覆面調査の結果が見られるアプリ「MSナビ」の活用で お客様満足度、前年比112%を達成
株式会社タイソンズアンドカンパニー
取材/砺波 敬之 文/宮本 紗和
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
T.Y.HARBORなど14ブランドを展開する株式会社タイソンズアンドカンパニー。同社は、顧客満足度調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下、覆面調査)の結果を共有できる無料アプリ「MSナビ」の活用により、覆面調査の年間総合得点平均が業界平均を上回るスコアへ。アプリを使ったコミュニケーションの活性化が秘訣だったと話す、カスタマーマネージャー戸田朱美氏、カフェ&ベーカリー事業部統括マネージャー廣井佐知子氏、ブレッドワークス天王洲店長岡田恵里香氏に、店舗でのお取り組み事例を伺った。
店舗スタッフ数の増員に伴う、スタッフ教育のばらつきが課題でした
--お店の概況について教えてください。
廣井氏:2017年8月に店舗リニューアルをして、これまであったベーカリーカフェ「breadworks」に、初の試みとなるデリとケーキショップ「Lily cakes」が加わり、スタッフ数は2倍となり、日々のシフトにはホール8人、製造13人が入る規模になりました。
戸田氏:リニューアルオープンから半年くらいが経ち、オペレーションが安定し、スタッフも定着し始めた頃から、覆面調査をきちんと活用できるようになりました。それまでは、「(前月の調査結果から)次回はこんなコメントをもらえたらいいよね」、という話だけで終わっていましたが、MS&Consultingさんから「御社の場合、入退店時の挨拶ができるようになれば、もっと覆面調査の点数は上がる」というアドバイスをいただいてからは、毎月目標を決めて取り組むようになりました。
カスタマーマネージャー戸田朱美氏
印刷や回覧などの手間なくペーパーレスで、本部の管理が楽になりました
--「MSナビ」をスマホで活用することで、何か変化はありましたか?
戸田氏:本部としては、紙で共有していた頃とは違い集計が楽になりました。スマホですぐに前月の覆面調査の結果を閲覧できるようになり、誰がどういった考えを持っているか一目瞭然なので、本部と各店舗の間のコミュニケーションも円滑になります。
また、現場スタッフも結果に触れやすくなり、お客さまの満足度に対する意識がかなり向上した1年となりました。特に、普段お客さまと関わることが少ない製造側の意識が変わったことは大きな成果であり、その一助となったMSナビは大変ありがたいツールです。
カフェ&ベーカリー事業部統括マネージャー 廣井佐知子氏とブレッドワークス天王洲店長 岡田恵里香氏
スタッフ全員が集まることが難しい組織(シフト制)でも、スピーディに店舗のCS状況を把握でき、スタッフ同士のコミュニケーションの活性化にもつながりました
岡田氏:店舗スタッフの参加意欲はかなり高くなったように感じます。これまでも覆面調査の結果や振り返り、月間目標を立てていましたが、出勤時や帰宅時のちょっとした空き時間にすぐに閲覧ができるようになったことで、「見た?(調査項目の)輝いているスタッフに○○さんのお名前があったね」などと日常の会話で話題がでるようになりました。覆面調査の結果が出たらスマホを見てからシフトに入る、というのが当たり前のようになってきたのはとても嬉しいです。
--紙からスマホへの移行をスタッフはすぐ受け入れてくれましたか?
