お客様の立場に立った接客サービスと食空間の演出で、 熱烈なファンを獲得
株式会社ライフコーポレーション
北海道北見市北央町82-7
ウェブサイト:http://www.life-v.co.jp/
『季刊MS&コンサルティング 2009年夏号』掲載
取材:西山博貢、文:藤平吉郎
※記載されている会社概要や役職名などは、インタビュー(掲載)当時のものです。ご了承ください。
北見と札幌を主要拠点に、上州牛、ハーブ豚など上質な焼き肉を提供する「味覚園」、洗練されたムードの焼き肉店「囲み家」、居酒屋スタイルの「なごみ屋」などを展開する株式会社ライフコーポレーション。接客の基本は「おもてなしの心」で、お客様から強い支持を獲得している。同社を率いる坂口政義代表取締役社長と、斉藤祐司常務取締役のお二人に、経営の要諦を語って頂いた。
坂口政義代表取締役社長インタビュー
「幼い子供を連れた家族が満足する焼き肉店を」その願いが創業の志
北見で精肉卸を営んでいまして、最大限に付加価値を出せる方策として、焼肉店を始めました。現在、3つのブランドを展開しています。原点の味覚園のコンセプトは、母親にゆっくり焼肉を食べて頂ける空間を提供することです。子供さんはキッズルームで楽しく遊び、母親もくつろげる時間を過ごせる店を目指しました。
実は創業の頃、私の子供がまだ幼くて、外食に出かける時は、妻が子供用の椅子やエプロンなどを持参し、荷物が山のようになりました。その体験から、幼い子供に必要な物を店が用意してあれば、母親は楽になれるだろうなと感じたのが、店作りの発想のきっかけでした。
なごみ屋は、「なごんで食事をできること」と、「こだわり感」が切り口です。大手の飲食チェーンではできない手仕事、例えばホッケの開きを自店で作るなどの手間をかけています。料理だけでなく、店作り、接客全てにおいて、「おもてなし」にこだわっています。
囲み屋は、「家族と家族以外のお客様が融合できる店」がコンセプトで、家族だけでなく、カップルやグループも楽しめる店です。
坂口政義代表取締役社長
子供連れの家族全員が居心地よく食事を楽しんでもらうために、お子様向けのメニューや食器などを揃え、さらにキッズルームも完備している。なお、赤ちゃん用の離乳食や紙オムツは無料となっている。また、スタッフの笑顔とフレンドリーな接客も支持を得ている理由の一つである。
キーワードは食材、メニューの絞り込み
今後、飲食業は、より専門店化してくると思います。あの店のあれを食べる、つまりお客様は、目的を持って店に行くので、グランドメニューを絞り込む必要があると考えています。絞り込む一方で、こだわりのお勧めメニューを持つこと。例えば、通常のオムレツと、納豆や明太子オムレツがあったとすると、納豆と明太子はメニューに入れず、本当においしいオムレツを提供する方が、お客様の心をキャッチできます。万遍なくではなく、絞り込んだ方がメッセージ性が強くなります。
前身が精肉卸であったことから、肉の品質には徹底してこだわる。衛生安全基準をクリアしている群馬産の上州牛や、北海道・真狩産のハーブ豚などを、最新の衛生管理設備の整った自社工場で下処理・加工したものが、各店舗に配送されている。産地の見える安心・安全で、しかも上質な食材が大きな差別化となっている。
坂口政義代表取締役社長インタビュー
新しい経営理念を、いかに社員に浸透させるか
このような方向性の中で、企業がもう1段階先に進むために、経営理念、クレド(信条・約束)は新しいものに移行しています。当社の経営理念は、「感謝の心で自分を磨くこと」です。仕事というのは、働いてお金をもらって生活を営むということ以前に、仕事を通して自分を磨くことだと思っています。
厳しい経済環境の中で、基本的にはお店の業績は落ちていくでしょう。そこで、一番勉強しなければならないのは、外食に携わる人間です。お客様に喜んで頂くことを、真剣に考えなければなりません。人が喜ぶことが好きな人間の集合体になっていくことを目指したいですね。自分はたまたま飲食店で働いている、ということではなく、存在意義を明確にして働くことが大事です。そのためにも、社員が独立できるような支援体制を考えています。
会社の目標は人間性を高め、人に喜んでもらうこと
今年から農業に参加していこうと考えています。農家から畑を借りて、自分たちで野菜の種を蒔き、お米作りを一緒に手伝うのです。そういうことによって、食べ物を作る大変さや、それを大切に扱うことの意味が分かり、お客様に伝えることができます。さらに、福祉施設への支援など、飲食業としてできる社会貢献があると思います。ちょっとずつですが、動き出しているところです。
社員の人間性を高めていくことが会社の目的で、それは私の人生にとっても大事なことです。1つのことに情熱や執念を持って生きていくことは、人間にとってすごく価値のあることです。それと、人に喜んでもらうことを見つけること、この2本柱で進んでいきます。
お客様の満足を高めるために、従業員の教育には力を入れている。社員・アルバイトの研修では、各店で取り組んでいる内容を発表している。成功事例だけでなく、反省点・問題点なども含め、全員が共有することで、全体のスキルアップを図っている。
斉藤祐司常務取締役インタビュー
ミーティングを開き、改善の効果が着実に現れる
