【第3回外食クオリティサービス大賞レポート】 離職率4%を実現させる価値観の共有



株式会社まる

本社所在地:千葉県茂原市六ツ野2931-1
サイトURL:http://www.web-maru.com/
設立:2001年/資本金:1,000万円/店舗数:8店舗(喰い処だいにんぐ まる。、一軒家だいにんぐ まる。、さつま鶏丸
経営理念:「食への挑戦・人間形成の追求」


※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。

約1年で2店舗から6店舗という急速な多店舗化を行うことで現場力が低下し、一度は常連客を失いかけた「株式会社まる」。復活への第一歩は年度計画の見直しだった。 年度計画実現のために必要な取り組みを絞り込み、難易度の高いオペレーションを徹底的に実行することで、戦略的なリピーター獲得の仕組みを作り上げている。それを可能にしたのは、経営理念の浸透と価値観共有であった。
計画達成のためのユニークな取り組みが目を引く、株式会社まる。その背景には、考え抜かれた理念と理念浸透の仕組みがある。

理念・価値観

株式会社まるは、300年続く企業を目指し、理念浸透と、競合に真似のできないような核となる強みを磨くことの2点を重視している。そのために、決して揺るがない経営理念を高山社長自身が3年掛けて作り上げた。 社長は毎日朝起きてミッションを確認し、朝礼毎にパートナー(※株式会社まるでは、アルバイトのことをパートナーと呼んでいる)まで含めて理念についてのディスカッションを行う。また、社員は毎週火曜日のミーティングで理念に関する3分間スピーチを行っている。さらに、新人は全員参加が条件となっている、パートナー向け理念勉強会を3ヶ月おきに開催。このような徹底した理念教育の結果、全社員が2500文字の長文となる経営理念を暗唱できるほどに理念が理解され、離職率4%を実現している。


経営計画

年度方針と経営計画は、店長を含む幹部陣の合宿で作られる。経営理念から年度方針、行動計画まで全てが結びついており、決定したアクションに徹底して取り組んでいる。それができるのは、核となる強みを強化するための、絞り込まれた方針と明確なアクション設定があるからだ。


業態コンセプト

客単価3300円で楽しめる和仏創作料理が売り。大手進出の少ない郊外立地で、地域密着型の創作料理居酒屋を実現するため、あえてチェーン化するのではなく、立地に合わせて少しずつ業態を変えている。


オペレーション・サービス

安全で美味しいものを開発し提供し続ける「食への挑戦」という理念の下、「料理を最大限にアピールするための接客」、「その接客を徹底するための仕組みづくり」を重視。効率を上げるという視点からではなく、リピートして頂くためという視点からオペレーションが考えられている。例えば、電話予約時の詳しいヒアリング、名前で呼ぶ接客、全卓へのお礼のご挨拶、フェアメニューによる次回予約のお勧め等、一朝一夕にはいかない手の込んだ接客サービスを実施する。

中でも、営業中にお客様の次回来店予約を獲得する取り組みがユニークだ。なぜ、平均一日一件もの予約が決まるのか。その裏では、店長(または店長代理)が全卓を回り、お客様に直接感謝の気持ちを伝え、加えて、スタッフが予約限定のフェアメニューを直接お客様にお勧めしている。このように個々のお客様とのコミュニケーションの密度を高くしていることも成功要因と言えるだろう。このフェアメニューは月間限定で、しかも完全予約制なため、お客様にとっての特別感は更に高まり、予約獲得を後押しする。


マネジメントの仕組み

取り決めたアクションについて、毎日実施率を管理している。また、業績管理のために情報システムを活用し、日次決算に加え、月次で約6時間に及ぶ業績会議を行っている。飲食店経営においてはP/Lが重視されるが、全店長がB/Sも読めるようになっており、経営スキルを磨くことも怠らない。

また、毎日の理念教育に基づく組織力の高さを前提に、オペレーションはマニュアルを作成しなくても実行できるように教育している。採用は本部ではなく店長が自ら行うことで責任感を高めている。その後のパートナー評価は店長が、社員評価は社長・専務が行うという普遍的な評価制度だが、毎月密度の高い個人面談を実施すると同時に日々の価値観共有に力を入れているため、評価に対する納得感も高い。

このような、理念浸透から計画づくり、そして毎日の確認共有へという堅実なプロセスが、高度なオペレーションを支えているのである。

09年8月には、創業当時より標榜していた「一斉独立」の制度により創業メンバー5人が独立する。人が抜けるのは大きな負担となるはずだが、理念の実現に近づければ良いと考える、ブレのない組織だ。その徹底振りこそが、社員の主体性を引き出す一つの鍵ではないだろうか。

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