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選ばれる信用金庫を目指し、CS改善活動を促進

横浜信用金庫

神奈川県横浜市中区尾上町2-16-1

会社ウェブサイト:http://www.yokoshin.co.jp/


『季刊MS&コンサルティング 2010年冬号』掲載
取材:砺波敬之、文:西山博貢
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

金融業界は、業務の特性上、コンプライアンスのために人事異動が多いことなどから、CS活動の成果は時間差で表れる傾向がある。人の入れ替わりが多い中で活動を継続していくためには、組織的な取り組みや風土変革が必要となる。CS向上の仕組みづくりのためにミステリーショッピングリサーチ(MSR)を導入し、活動を推進する、横浜信用金庫 総合企画部主任調査役の久保田明良氏(写真右下)に、その導入背景と活用方法を伺った。

競争環境の変化に対して

信用金庫は法律によって営業地域が限定されており、中小企業や地域住民のための地域密着型金融機関と言われています。「預金」や「貸出」を柱として金融業 務を行っている点では、民間のメガバンクや地方銀行などと基本的に違いはなく、競合関係にあります。また、政府系金融機関に対しては貸出業務において、ゆうちょ銀行に対しては主に預金や投資信託などの業務において競合しています。このような金融業界の動向が将来どのように変化するのかを考察することはもち ろん大切ですが、お客様のことを第一に考えてより良いサービスを提供していくことが、いっそう重要だと思っています。

総合企画部主任調査役の久保田明良氏


金融機関におけるCS課題

金融業界は、数字が大変重視される業界です。日本経済が右肩上がりで成長してきた時代には、預金量や貸出量など の目標を掲げて必達を目指すという、強い業績志向の風土がありました。今は、市場が従来のように拡大していく時代ではありませんので、それに合わせて金融 機関経営を変革していく必要があります。

金融機関は“お金”を扱っており、自動車や洋服など“モノ”を直接販売するような仕事ではありません。マイホー ムの購入や店舗の開店資金など、ご融資を通じてお客様の夢の実現をお手伝いする仕事です。その時に重要なことは、人と人とのコミュニケーションです。当金 庫の職員の多くは、「お客様との接客が魅力」という志望動機で入庫してきます。しかし、現実には、商品が複雑化・多様化して覚えなくてはならない知識が増 え続ける上、事務的なミスをしてはいけないというプレッシャーの中で、目の前の仕事をこなすことで頭が一杯になってしまいがちです。

これまでもアンケート調査、 WEBサイト、電話、メール、窓口対応などからお客様の声を積極的に収集するように心掛けてきましたが、その対応はどうしても対症療法になりがちでした。 MSRは、調査モニターの方が一般消費者の視点で、様々な角度から「良いところ」や「改善が必要なところ」をコメント付で評価してくれますから、職員が実 感を伴って受け止めています。前回指摘されたことが次の調査で改善され、調査モニターの方だけでなく、他のお客様からもお褒めの言葉を頂くことがありま す。このような成功体験が出てきた店舗ではCS活動の“やらされ感”はなく、職員が自発的に楽しく取り組んでいるような気がします。


MSRの客観性について

MSRは、調査モニターの方がたまたまある日ある時間に店舗に行きますから、繁忙日で混雑していたり、昼食時で 職員が手薄だったり、状況は当然違います。そのような調査手法がどれほど役立つのか当初は疑問がありましたので、最初は4店舗から始めて効果を見極めなが ら、上手くいけば徐々に活動を拡げていくことにしました。

しかし、4店舗で5ヶ月に亘ってMSRを実際にやってみると、不思議なことに共通項がたくさんありました。「入 店しても誰も気付いてくれない」、「窓口で立って説明を聞かされた」、「商品説明に入ると何度も後ろに資料を探しに行って待たされた」など、各支店とも大 体同じことを指摘されていました。また、接客対応だけでなく、「どの番号札を取っていいのか分からない」、「壁が汚れている」、「ポスターが日焼けしてい る」、「照明が暗い」などの意見もありました。この他、商品内容、品揃え、店舗レイアウト、業務の仕組みなど、本部でフォローアップすべき指摘もたくさん ありました。これらを一つずつ改善していけばCSは必ず向上すると思い、今も継続して取り組んでいます。