今までも、アンケートでお客様からコメントを頂いてきましたが、本当に怒っているお客様は何も言わないものです。お客様が心の深いところで思っていることを知りたかった。そのような客観的な意見がお店を改善するためには必要だと考えたので、2年前にミステリーショッピングリサーチ(MSR)を始めました。
導入後は月1回、問題点を洗い出すために本社ミーティングを開き、それを継続して実践するようになりました。それから、いろいろ効果が現われてきましたね。ミーティングを行う意味を理解して、ミーティングの大切さを実感し、決定したことをすぐ行動に移せるようになりました。例えば、お客様の目を見て話すのは当たり前のことですが、ようやくスタッフに浸透し、定着してきました。さらに、店舗ミーティングもよく行っています。1週間に1回やっているお店が多いですが、中には月8回というお店もあるほど、熱心に取り組んでいます。
斉藤祐司常務取締役
店長が変わること、これがお店を活性化させる
ある店の店長は見違えるように変わりました。店のオペレーションを変えようとした時、パートさんたちから、店長に対する不満が表面化したんです。そこで、本部による店の立て直しの間に、店長を札幌に呼んで、もう後がないという気持ちで、(店舗で)働いてもらいました。するとやる気を取り戻し、再起を期して店に戻りました。率先して掃除をしたり、パートさんたちとのコミュニケーションを積極的に取るようになりました。売上も伸び、今では言葉で表現できないくらい光り輝いて、仕事に臨んでいますね。
なお、昨年11月から店長研修を始めています。一般的にパート、アルバイトはお店の末端と思われがちですが、お客様からすると、むしろ先端と言えます。これからはパート、アルバイトさんに目を向け、スポットライトを当てるために、研修を行うことも検討しています。そうすることによって、店はもっと活性化されてくるでしょう。
アルバイトの教育レベルは、店長のレベルで大きく左右されるため、「HERBプログラム(ミステリーショッピングリサーチによる気付きを促進し、成功事例の共有と改善運動をサポートする研修)」を行っている。クオリティの高い教育を通じて、現場への落とし込みに役立てている。店長が仕事の面白みを得ることができ、成果が現われつつあるという。
人・店舗の強化・お客様に向けた取り組み事例
トップダウンでなく自ら考えて行動すること、そして日々、物事を考えて行動してもらうために、3年前から1日1目標をシートに書いて、今日を振り返ってもらうようにしている。また、多くの部会、勉強会を開いて、スキルアップを図っている。
ライフ新川店「お客様の声ノート」
地域で必要とされる店を目指して、お客様から聞いた生の声を書きとめる「お客様の声ノート」。これにより、スタッフが常にお客様を意識し、また、様々な要望に対して、どう改善したらいいのか、気付きのツールとなっている。
なごみや平岸店の取り組み
トップダウンではなく、自ら考えて主体的に行動してもらうために、3年前から従業員は1日1目標を掲げることにしている。店の全員が見える場所に張り付けることでモチベーションを高め、日々の着実な実行に結び付けている。
斉藤祐司常務取締役インタビュー
家族に優しいというコンセプトが、成長を支え続ける
外食産業は厳しいと言われますが、きちんとお客様に伝わるようなことをやっているお店は何も厳しくないですね。味覚園のコンセプトは「家族に優しい」が原点です。そこで、キッズルームを設け、客席からでもモニターで姿を見られるようにカメラを付けました。子供たちはキッズルームで汗をかくほど遊びますので、着替えを用意しています。ミルクや離乳食、おむつも備えています。焼き肉は子供が食べるには大きいので、キッズ用の大きさのメニューも用意しています。このような取り組みができたのは、社長も私も子供を持つ親として経営してきたからです。「子供がいない頃に味覚園に来た時には感じなかったのですが、子供ができると、この店の本当の良さが分りました」というアンケートをよく頂きますよ。
人のために生きる、それが私の信念
お客様にとって、また地域の中で必要とされる店でなければならないと思っています。では、何をもって必要とされるのか、どうすればお客様にとってこの店でなければダメだ、という存在になれるのでしょう。美味しいものを作ること、そのために努力することは、どこにも負けないつもりです。ただ、食べ物だけではなくて、お客様は癒しを求めて来るので、サービス面をもっと勉強していかなければならない。そのためにも、スタッフが当社で働けて良かったと思えるような環境作りが必要ですね。
現在の経営理念は、04年に作り変えました。自分がこの会社にいることの価値、考え方が会社と共に成長していくこと、それが根底にあります。では、何をもって成長するのか。それが行動指針です。夢を掴むためには、自己開示することです。不平、不満でなく、本音で話すことはウエルカムです。
一人ひとりが自分で考えて行動するのは難しいですが、会社の目指す方向を理解し、自分の価値観を持って、進むべき道を見つけてもらいたい。いい事も悪い事も、受け入れて成長して欲しい。それが人間力になります。
この会社の好きなところは、人の成長を見られることですね。人が楽しいことは、自分も楽しい。人が嬉しいことは、自分のことのように嬉しい。私は、最終的には人のために生きていると思っています。それが嬉しいからです。