CSとESを両立させる、マネジメント体制構築の方法
株式会社ストライプインターナショナル
「earth music&ecology」をはじめ、数々のブランドを展開する株式会社ストライプインターナショナル。お客様満足(CS)に注力する企業が多い中で、同社は従業員満足(ES)を起点とした店舗マネジメント体制を構築。業績を伸ばすには、チーム力の高い店舗をつくることが重要という、人事部 教育チーム アシスタントマネージャー 鈴木 亜希子氏に“CSとESを両立させるマネジメント体制構築の方法”についてご講演いただいた。
※この記事は、第12回クオリティサービス・フォーラムの講演内容をレポートするものです。
ストライプインターナショナル様では、エリアマネジメントに
従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」を活用されています
ES・CS・売上の関連性
これまで、売上を上げるためにはお客様満足(以下、CS)が重要だと考えてきました。しかし人手不足時代に入り、一緒に働く従業員にまず選ばれなければそもそも店舗運営が危ういという状況に変化しています。従業員がいかにモチベーションを持って働き続けられるか、どうすればチーム力の高い店舗になるかといった従業員満足(以下、ES)の重要性も感じるようになりました。
そこで、MS&Consultingさんに当社のES・CS・売上の関連性についてデータに基づき分析していただいたところ、以下のことが見えてきました。
まず、ESと売上の相関では、従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」の「重要3項目」※のランクが高い店舗ほど、予算達成率・売上前年比が高いことがわかりました。
※重要3項目とは…「働きがい」、「帰属意識(今の会社に所属し続けたいか?)」、「推奨意識(知人や友人が仕事に関心を持っていたら積極的に自社を勧めるか?)」の3項目を指します。
ESと売上の相関|ESの高い店舗は、予算達成率・売上前年比も高い
また、売上会員構成比(3カ月以内に再来店していただいた方の売上の割合)と顧客満足度調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下、CS調査)の項目「再来店意思(また来たいと思える店舗でしたか?)」の相関では、売上会員構成比が高ければ高いほど、CS調査でも「また来たい」と思っていただけていることがわかりました。
売上会員構成比とCSの関連|CS調査結果が高い店舗は、売上会員構成比も高い
さらに、従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」のスコアが高い店舗ほどお客様の不満も下がること、
ESとCSの相関|従業員エンゲージメント調査のスコアが高い店舗ほどCS調査の不満比率も低い
(Sが最も高い得点でS~Dの5段階評価 )
従業員エンゲージメント調査の「推奨意識」と「帰属意識」のスコアが低い店舗は、10ヶ月後の離職率が高いということもわかりました。
ESと離職の相関|従業員エンゲージメント調査項目のうち「帰属意識」「推奨意識」が高い店舗は離職率が低い
これらの分析結果から、離職率が低い店舗は、スタッフの経験値が高まり、結果的にスキルアップしやすく、スタッフのモチベーションや主体性が増し、お客様にも積極的にお声掛けするようになる。そして、ブランドの魅力や価値がお客様に伝わり、ブランドのファンが増え、また来たいお店、また会いたいスタッフが増えることで、結果的に売り上げアップにつながったのだと考えました。そこで、取り組みの起点をCSからESに転換しました。
ES向上の取り組み
まず、従業員エンゲージメント調査を使って店舗の「状態把握」を実施
MS&Consultingさんの従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」は、サービス業に特化したビッグデータと比較して自店舗のポジションを「S〜D」の5段階で把握できます。この調査結果からまず、自店舗が何に注力できる状態にあるのかを確認していきました。たとえば、5段階中高いスコアを獲得しているS・Aランクの場合は「接客スキルアップ」に、一方で、B・C・Dランクの場合は、「チーム力アップ」に取り組もうといったように、CS・ESのどちらを伸ばすべきかを判断する材料に使いました。
取り組みの方向性が決まったら、各店舗でビジョンの設定や具体的な取り組みを考え、実行します。このPDCAサイクルを定着させるために「アクションプランシート」も使いました。このシートに記入することで、進捗の確認や振り返りが習慣化し、店長だけでなくスタッフも巻き込んだ取り組みとなり、実行力が上がりました。
チーム力が低い店舗へのアプローチ策
