「おもてなし」と「ホスピタリティ」の違い|HUGE新川社長に聞く1
オリンピック誘致の際、改めて脚光をあびた日本の「おもてなし」。改めて「おもてなし」とは何か? 2002年の日米首脳会談では会食の接客を担当、「サービスの神様」とまで言われた、株式会社HUGE 新川社長にお伺いした。
「おもてなし」とは何か
当社が大事にしている「HUGE10の約束」のひとつでは、「“おもてなし”とは、目を合わせる・ほほえむ・抱きしめる の受け渡し」と表現しています。これは、ニューヨークで高い評価を得ているレストラン「Union Square Cafe」のダニー・マイヤー氏の言葉を自分なりに解釈したものです。
人には、赤ちゃんの頃にお母さんから受けたことが原体験としてあると考えています。お母さんが赤ちゃんにすることは、「目を合わせる・ほほえむ・抱きしめる」です。だから、全てはここからだと思っています。まず、目を合わせる。すると、お客さまの気持ちが分かる。そして、ほほ笑んで、抱きしめる。「抱きしめる」は英語だと「ハグ(Hug)」、お客さまにハグの気持ちをもって接する。だから、お客様に愛情や真剣さが伝わるわけです。
「おもてなし」と「ホスピタリティ」の違い
チップの文化が大きく影響していると思いますが、欧米の「ホスピタリティ」は一般的にはもてなす側の人間がイニシアチブ(主導権)を取ります。それが普通なので、もてなされる側のお客さまも、そういうテンションでお店に来られます。レストランであれば「さあ、今日は何を食べさせてくれるの?」「今日はどう楽しませてくれるの?」と。
一方で日本のおもてなしは、必ずしも、もてなす側がイニシアチブを取るということではない気がします。例えば、トム・クルーズが京都の老舗旅館「俵屋」に泊まったときに、下足番の方がちょっとしたタイミングを見計らって靴を素早く磨いてくれて、さっと出してくれた。常に付かず離れずの距離感に感動したという記事を読んだことがあるんですが、こういうのはすごく日本らしいおもてなしだと思います。
僕は、おもてなしはお客さまが主役だと思うんですよ。付かず離れずの距離で、場合によってはずっと黒子に徹する。もちろんお客さまがそれを求めていらっしゃるようであれば、こちらから積極的に場を盛り上げることもありますが、日本のおもてなしというのは必ずしも「さあ、今日はサービスしますよ」とイニシアチブを取るということではないと思います。
僕が目指すのは、この日本らしいおもてなしです。おもてなしは、日本流に、海外のホスピタリティとは別方向に進化していき、それこそが日本にしかないカルチャーになっていくのではないかと思います。
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取材:株式会社MS&Consulting 渋谷行秀