岡田氏:スマホへ切り替えた当時は、スタッフにアプリをダウンロードさせ、操作に慣れさせるまでに少し時間がかかりました。最初は、出勤した始めの15分くらい時間をとって、「一緒にここでダウンロードしよう」とか、退勤前に「ログインしてから帰ってね」と個別に声をかけていきました。
--毎月目標を立てていらっしゃるとのことですが、MSナビを活用し具体的にどのような取り組みをされたのか教えてください。
戸田氏:月に1回、店長と店舗の社員、廣井と戸田の4人でMTGをしています。その後、各店舗で覆面調査の結果から月間目標を作成し、社内SNSで本部に報告させています。
スタッフをやる気にさせる取り組み
岡田氏:月間目標を店舗スタッフに意識してもらうため、以下のような取り組みをしました。たとえば、クリンネスが目標の月は、店内を綺麗にすることが好きな社員をリーダーに充て、あと2人アルバイト・社員関係なく、リーダーにサブリーダーを指名させました。店長から言われるより、意欲的な若手社員と一緒に取り組む方が自然とメンバー同士の会話が増えますので、今まで関心がなかったアルバイトも「やらなきゃ」という気持ちになるようです。このように、目標を決めるだけでなくスタッフに役割を与えることで、徹底度合いが高まり、翌月の覆面調査の結果にも関心が向くようになりました。
覆面調査の結果を見られるアプリ「MSナビ」により、印刷や回覧の手間なくスピーディに全スタッフが結果を把握できるように。いいねボタン機能によりスタッフ同士のコミュニケーション、改善意欲向上ツールになる(画像はサンプルです)。
お客さまの満足度を上げる取り組み
岡田氏:覆面調査の結果から、当店のレイアウトが複雑なこと、またそのために入店時に「どのスタッフに声をかければよいかわからず困る」と感じるお客さまが多いことがわかりました。そこで、“入ってきた瞬間の声かけ”というのが当店では一番重要だと考えました。逆に、ここの印象がよいと、“また来たいと思う割合”(再来店満点比率)も高いという分析結果から、まずは「作業しているときも入り口を気にしよう、挨拶をしよう」、という目標を掲げました。しかし、この取り組み後の調査結果のコメント欄で「挨拶はしているけれど、ただ言っているだけ」といったご意見をいただいてしまいました。そこで「顔を上げてきちんと挨拶することを徹底するにはどうしたらよいか」をみんなで考えました。そうして毎日ローテーションで「挨拶隊長」を任命する、というルールを作りました。ここで重要なことは、どのポジションのスタッフに挨拶隊長を任せるか、です。たとえば、ランチタイムはパンや総菜に列ができるため、挨拶隊長はケーキスタッフに担ってもらいます。しかし15時過ぎになると、今度はケーキ売り場が混んでくるので、パンを出したり、総菜を並べたりするスタッフに挨拶隊長を交代します。このように、時間に沿って役割をシフトさせることで挨拶隊長は、「入り口に来られたお客さまに1番に気づき、絶対に逃しちゃいけない」という責任感が生まれます。月間目標にしたのはひと月だけでしたが、仕事にきちんと組み込むことで、その後も習慣化し、以前より入り口への意識が高まりました。
製造スタッフ(キッチンスタッフ)を巻き込むために
廣井氏:当初、製造側は取り組みに対してあまり主体的ではありませんでした。接客対応はホールスタッフがメインですので、なかなかお客さま満足に対する一連の取り組みを自分事として捉えることは難しかったのだと思います。そこで、覆面調査の設問項目に「一番おいしそうな商品は?」など製造側も関心を持つような項目を入れました。すると、調査結果を見て「あの商品のことが書かれていたね」などと少しずつ興味を持ち始めました。
岡田氏:いまでは、ホールスタッフにも商品知識を付けてもらうために、社内SNSで「パンの食べ方のおすすめ」や「一番こだわっているパンはなにか?」など、ホールスタッフの素朴な疑問に一問一答形式で製造メンバーがローテーションしながら答えていくという取り組みをしています。
さらに月に1回ホールと製造の両方が参加するMTG内で、「パンの焼き色勉強会」を実施し、食べ比べを行うことで、属人的だった焼き加減を標準化することができました。今では、パンができ上がったら、ホールスタッフに声がけをするようになったり、ホールが忙しい時間帯は、シェフ自らお客さまにメニューをお出しするようになるなど、ホールと製造の垣根を越えて、協力し合う体制ができてきたと思います。
--その結果、覆面調査でも業界平均を上回るスコアになりましたね。
岡田氏:本部スタッフのミッションは、現場スタッフがお客さまの声に関心を持ち、改善活動に取り組みたくなるような環境をつくることだと考えています。意欲的なスタッフが増え、取り組みに手ごたえを感じるようになると、自発的に動き始めます。事実、この取り組みを始めてから1年で覆面調査の平均点が20ポイント上がりました。MS&Consultingさんから、これは業界平均を上回るスコアだと伺っています。MSナビを使って覆面調査を続けたことで、お客さま満足度が向上していることはもちろん、従業員のモチベーションアップにもつながっていることはとても嬉しいです。
覆面調査(年間平均点推移)|アプリ「MSナビ」を活用し始めてから1年で、お客様満足度(覆面調査)は前年比112%、食物販業界平均と比べて 26ポイントアップ(2018年)。アプリを導入してより効率的に施策を展開できるようになった。