できた割合が全調査の20%以下である店の割合は、半分以上であることが分かります。ちなみに、平均は23.6%です。すなわち、MSRの得点でいうと5点満点中5点となる「感動(必ずまた来る)」評価を5回に1回程獲得するのが、平均的なレベルであるということです。いかにこの獲得率を増やしていくことができるかを、ひとつのバロメーターと捉えることもできます。
【図4.MSR調査数5回以上の飲食店における「感動(必ずまた来る)」割合の分布】
世の中では「感動のサービス」が注目を集めていますが、来店の度にサービスのレベルが違ってしまっては、お客様からの信頼を得ることはできません。1度きりの感動体験の提供よりも、飲食店としての基本的なオペレーションを徹底し、いつお越しいただいてもご満足いただけるようなサービス提供体制を整えておくことが、超優良店への近道と言えそうです。
【図4.MSR調査数5回以上の飲食店における「感動(必ずまた来る)」割合の分布】