新人店長が挑んだ“はじめてのチーム作り” 成功の鍵は「こつこつと積み上げた信頼関係」 ◆コメダ珈琲店 福岡六本松店◆
従業員エンゲージメント調査でスコア60(サービス業対象全調査の上位16%※)を叩き出したコメダ珈琲店 福岡六本松店の沖口店長。しかし、1年半前に店長に就任した時はコロナ禍の打撃で人件費を削らざるを得ず、スタッフからは「人が足りない!」と悲鳴があがり、顧客満足度調査のスコアも低迷、悪循環に陥っていたといいます。そのような状況からどのような順番でチームづくりを進め、悪循環からの脱却を図ったのか、沖口店長と岡林スーパーバイザーにお話を伺いました。
※弊社実施tenpoketチームアンケート(従業員エンゲージメント調査)の結果
―店長就任直後は上手くいかないことも多かったと伺っています。どんな状況だったのですか?
沖口店長:僕が当店の店長に就任したばかりでスタッフとの信頼関係がまだ強いものになっていない時期に、コロナ禍に突入しました。厳しい売上の中でも利益を守るために人件費をタイトにせざるを得ない状況に追い込まれ、スタッフからも「人が足りないです!」と悲鳴があがるなど、チーム状況が悪化していきました。結果、顧客満足度調査のスコアも71点を取ってしまうなど悪循環に陥っていきました。
お話しを伺った、コメダ珈琲店 福岡六本松店 沖口店長
―そのような状況から1年半後には、上位16%に入る従業員エンゲージメントスコアを獲得されました。状況を打開するためにまず何に取り組まれましたか?
沖口店長:まずスタッフと1対1で話す時間を作るようにしました。
コロナ禍と店長就任が重なった状態だったので、
- スタッフ一人ひとりのことを知る
- 相談しやすい存在になる
そんな土台づくりから始めることにしたんです。
ただ、営業中に話しかけるやり方だと深い会話はできません。そこで、スタッフがシフトからあがり裏でくつろいでいる時を狙って声をかけることにしました。この時、意識したのは‟本音を話しやすい雰囲気づくり”です。あらかじめ時間を予約して行う個人面談だと堅苦しい雰囲気になってしまうので、あくまで雑談の延長として声をかけるようにしました。
【実践事例】
店長:今日は忙しかったね。
Aさん:そうですね。
店長:いちばん忙しかった時に‟〇〇じゃなくて□□を先にやって!”とお願いしたいと思うんだけど・・・という理由で大事なんだ。
Aさん:そうだったんですね。忙しい時は〇〇が優先になるんですね。
店長:そうなんだ、今日は対応してくれてありがとう。他にも疑問に感じたことある?
➡このようなスタッフが答えやすい仕事の話から始め、「最近学校忙しい?」など1対1の会話を始める。
|
―状況の立て直しのために、他にも取り組んだことがありますか?
沖口店長:スタッフとの1対1の会話を増やしたことで「人間関係」は良くなっていきました。ただ、店舗運営を軌道に乗せるためには加えて「店長として信頼されること」が必要です。次のような点を意識しました。
【率先垂範】 忙しい時に自分がトップに立ってお店を回して、その背中を見せるようにしました。例えば、キッチン業務が滞っていた場合、今だったら他のスタッフにキッチンに入るように指示を出しますが、自分が入るようにしました。そして「店長がやると早いな」「レベルが高いな」と頼られる存在を目指しました。 |
【約束は必ず守る】 次回シフトを連絡する期限など、約束したことは必ず守るようにしました。「約束を守れない人」が何を言っても聞いてもらえないからです。できないことはできないと言いますが、守るといったことは必ず守っています。 |
【意見を尊重する】
こういったことをこつこつ続けたところ、スタッフが徐々に‟提案”をしてくれるようになりました。お店のことを自分事として考え始めてくれているサインです。提案してくれたことは基本的には必ず実行するようにして、「提案してくれて嬉しい」という姿勢を伝えるようにしました。
|
結果、「売上に少しでもつながれば」と物販コーナーの陳列やPOP作成を自主的に担当してくれるスタッフが出てきたりと、心強いチームに育ってきました。
スタッフが考えてくれたPOPで賑わう物販コーナー
―顧客満足度調査のスコアも改善しました。スタッフと築いた良い関係性の上で、顧客満足度の向上策として取り組まれたことは何ですか?
沖口店長:スタッフからの提案が増えてきた、これはスタッフの主体性が育ってきているサインです。そこで、自分がやる「率先垂範」から、スタッフに任せて運営する「権限移譲」にマネジメントの舵をきりました。当店は新店オープンしてから間もなかったためスタッフ育成にはまだ伸びしろがありました。‟ここは将来の売上へ先行投資するタイミング”と覚悟を決め、トレーニング時間分の人件費を計上して、約4か月の間、スタッフ育成に本気で取り組みました。
育成したのは次の人材です。
- 時間帯責任者
- スリーポジションを担当できるスタッフ
結果、目標の人数が育ち、生産性の向上に寄与してくれています。また、顧客満足度調査の結果も改善してきました。嬉しく思っています。
顧客満足度調査スコアの変化(100点満点)
前任店長から引き継いだ後いったんスコアを落とすも、回復傾向に持ち直した。
※2020年7月のスコアは200点満点を100点満点に換算して掲載。
―岡林スーパーバイザーからみて、福岡六本松店が変われたポイントは何だと思いますか?
岡林スーパーバイザー:チームづくりにウルトラCはありません。沖口店長は「スタッフの話をちゃんと聞く」「否定せず尊重する」「約束を守る」など、小さなことだけれど大切なことをこつこつと積み上げていました。結果、私の担当店舗の中で最も時間帯責任者が多い店舗になっています。育ってきたチーム力をお客様の支持につなげ、さらに飛躍してほしいです。
株式会社コメダ様では、パート・アルバイトの満足度まで調査できる
従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」を利用されています
取材日:2021年11月2日
取材:MS&Consulting コンサルタント 北村裕介
※記載の数値や固有名詞などは取材当時のものです。