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MSRを活用してQSC+Tをチェックすることで 居酒屋業態の基本を徹底して磨き続ける

株式会社鳥貴族

1985年の創業後均一価格を導入、現在280円(税抜)均一を掲げて東名阪の3エリアに500店弱(2016年6月現在)を展開する焼き鳥専門店「鳥貴族」。飲食店の基本であるQSC(クオリティ・サービス・クレンリネス)にこだわり、早くから覆面調査を導入。2年前からはミステリーショッピングリサーチ(以下、MSR)を利用して各項目に具体的・客観的な指標を設定し、その徹底に取り組んでいる。ユニークな業態ならではのMSR活用について、株式会社鳥貴族 代表取締役社長の大倉忠司氏、QSC推進部ディレクターの高田哲也氏にお話を伺った。
※QSC+Tとは・・・Q・S・C(Quality=品質、Service=サービスCleanliness=清潔さ)+T(Time=提供時間)

御社では以前から覆面調査を利用されていますが、導入のきっかけを教えてください。

高田氏:「店舗のQSCの実態を知りたい」というのが最初のきっかけです。鳥貴族は弊社直営店の他にTCC(鳥貴族カムレードチェーン)と呼んでいるFC店がありますが、特にこのTCC店についてはどういうQSCでお店を運営しているのかを把握する方法がありませんでした。そこで、調査会社に各店舗のQSCに関する調査レポートをお願いしたのが、そもそもの始まりです。ただ、最初のレポートは感想文に近い主観によったものでしたので、QSCの客観的な基準づくりをするために調査項目を再設計しました。そして「この内容であればTCC店だけでなく直営店でもやろう」ということになり、最終的には全店舗で1ヶ月に1回の調査を実施するようになりました。

お話をお伺いした、同社代表取締役社長 大倉忠司氏


もともとは他社様で実施されていた調査を、約2年前から弊社に切り替えていただきましたが、弊社を選んでいただいた理由はどのようなものですか。

高田氏:以前の会社はアナログ形式のレポートでしたので、集計やフィードバックを全て手作業でやらなくてはなりませんでした。業務量が膨大になりますし、その中でやはりミスも出てきます。一方で店舗数は増えていき、「このままでは無理だ」と、コンペ形式でいくつかの会社にお声がけさせていただきました。その中でMS&Consultingさんを選んだ理由は、デジタル、webでのレポート運用ができる会社であるということはもちろんなのですが、経営理念がもっとも合致したからです。CS(顧客満足)単体ではなく、ES(従業員満足)を起点としてCSを捉えておられ、ES向上のためのアプローチも手掛けていらっしゃる会社だということが大きな決め手となりました。

大倉社長:「ESがあってこそCSにつながる」「従業員が幸せでなければお客さまを幸せにできない」というのが、弊社の経営の根底にある考えです。経営観、人生観の話になってしまいますが、私は「自分が一生の間に出会う方々に幸せになってほしい」「そうした方々が幸せでなければ自分も幸せになれない」という思いを非常に強く持っています。それが会社の目的であり、私の目的でもあります。
ですからMSRに限らず、従業員のためにより働きやすい職場、みんなが幸せになれる職場にしたい、あるいはTCCの皆さまに成功してもらいたい、幸せになってもらいたいというのが全ての取り組みの前提にありますので、MSRに関しても、ただ調査ができれば良いというのではなく、その根底にある理念について共感できることを重視しました。

同社 QSC推進部ディレクター 高田哲也氏


弊社のMSRを導入された、ご感想をお聞かせください。

高田氏:調査をMS&Consultingさんにお願いするようになって最大の利点だと感じているのは、競合他社との比較ができる点です。これにより、私どものビジネスモデルの機会点(弱み)が明確になってきました。
たとえばQSCに関わる点数は競合他社と比較して決して高い水準ではないのですが、対して再来店意思や紹介意思の点数は高い。つまりブランドロイヤルティは高い状態にあることがわかりました。この理由については、280円均一という価格に対してお客さまのご期待以上の付加価値を提供できているのではないかと解釈しています。

大倉社長:客単価を上げれば上げるほど、商品以外の付加価値をたくさん作らないとお客さまに来ていただけなくなります。しかし、その付加価値というのは飽きられるものなんですね。ですから限界が来るんです。一方で、弊社は客単価2000円の中で居酒屋業態のベーシックを磨いていくことだけに懸けています。ベーシックな部分には流行がないので、飽きられることもありません。

社員にも「鳥貴族の一番のサービスは、280円でこの商品を売ることだよ」と話しているのですが、弊社には高級業態のような接客は無理ですし、するべきでもない。280円均一と、ベーシックを磨くこと、それが、弊社が守るべきことだと考えています。
MSRを導入することによって、ファーストオーダーの提供時間と満足度の相関が強いこと、そしてどのくらいの時間であればお客さまにご満足いただけるのかがわかりましたので、従来のQ・S・CにTimeのTを加えて、それぞれに具体的な指標を設けて取り組んでいます。