お客様に分かりやすく情報をお伝えするための取組み。他にも「あいさつリーダー」を決めたり、「気づきメモ」を共有するなどしてCS活動を進めている。


MSRの推進体制

MSR導入店舗は当初の4店舗から16店舗に増やしました。当金庫は全60店舗を4ブロックに分け、各ブロック長がそれぞれ4店舗ずつMSRの推進を担っています。ブロックごとの情報共有会を開催することで、他店の良いところを取り入れてCS活動の効果を高めています。

また、「他店ではこんなに素晴らしい活動をしているので、負けないようにしなければ」という良い意味での競争意識が出てきて、モチベーションUPにもつながっています。

当金庫では、伝統的に人材育成に力を入れており、バブル経済崩壊後の経営環境が厳しい時期においても、人に対す る投資は絶対に減らさないという方針をとってきました。12月や3月などの業務繁忙月を除いて、月末・月初の週を除く火・水・木曜日には、大体何かの研修 を行っています。MSR活用のための研修もその中に組み込んでおり、研修を楽しみにしている職員も多くいるようです。MSRの効果を高めるためには研修や 情報共有会の開催によって全員が意識を高めることが重要なポイントになりますが、店舗業務に支障をきたすことでES(従業員満足)が低下しないように、開 催日時には特に気を遣っています。


CS向上を目指す風土づくり

CSは事業計画に継続して掲げているメッセージです。預金や融資は獲得すればすぐに数字として成果が見えます が、CS活動の成果はなかなか数字となって表れてきません。それだけに取り組みを継続する難しさを感じるわけですが、それを支える環境づくりをするのが本 部の役割だと思っています。業務推進部のブロック長にも協力を得て、店舗指導の際には「忙しいけれどCSを意識しよう」ということを伝えてもらっていま す。また、掛け声だけでは成果は期待できませんので、 MSRというツールを用いて日々のコミュニケーションを通じたCS意識の定着を目指しています。

お客様が金融機関を選択するポイントは、商品・サービス内容、品揃え、金利・手数料等の条件、営業時間やATM 等の利便性など様々です。店舗の立地やレイアウト、駐車場などハード面ももちろん大事で、お金を掛ければある程度改善できます。しかし、ソフト面はそうは いきません。金融機関はお金や個人情報を扱うためミスが許されませんので、ついつい事務処理ばかりに気を取られがちです。しかし、金融機関の店舗には小売 業や飲食業などと同様にたくさんのお客様が訪れます。「店舗=セールスプロモーションの場」であるということをもっと意識して、接客応対に力を入れなけれ ばならないと思っています。


選ばれる金融機関を目指して

全国に277信用金庫がありますが、他の金融機関と競合の激しい都市型の信用金庫や、地場産業に根ざした地方の信用金庫など、その立地によって経営環境は 様々です。当金庫は横浜市を中心とした神奈川県東部に支店があります。横浜市が抱える人口は367万人、依然として新興住宅地を中心に人口増加傾向にあり ます。産業も活発で市場としての魅力が高いため、メガバンクから地方銀行、政府系金融機関、ゆうちょ銀行まで一通りの金融機関が揃っており、お客様はそれ らを自由に選べる状況です。だからこそ、横浜信用金庫を積極的に選んでもらえる理由と認知が重要だと思っています。


ジェリービーンズ活動

横浜信用金庫では、地域に対して様々な貢献活動を行っている。横浜の価値を高めるためのマーケティング活動である「横浜ジェリービーンズ倶楽部事業」もそ の一つ。横浜の魅力を伝える地域情報誌「横浜ルネサンス(写真左)」の発行や、横浜への集客を狙って市内各所で開催するコンサートの企画・運営が主な活動 だ。横浜信用金庫はこれらの活動をCSR(企業の社会的責任)活動と捉え、本業の一部として実施。市民と一緒になって地域を盛り上げている。


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