しかし、自分たちでPDCAサイクルを回せないようなチーム力の低い店舗(C・Dランク)には、エリアサポーター(以下、SV)が早急に店舗サポートに入る必要がありました。
特に、C・Dランクの店舗の店長は、従業員エンゲージメント調査の結果に対し否定的な感情を抱いていることがあります。そのため、店長との面談では、診断結果は1つの切り口であってこれが全てではないこと、(誰がどんな点数をつけたのか)犯人探しをしないこと、2つのコミュニケーション※軸で今後の変化を考えること、を意識させるようにしています。
※相槌を打つ、名前を呼ぶ、変化に気づくといった「日常コミュニケーション」と、感謝の気持ちを伝える、失敗したときは正直に謝罪するといった「意図的コミュニケーション」。
具体的にはまず、従業員エンゲージメント調査の結果に対する率直な気持ちをヒアリングしました。話を聞くことにより、結果に対する受け止め方や改善策が見えてくることがあるからです。たとえば、ある店長は責任感の強さゆえ、スタッフに任せず自分ですべてを抱え込んでいたことにより、スタッフの主体性やリーダーシップに関する項目が低くなっていたことがわかりました。このように、店長自身の思いや行動のどこに問題があったのかを確認することで、結果に対しての納得感が増し、店長が前向きに結果をとらえられるようになります。
そのうえで、従業員エンゲージメント調査の結果から自店舗の強みや課題を把握し、前回比較や全社平均比較などを参考にしながら、店長のどんな行動や発言が結果に影響しているのか、なぜこのランクになっているのかを一緒に考え、日々の言動に繋げられるようにしました。
そのほか、実際にSVが店舗へ行き、店舗のチーム力を確認しました。スタッフに笑顔があるか、スタッフ同士の声掛けがあるか、店舗ビジョンをスタッフ全員が把握しているかなどを確認することで、店長との面談時には事実をもとに話ができ、店長が自分事として捉えるきっかになります。
また、成功体験を早く得てもらうために、店舗ビジョン達成のための「フォロー」と「進捗確認」をしました。「フォロー」時のポイントは、従業員エンゲージメント調査でスコアの低い項目の改善や長期的な目標だけでなく、短期的な目標を設定させることです。一度達成感を味わうと、その後の原動力につながります。「進捗確認」では、同じ業務量でもスタッフの強み・課題により負荷の感じ方が異なりますので、何が負荷になっているのかを整理し、できるだけ得意分野の業務を任せるように、店長へアドバイスしました。
このように、スタッフの活躍の場を増やし、改善できている点は言葉にして褒めることにより、一人ひとりの意識が高まり店舗(チーム)全体で取り組む風土ができてきます。
講演の様子
CS向上の取り組み
CSの取り組みとしては、CS調査の結果から「お出迎え」と「ニーズに合った商品提案」に課題があることがわかったことから、店舗スタッフの目指す姿として「豊かなライフスタイルをお客様に届ける”ライフスタイルアドバイザー”」を掲げCS向上に取り組んでいます。
目でわかる、接客動画をつくる
まず、お客様に気持ちの良い「お出迎え」ができるように接客のOK例・NG例の動画作成をしました。たとえば、服をたたむことに集中し下を向きながら「いらっしゃいませ」を連呼するNG例と、通路などに意識を向けつつ、お客様がいらっしゃったら手を止めて、アイコンタクトをとりながら挨拶するOK例を比較し、お客様に与える印象の違いを知ってもらう機会をつくりました。
接客研修と接客スキルシート
もう一つの課題であった「ニーズに合った商品提案」については、接客スキルを研修カリキュラムに入れて強化をしました。研修時に短いロールプレイングをスタッフ同士で行い、フィードバックをし合うことで、自身では気づかなかった強みや課題の発見ができ、お客様理解につながったようです。また好事例は研修時に全体に発表することで、全店舗の接客スキルの底上げにつながりました。
人事部 教育チーム アシスタントマネージャー 鈴木 亜希子氏
今後に向けて
2019年度のCSミッションは「ストライプインターナショナルの人・物・ブランド・会社のファンになっていただけるような接客をし、ロイヤルカスタマーをつくる」です。この実現に向けて、ロールプレイング大会も始めました。これからも、よりお客様に喜んでいただけるような接客スタイルを確立できるよう目指してまいります。
ストライプインターナショナル様では、エリアマネジメントに
従業員エンゲージメント調査「tenpoketチームアンケート」を活用されています
※文:株式会社MS&Consulting ブランディング推進部 宮本紗和
※記載されている会社概要や肩書き、数値や固有名詞などは講演当時のものです。
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