店舗開発の心がけ3ヶ条
リーテイルブランディング株式会社
東京都港区北青山2-12-16 北青山吉川ビル9F
会社ウェブサイト:http://www.retail-branding.co.jp/
『季刊MS&コンサルティング 2009年秋号』掲載
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
同じ場所、同じ設計、同じ造りの店舗。やり方とパートナーの選び方次第で、初期投資額は50%以上変わることもあると言う。店舗オープンを考える時に必ず考慮しなければならない3ヶ条を、これまで800店舗のオープンを手掛けてきたコンサルタント島田平信氏に伺った。
(1)初期投資額を抑え込む
スケルトン(※1)でも居抜き(※2)でも、チェーン展開をしていくに当たって必ず考慮しなければならないのは、投資回収です。そして、投資回収に最も大きな影響を及ぼすのが初期投資。周辺業務に無駄にお金を掛けず、建物や内装をいかにコストダウンするかということがポイントとなります。
(※1)スケルトン:多くは、壁と天井のみで建物躯体以外何もない状態の物件。
(※2)居抜き:店舗の内装や厨房設備が残っている状態の物件。
出店する時には、不動産を探し、設計・デザインを行い、建築するという流れが一般的ですが、もし、同じ建物を同じ場所に建てたとしても、依頼する業者や発注の仕方によって、料金は2倍程違ってきます。しかし、ほとんどの場合、不動産業者も施工業者も、付き合いで依頼するか、以前工事を発注した業者に依頼することになります。そのような状況が思い当たる場合は、初期投資額の見直しができるかもしれません。
初期投資額がこれほど違ってくる理由は、大きく2つあります。まず、業者側の設備や備品の調達先です。工場を自前で持っているのか、外注で仕入れているのか。その場所は日本なのか、中国なのか。さらに、使用する部材はいくつの候補から見積もりを取っているのか、というところから差が生まれます。
次に、発注する側と業者側のスケールメリットです。1、2店舗の出店であれば、他の工事案件と合わせるなどしてスケールメリットを発揮できるよう工夫して発注することが有効です。
例えば、弊社では過去800店舗、色々なチェーンの工事を手掛けていますが、弊社の発注する施工業者には複数の工事案件を発注しています。そのため、1店舗の出店であってもスケールメリットを発揮することができます。さらに、商社が母体ゆえに様々な建材メーカーとの取引があるため、使用する部材に関しても、設計仕様に適した最も安い部材を施工業者に紹介することが可能になります。
(2)本部体制の肥大化を防ぐ
店舗の出店には、大変なパワーを必要とします。物件を決めて、家主との打ち合わせを行い、店舗デザインを検討し、工事業者を選定するために相見積もりを取って、入札。店舗開発に気を取られて、既存店の運営サポートが手薄にならないように留意する必要もあります。それを何店舗もやっていこうとすれば、それだけ本部体制を強固にしていかなくてはなりません。
しかし、出店は、多い時もあれば少ない時もあります。出店が重なる時に合わせて人を増やしてゆけば、いずれは本部コストだけが膨張してしまうことになります。本部の人数を最小限に抑え、本部は自社のノウハウ作りを行う。出店に伴う業務は、アウトソースすることによって、適正な価格、且つ適切な人員体制で行うのが、今の時代に合ったスタイルと言えると思います。
(3)儲かる店作りを意識する
当たり前の話ですが、儲かる店にするためにはどうすれば良いかという視点で出店コンセプトを考えなくてはなりません。品質、価格、雰囲気、サービスから成るお店のバランスがお客様から見てしっかり取れていないと、お客様が入ってきません。一方、お客様が満足できる店を作っても、初期投資を掛けすぎて採算が取れなくなってしまうことがあります。実は、こうした例は非常によく起こるのです。
