紺認証取得を通じて、ホスピタリティの見える化 さらにはスタッフのやりがいアップにつなげる
株式会社鹿沼カントリー倶楽部
取材:渋谷行秀
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
※経済産業省が創設した「おもてなし規格認証制度」の審査には、弊社サービスの顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」が利用されています。
<おもてなし規格認証2019 紺認証取得事例レポート>
昭和39年に開場し、今年55周年を迎えるゴルフ場、株式会社 鹿沼カントリー倶楽部。小学館ビックコミックオリジナル連載中のマンガ「風の大地」の舞台でもあり、会員数は5000名と非常に多く、メンバー競技の参加率も高い。「おもてなし規格認証2019」で、ゴルフ場としては業界初となる「★★(紺認証)」(以下、紺認証)を取得した同社の、認証取得の目的、認定されるまでの背景やその効果について、同社 経営企画室リーダー荒川磨理氏にお話を伺った。
はじめに、おもてなし規格認証の取得の目的について教えてください。
弊社の経営理念に、“私たちを取り巻くすべての人々の笑顔を生み出すことをミッションとし、「また来たい」と思ってもらえるゴルフ場を目指す”というビジョンがあります。
また、以前に弊社社長がスタッフ一人ひとりと面談し、「何にやりがいを感じるのか」を聞いたところ、80%以上のスタッフが「お客様に喜んでいただいた時に一番やりがいを感じる」と答えたことからもわかるように、お客様の喜びや笑顔は、スタッフのやりがいにもつながっています。
経営理念の実現、つまりお客様がお帰りになる際に「また来るよ」と言っていただくためには、そして実際に何度もご来場いただけるような鹿沼カントリー倶楽部のファンになっていただくためには、サービス、そしてホスピタリティはとても重要です。おもてなし規格認証を取得することで、ホスピタリティの見える化、さらにはスタッフのやりがいアップにつながるのではないかという狙いから、おもてなし規格認証の取得に取り組もうと考えました。
2013年から毎月実施されている顧客満足度調査「ミステリーショッピングリサーチ」の点数が右肩上がりで上昇していますがその秘訣は何でしょうか?
弊社では、ビジョンにある「また来たい」と思ってもらえるゴルフ場を実現するために、信条である「12の約束」を実行しています。この「12の約束」は、私たちが何を考えどのように行動するか、日々の活動の中心となる約束をまとめたものです。
これらのビジョンや信条が組織内にきちんと浸透している点や、お客様の声をきちんと拾い、対応していることが、お客様の満足につながっているのではないかと思います。
経営理念の浸透のために、具体的にどのような取り組みをなさっていますか?
一つ目は、毎日の朝礼で、「12の約束」の体験談を持ち回りで発表しています。朝礼で発表した内容は日報の一部と報告書してグループウエアに掲載し、朝礼に出られなかったスタッフにも共有する他、特に良かった事例を本部が毎月ピックアップして「私が体験した12の約束」としてまとめ、給料袋の中に同封しています。さらに年に一回、最も素晴らしい事例を「ベストオブ12の約束」として全体研修会の場で表彰しています。社員・パートさん関わらず全員が対象の賞で、これに選ばれることが、取り組みの大きなモチベーションになっています。
二つ目は、「お客様の声カード」です。こちらは、お褒めの言葉だけではなくクレームも含めたお客様からの声をスタッフが拾い上げ、カードに記入して共有する取り組みです。もちろん共有するだけではなく、改善する必要があるものは「対応」を作成し、改善に努めています。
取り組みを始めた当初はそれほど提出がありませんでしたが、続けていく中で、日ごろお客様と直接接しない部署(調理・コース管理・営繕など)へのお褒めの声をカードに記入することで、それら部門のスタッフのモチベーションがアップするということがありました。それをきっかけに、以前は耳を傾けきれていなかったお客様の小さい声にも意識を向けて、逃さずに聞けるようになりました。こうしたこともあり、取り組みを継続するにつれてカードを提出するスタッフも増えていき、今では年間2500枚までになりました。また、カードを書くために、スタッフ同士はもちろん、お客様とのコミュニケーションも深まり、お客様の声をより深く聴けるようになりました。今では、メンバー様だけではなくゲストの方のお名前も覚えて、コミュニケーションをとりながら、日々の改善施策に活かしています。
経営理念の浸透に朝礼の場を活用されているとのことですが、サービス業では、全員が集まって朝礼を行うのも一苦労かと思います。
確かに、ゴルフ場はサービス業であり、常にお客様と接しているため、スタッフ全員が集まれる時間はほとんどありません。そのため、十数年前に「毎朝10時から朝礼をやろう」と決めたときには、各部署から「そんなの無理だ」「忙しいのに、そんなことをやっている場合じゃない」といった意見も少なからず出ました。しかし、たとえ参加できるのが少人数でも、やると決めたからには毎日実施し、各部署の情報を共有し、日々の営業成績や目標なども伝えることで、徐々に浸透していきました。
今では、朝礼を「やらされている」と思っているスタッフはいません。朝礼は「やって当たり前」で、逆に「やらないと、情報が明確にならず大変だ」というものになっています。
今回、認証取得にあたって4名もの方が日本ホスピタリティ推進協会のホスピタリティコーディネーターの資格を取られていますが、取得した意義はどんなところにありましたか?
紺認証資格取得のためだけであれば1名だけで良かったのですが、鹿沼カントリー倶楽部では、それぞれ別の立場から組織全体にホスピタリティを浸透させるために、4名が各々の理由で取得することにしました。
まず、代表の福島は、経営者として強いリーダーシップを持ち、ゴルフ場の全スタッフを引っ張っていくために。ゴルフ場の責任者である支配人の神山は、ゴルフ場全体をバックアップしつつ、スタッフの成長につなげるために。営業マネージャーの米谷は、持ち前の高いホスピタリティ力を活かして、ゴルフ場のスタッフを支えるために。そして本部・経営企画室の私は、経営面を考慮しつつ、ゴルフ場の外側からバックアップできるようにするためです。
ITの強化にも取り組まれていると伺いました。
レストランや売店の商品受発注をペーパーレス化する「インフォマート」を導入しました。導入当初は戸惑うこともありましたが、今では棚卸までインフォマートでできるようになりました。また、45ホールのすべてのカートにタブレット型のカートナビを導入することで、手書きのスコアカードを無くし、コンペの集計も簡単にできるようになりました。
現在取り組んでいるものとしては、顧客管理を目的に昨年4月に導入したセールスフォースがあります。今はまだコンペ管理のみを行っている状態ですが、さらなる活用のため、現在プロジェクトチームを作って取り組んでいます。
今後の課題としては、業務管理システムと顧客管理システムの連携があります。どのように連携させていくか、まだまだ課題が残っている状態ですが、二つのシステムを連携させることで、より良い顧客管理につなげていけるように、取り組んでいく予定です。
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