高田氏:たとえば、ファーストドリンクのビールなら2分、他のドリンクなら3分。焼き鳥は11分、サイドメニューは8分という指標を設けました。


QSCに関わる点数は競合他社と比較して高い水準にあるわけではないが、「紹介意思」「再来店意思」は圧倒的に高い。


オーダー品の提供時間計測や特定商品の写真撮影など、覆面調査には珍しい調査項目が多く盛り込まれているのが御社の調査の特徴ですね。

高田氏:ベーシックな部分のQSC+Tを磨くということで、生ビール、看板商品である貴族焼き、手の込んだサイドメニューについて、提供スピードや盛り付け状態を総合的に判断できるような項目を意図しています。

特に焼き鳥の焼き方のレポートは、皆よく読んでいますね。また生ビールに関しても全店を挙げて取り組んでいて、サントリーさんの「樽生達人の店」認定を、現在では90%の店舗が獲得しています。これも、メーカーさんとタッグを組んでの活動の他、MSRで撮影してもらった写真で確認できることが大きいです。生ビールのクオリティは非常に高い状態にあると自負しています。

大倉社長:一般的な総合居酒屋業態は、フードをリーズナブルにしてアルコールで儲けるような価格設定になっています。しかしそれでは、お客さまのニーズには応えられていないと思います。お酒を飲む方にしてみれば、やはり「予算内でビールを何杯飲めるか」は大事ですよね。ですから弊社はフードで利益を上げて、アルコールは安価に提供しています。これは原価率の低い焼き鳥だからできることですが、アルコールを安く提供できるということも弊社の強みですから、その部分の品質にもこだわりたいということです。


現場でのMSRのご活用状況はいかがでしょうか。

高田氏:振り返りができている店もあれば、できていない店もあるというのが実情だと思います。でも、先日ご提案いただいたモバイルMSが導入されて、店長だけではなくパート・アルバイトのスタッフ全員がスマートフォンでレポートを見られるようになれば、よりMSRが身近なものとなり、振り返りや目標管理も徹底できるのではないかと期待しています。


MSRの点数と業績との間に相関は見られますか?

高田氏:毎年分析していますが、相関関係はあります。MSRの点数が高い、特に昨対比が上がっている店は売上も伸びていますし、ESも上がっていると思います。
QSCTで言えば、特にQとSの相関が高いですね。スピードは基準以上を超えるとあまり関係がなくなり、それよりも、おいしい焼き鳥を出すこと、残念なことがないようにすることが、再来店動機につながっています。
店舗間の比較だと、客数の多い繁華街の店舗の方が当然点数は低くなりがちです。ピークタイム中に来店されるモニターさんに完璧な応対をするというのは実に大変なことで、ローボリュームの店舗と比べるとおそらく10ポイント以上の乖離が出てしまうので、点数を単純比較してしまうと酷ですよね。繁華街で満席がずっと続く状態で年間平均160点を取るというのは至難の業で、それができている店舗には本当に頭が下がります。
ただそういう店舗の中には、店長のパーソナルスキル、パーソナルパワーだけで回しているところもありますので、それを組織の力で回していけるようにするのが今後の課題と認識しています。


QSCのQでは、「国産国消」というキーワードを掲げていらっしゃいます。

大倉社長:お客さまのニーズにお応えするということと、第一次産業、産地の支援につながるということの両面から社会貢献したいと思い、鶏肉は創業から一貫して国産でやってきました。
鳥貴族は焼き鳥専門居酒屋ですから、焼き鳥でナショナルチェーンに負けるわけにはいきません。また焼き鳥専門店にも「味・ボリューム・価格」の総合点では絶対に負けるわけにはいかないと思っています。それと、もう一つ大切にしていることは、従業員が誇りを持って商品を提供できるということです。従業員が冷凍品を後ろめたい気持ちでお客さまに提供するというほど不幸なことはないと思いますので。

国産の鶏肉を提供店舗でカット・串打ちして焼き上げる、こだわりの焼き鳥。


鳥貴族の特徴である均一業態を模倣する企業もありますが、どこも難しいようですね。真似ができない理由はどこにあるとお考えですか?

大倉社長:確かにリーマンショック後は参入企業様が増えましたね。ただ、弊社は30年前、景気の良いころから一貫してこの業態でやってきていて、業態に対する思いや志がそもそも違いますから。
リーマンショック後に、高級業態では売れなくなったから仕方なく低価格業態に来られた企業様ですと、社員の方も「こんな安売りの店に就職する気はなかったのに…」という後ろ向きな気持ちになってしまいますよね。一方で弊社は、全国にチェーンを展開して一人でも多くのお客さまに貢献したいという思いが先にあって、そのための手段としての均一業態です。30年間やってきたノウハウもありますし、スケールメリットもありますから、そうそう簡単に模倣できるものではないと思います。


最後に、今後の展開についてお聞かせください。

大倉社長:4年後の2021年7月期に、現在ドミナントで展開している東名阪の3エリアで1000店舗という目標を掲げています。今年7月末で500店弱ですから、今の倍の数字です。
ただ、弊社は現在ある居酒屋チェーン店の中では一番小商圏で成り立つ業態だと考えています。客単価を上げていくと、その分商圏を拡げていかないといけませんから。280円均一という弊社の強みを発揮し、ベーシックを磨くことによって、ブランドの根底にある「一人でも多くのお客さまに貢献を」という思いを実現していきたいと思います。


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※取材:有賀誠、宮本紗和
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。

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