先日、しゃぶしゃぶを展開するあるチェーンから、売上不振のためある店の売却をしてくれないかという相談を受けました。弊社がブランド開発に携わったしゃぶ楽と比較すると、定価はしゃぶ楽よりも少し高いが、その分、味は私ぐらいの年代の人が食べても美味しい。たれは何種類か用意されており、提供の仕方も凝っている。内装は個室風で、店の名前やサインにも高級感が漂っている。それに対して、食べ放題となるとたったの1,480円。さらに聞くと、店のターゲットは立地特性でもあるファミリーや若い女性層だそうです。しかし、実際にアンケートを取ってみると、味に関してあまり良い評価を得られません。万人受けする無難な味のほうが合うのでしょう。価格、立地や店の雰囲気、ターゲットなどを間違えてしまった典型的な例です。
このようなミスマッチを事前に防ぐためには、業態コンセプトや立地等を意識した店舗開発が必要になります。弊社では、事業開発から、立地開発、メンテナンスや資産管理、食材調達や物流、ブランド戦略、本部支援業務まで広くサポートしており、過去何百店舗、何十のチェーン本部のサポートを手掛けてきていますので、店舗出店に伴う広く深い周辺ノウハウを持って、アドバイスや提案が可能です。
多店舗展開をするにあたって、店舗ビジネスには必ず通過しなくてはならないいくつかの普遍的な問題が存在する。それを7つの分野に体系化したのが7ソリューションサポート体制だ。リーテイルブランディングは、事業が草創期・成熟期といずれの成長段階にあっても、多店舗展開における課題解決のサポートが可能だ。
店舗開発事例:株式会社アースリレーション 「しゃぶ楽」
FC展開を見据えた業態設計を少人数体制でスタート
株式会社アースリレーション
名古屋市名東区牧の原1-1005
リーズナブルなしゃぶしゃぶ店「しゃぶ楽」の出店を加速する株式会社アースリレーション(以下、アース社)は、事業開発の当初からFC展開を視野に入れ、リーテイルブランディング株式会社(以下、リーテイル社)と二人三脚で事業を進めてきた。業態開発の経緯を長木幸一社長に伺った。
「しゃぶ楽」業態を発案した理由について長木幸一社長は、「しゃぶしゃぶは、いわば憧れ的な食べ物で、料金が高く気軽に食べる外食ニーズに応える業態ではなかった。ただ、名古屋に小鍋で提供して繁盛している店があったので、低価格のFCパッケージを実現すれば、将来、市民権を取れると思ったのがきっかけでした」と話す。
事業推進のパートナーとして選んだのが、リーテイル社だった。それは、当時よりアース社の開発体制が社長以下2人と少なかったことと、リーテイル社が業態作りから立地、加盟店開発などまでトータルコーディネイトする実績に魅力を感じたからだ。
まず、しゃぶしゃぶ店のマーケティングを依頼し、各店の商品力や売上、サービスといったデータを基に、具体的な提案がされた。価格は家族4人で食べて1万円前後、つまり1人前2,000円~2,500円と設定。そのためにはコストの低減と、いかに付加価値を付けて差別化を図るかがポイントだった。
しゃぶしゃぶは牛と豚、鶏の3種の品揃えとし、食材調達はリーテイル社のネットワークを活用。例えば鹿児島の黒豚は、飼育状況や食肉加工の工程などを現地で確認して決めた。また、加工品の仕入先の開拓もリーテイル社に依頼し、化学調味料を極力使わないオリジナルな味付けで特徴を持たせた。
こうして、食材には徹底してこだわりつつも、3工程以内で調理できる効率のいい商品に仕上げた。店内では揚げるだけといった作業のため職人はいらず、またホールとキッチンが連携できるオペレーションとしたため、少ない体制で運営でき、FLコストは54%と低い。居抜きでは加盟金を含め初期投資が5,000~6,000万円で、2年前後で投資回収できる魅力的なビジネスモデルだ。07年6月に直営店2店を同時オープンし、「いきなり爆発的な売上」(長木社長)を上げ、同年 月にFC1号店を開いた。なお、加盟店は直営店で2週間の店長教育、さらにオープン後はアース社社員による2週間のOJT教育と、バックアップ体制は充実している。
現在は直営4店とFCが6店。今後は、リーテイル社の加盟店開発のノウハウを活用し、全国70店体制と、株式上場も視野に入れているそうだ。