日本ビューホテル株式会社

CSの更なる向上!!秘訣は具体的な顧客の声

日本ビューホテル株式会社

浅草ビューホテル、成田ビューホテルなど、全国で18ホテルを運営する日本ビューホテル株式会社。一般消費者による口コミ評価が早くから行われていたホテル業界ではあるが、そうした消費者の声を自社の具体的な改善活動につなげたいとの意図から、ミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)を導入し、月に1度の調査を実施。昨年度はMSRのレポートをもとに各ホテルの部門ごとにテーマを決めてPDCAサイクルを回す改善活動を行った。
取締役 総務部担当の伊丹伸治氏と、改善活動で大きな成果をあげた両国ビューホテルの大船季氏に、日本ビューホテルのCSについての考え方と具体的な取り組みについて、お話を伺った。

御社のCSの取り組みについての考え方や、重要視されているポイントを教えてください。

伊丹氏:中期経営計画では「一流のサービスよりも、心のこもったサービスを」というキーワードを掲げて、親しみのある温かい心のおもてなしを目指して取り組んでいます。
地元の会合やお祭りに参加するなど地域に密着した活動を積極的に行っているのも特徴です。地元の方の支持というのはホテル業にとっても重要で、地元にファンがいれば、その方のご利用だけではなく、例えばご親戚が挙式されるというようなお話があった場合にご紹介もいただけます。
また、中途採用のスタッフからは、よく「お客さまとの距離が近い」と言われますね。お客さまに「今日はどうされたんですか?」とこちらからお声がけして「今日は孫が遊びに来たから、ご飯を食べに来たよ」とお話するといったように、他のホテルではタブーとされているような接客でも問題がないことに驚いた、とか。
もちろんこれはお客さまに応じての話で、そのお客さまとの関係性が築けていることが大前提ですが、こうした対応が弊社ではこれまでごく自然に行われてきました。これは弊社ならではの良さだと思いますので、今後はこれを接客マニュアルや行動指針などへ落とし込もうとしているところです。

伊丹取締役

CSに関するお話をお伺いした、伊丹取締役


MSRを活用しようと思ったきっかけや、導入しての感想をお聞かせください。

伊丹氏:ホテル業態では「楽天」や「じゃらん」といった予約サイトなどにお客さまの口コミ掲載が行われていますが、これらの口コミは評価結果であって必ずしも改善のポイントがわかるわけではないので、改善点を見えるようにしてCS向上につなげたいというのがMSRを導入したきっかけです。
導入の結果、期待通り「お客さまに喜んでいただけている点」「気にされている点」が具体的に見えてきて、改善のきっかけをつかむことができるようになりました。
調査結果の抜粋は「MS通信」として各店に掲示しており、スタッフにも浸透しています。MSRは弊社のCS向上において重要なポジションのもので、今後も継続していきたいと考えています。

毎月の調査レポートをわかりやすくまとめた壁新聞「MS通信」も、MSRの浸透に一役買っている。


ホテルには、フロント、客室、レストラン…と幅広い部門があるのが難しい点ですね。

伊丹氏:勉強会では、お客さまの声をもとにした改善や強化の方策を部門横断で共有しました。その結果、「各部門のお客さま」ではなく「ホテルのお客さま」という認識が高まるとともに、それぞれの部署が何を考え、行動しているか、各部門間の役割の理解が進みました。結果、チームワークが高まり、成果につながってきたと感じています。


2月に行われたビューホテルの「おもてなし研修(HERBプログラム)成果発表会」では、大船様が発表された両国ビューホテルの料飲課が最優秀賞を受賞されました。

大船氏:私ども両国ビューホテルは2015年11月オープン、つまりまだオープンして半年ほどの新しいホテルです。したがいまして弊社の他のホテルと違いまして、取り組みをスタートした時点では常連のお客さま、先ほどの話にもあったような近い距離で接することのできるお客さまがいらっしゃらないという状況でした。そこでレストランをご利用いただいているお客さまに、「食後にコーヒーはいかがでしょうか?」とお勧めする活動をすることにしました。敢えてメニューには載せず、スタッフからのお声掛けのみとすることで、会話のきっかけを作り、お客さまとの接点を増やすのが狙いです。
その結果、販売数では取り組み以前の3倍を超える大きな成果となりました。コーヒーは原価率が低いので、販売数が伸びれば原価の安定につながり、より価値の高い料理をお客さまに提供することが可能となります。
また、そうした数字以上の成果だと私が感じているのが、スタッフの取り組み姿勢の変化です。お客さまへの目配りがこれまで以上に積極的にできるようになり、結果としてサービスの向上につながりましたし、当初の狙い通りお客さまとの会話も増えました。また、毎日、前日の販売実績を発表するようにしたのですが、これによってスタッフの間に良い競争意識が芽生え、チーム全体にも活気が出てきました。

コーヒーの推奨販売に取り組んだ両国ビューホテルの「さくら亭」。取り組みをきっかけに、これまで以上に目配りができるようになり、サービスの向上につながった。


取り組み成功のポイントは何だとお考えですか?

大船氏:スタッフ全員が素直に、前向きに取り組んでくれたことが一番のポイントだと思います。
スタッフは初めてMSRのレポートを見たとき、至らなかった点の指摘ばかりに目が行ってしまい、かなり落ち込んだようでした。そこで私から「何を改善すれば良いか書いてくれているんだから、簡単じゃない。まずはやってみようよ」と話したんです。そうしたら、昨日話したことがもう今日には変わるんですね。スポンジのようにスタッフがどんどん吸収していって、雰囲気が変わっていくのが私も本当に嬉しかったです。今後はこうした雰囲気を持続できるように、考えていこうと思っています。

MSR全社平均点の推移。取り組みを開始した2015年4月時点でも170.8点と高い水準にあったが、翌年3月には181.4点と、1年間の取り組みを通じて10ポイント以上も向上した。


土地効率よりもお客さまへのおもてなしを優先し、隅田川の花火大会を一番きれいに見られるように川に向けて建てられた浅草ビューホテル。(左)「より臨場感をもって花火を楽しめるように」と部屋に設けられた音取り用の小窓も、さりげないおもてなしの一つ。(右)


―お客さまの声に耳を傾け、スタッフ間でその声について考えて、楽しんで改善を進めていただく活動が根付いてきておりますので、ぜひ継続して成果につながる活動を進めてまいりましょう。本日はありがとうございました。


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※取材:角 俊英
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。

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