【第8回クオリティサービス・フォーラムレポート】 美容業界に新たな価値を創造する
株式会社SARA
URL:http://www.sara-group.jp/
代表者:小林 治 代表取締役
所在地:福岡県福岡市中央区今泉1-12-8 天神QRビル4F
設立年月:1993年2月
事業内容:美容業
展開するブランド:SARA、SARA BEAUTY×LIFESTYLE
社員数:正規130名
※『季刊MS&コンサルティング 2015年冬 特別号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、講演(掲載)当時のものです。ご了承ください。
リピート率が全体の課題に
美容室SARAは、福岡と山口に計8店舗を運営しています。ネイルやアイラッシュはもちろん、カフェの併設などにも取り組んでいます。また、私自身は4年前にNPO法人日本ビューティ・コーディネーター協会(以下、JBCA)を立ち上げました。ビューティ・コーディネーター(以下、BC)の認定資格は、この4年で約1万人が取得しています。
美容業界の環境は、残念ながら年々厳しくなっています。市場規模は2000年の1.8兆円をピークに縮小し、現在は1.6兆円弱です。一方で、かつてカリスマ美容師ブームが起こっていた頃に職を得た、特に男性美容師の独立などから、実は店舗は増え続けています。美容室が増えているのに、全体の売上が減少しているということは、店舗当たりの収益が非常に小さくなっているということです。
また、美容師のなり手も減少傾向にあります。ピーク時では年間2万8,000人が美容師資格を取得しましたが、今は1万7,000人と、1万人以上減少しました。離職率も非常に高く、学校を卒業して3年で50%の人が美容師を辞め、10年経つと1割しか残らない業界なのです。
技術自体は、どこへいっても非常に上手で、差がありません。MSRのデータもヘアスタイルの提案やカット技術に対する満足度は高く、平均して8割程度です。
それなのに、なぜか再来店が難しい。リピート率の低下が業界全体の大きな課題でした。さらに、来店サイクルも低下しています。今まさに、そこから脱却しなければいけない。新たな価値の創造を模索すべきと立ち上げたのが、JBCAでした。
4年で1,000店舗が加盟
今、美容室に求められているのは、コミュニケーション力です。日本人の平均年齢46歳に対し、美容師は離職率の高さもあって、平均年齢が29歳と若く、お客さまに合わせた対応力が不足しがちです。特に今後は、より大人の世代へのコミュニケーション力が必要になります。
また、これまでは美容師個人にお客さまが付いていましたが、それも少しずつ変わっています。現在はスタイリストとアシスタント、それからネイリストやアイリストなど、お客さまのニーズに基づいたチーム編成が必要です。
そのお客さまのニーズも、どんどん変化しています。メインターゲットが結婚や出産を経て子育て中などの年齢層になってくると、提供するメニューも変わってきます。そうした状況と人口が増えず集客が難しいことを合わせると、既存のお客さまにどうやって1年間の美容料金を上げていただけるかを考えることが我々の焦点になります。
そうした考えに基づき、チーム構築を担う役割が必要だとして考案したのが、BCです。私が注目したのは、主に中規模以上の美容室における受付業務、レセプションです。これを担うスタッフに、美容やカウンセリングの知識を持ってもらい、お客さまとの接点をより強くしてもらえないかを試みました。
JBCAは、今では加盟店舗が1,000店舗になりました。私自身、このスピードには驚いていますが、従来のままでは美容室の経営が困難であること、その現状に何らかの活路を見出したいと多くの方に賛同をいただいた証拠だと思います。
カウンセリングの専門性
BCが具体的に担うのは、まずはコミュニケーションの部分です。美容師に直接話しづらい相談を受けるほか、ヘアだけでなくライフスタイル全般において、カウンセリングを通してトータルビューティを提案します。その日の美しさだけでなく、生活の中で美容の価値をどれだけ意識するか、ライフスタイルにおける美の満足値を上げることにシフトチェンジしたいと考えました。
生活の中で美を意識し、気持ちも前向きになり、仕事への活力も見出していただく。そうした働きかけを続けた結果、BEST BEAUTY COORDINATOR AWARD 2014の予選として2014年6~7月に実施したMSRにおける再来店意向が、BCの対応がなかった場合は45%であったのが、BCの対応があった場合は54%、さらに対応が良かった場合は68%にまで伸長しました。また、ある店舗では90日以内の新規再来率が27.8%から3カ月後には42.8%へと大幅に向上しました。さらに、トータルビューティの提案の一環として商品販売にも注力することで、業績にも貢献するようになりました。
この資格は、キャリアパスの充実にも活かせます。結婚や出産で辞める人も多い業界ですが、カウンセリング中心の業務ならば復帰もしやすいはずです。また、他の接客業などから美容業界への転向も、美容師という国家資格がなくても専門性高く美容に携われるので、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。
美容業界は今、大きな変革期を迎えています。これからはさらに顧客の声に耳を傾ける仕組みをつくり、ネイルやアイラッシュなどビューティ全般を美容業界に取り入れて、V字回復を図りたいと考えています。女性を美しくする、その現場で働く人が元気になることで、少しでも社会への貢献にもつながればと願っています。